あきのエンジェルルーム 略歴

2015年08月27日

M字カーブはゆるやかになったけれど…… ♡Vol.49

 いつも心にエンジェルを。

 みなさん、「M字カーブ」って知っていますか?
 仕事柄、ちょこちょこ内閣府男女共同参画局のホームページをチェックします。「平成26年度男女共同参画社会の形成の状況」という項目の中に、総務省の「労働力調査(基本集計)」による「女性の年齢階級別労働力の推移」というグラフが掲載されていました(いずれも出典:内閣府ホームページ)。
 「M字カーブ」というのは上のデータを表した折れ線グラフのこと。女性の場合、独身時代などに仕事をしていても、結婚や出産を機にいったん退職し、その後、再就職するケースが多いため、結婚・出産年齢あたりに大きな窪みができるというわけです。
 最新の平成25年度、つまり2013年度のグラフを見てください。「M」の形のカーブの底がずいぶんゆるやかになってきた気がしませんか?

 グラフは5歳刻みです。昭和50年にはM字カーブの底は25~29歳でしたが、その10年後の昭和60年~平成7年までは底は30~34歳、平成24年は底が35~39歳です。晩婚化、晩産化が進んだことがグラフを見ただけでもわかりますね。
 ちなみに女性雇用者全体(役員を除く)の正社員比率は昭和60年が67.9%でしたが、平成26年には43.3%に減少しています。男性でも同時期で比較すると92.6%から78.2%に下がっています。

 経済協力開発機構(OECD)が加盟34カ国の雇用情勢をまとめた「雇用アウトルック2015」によると、日本の25~54歳の女性の就業率は71.8%で前年から1ポイント上昇、加盟国の中では24位でした。スウェーデンやアイスランド、スイスなどは80%を超えています。しかも、日本の場合、女性就業者の半数以上が非正規雇用ということも影響して全労働者の年間勤労所得の男女格差はOECD平均よりかなり大きくなっています。
 共働き世帯と男性の片働き世帯の数は1980年は圧倒的に片働き世帯が多かったのが、1990年代半ばに逆転、平成26年は共働き世帯が1077と、片働き世帯の720を大きく上回っています。

 しかし、「男女共同参画社会に関する世論調査」「女性の活躍推進に関する世論調査」によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考え方について、平成26年になっても、男性の45.5%が賛成(どちらかといえば、も含む)、反対(同)が46.5%と、意見は拮抗しています。女性にしても、賛成が43.2%、反対が51.6%と、けして反対が圧倒的多数というわけではないのがよくわかります。
 そんななか、さらに恐ろしいアンケート結果を見つけてしまいました。

 エン・ジャパンの「女の求人マート」利用者に対する調査によると、20~39歳の子どもを持つ女性の就業率は44%ですが、就業者全体に占める正社員は18%、パート・アルバイトが55%、派遣社員が11%。子育てが一段落したであろう40歳以上になると、就業率は55%と上昇しますが、正社員比率は4%まで下がります。調査対象が求人サイトの利用者で、正社員の場合、転職に関心のある人しか見ない、というバイアスはあるにしろ、結婚や出産を機にいったん退職してしまうと、正社員としての就職をするのがいかに難しいかがよくわかります。
 40歳以上で、仕事をしていない人にその理由を聞いたところ、61%が「自分に合う仕事がみつからない」と回答しています。 
 結婚や出産というライフイベントで簡単に退職という選択をしないことが大事というのは、みなさんもよくわかっていると思いますが、いまはもっと問題が深刻です。育児休業法は2005年に改正され、派遣社員やパートら非正規社員にも対象が拡大されましたが、実際、非正社員で育休を取得し、元の仕事に復職できた人はたった4%、正社員の10分の1以下であることがわかりました。
 国勢調査に合わせて国立社会保障・人口問題研究所がまとめた育休取得の実態によると、働く女性が第1子を妊娠後、育休を取って復職できた割合は2005~2009年(子の出生年ベース)、正社員が43.1%(これでも少ないですね)だったのに対し、派遣・パートではわずか4%。育休後に復職した正社員の比率は1980年代は1割程度でしたが、以降は右肩上がり。しかし、非正規では1割未満のまま、低空飛行しているのです。
 ポイントは非正規でも育児休業が取得できる場合を、「復帰後も雇われる見込みがある」と定めた条件です。妊娠を機に、企業が「雇い止め」を考えれば、この「見込み」はなくなります。本来、育児・介護休業法は、働き手が育児や介護のために休みを取れるよう、企業に義務づける法律で、育休を申請したり、実際に休んだりした人に不利益な扱いをすることも禁じています。しかも、育児休業が認められれば、賃金の最高67%が雇用保険から支給さて、育児時期に収入が途絶えるというリスクも避けることができます。
 しかし、現実には女性就業者の半数以上を超える非正規社員がこのセーフティーネットを使えない状況になっているわけです。非正規社員なら、育休も思うように取れない。正社員で育休が取れたとしても、保育園に空きがなく子どもを預けるところがない。保育園に入れたとしても、「妻が家庭を守るべき」と思う男性が半数いて、家事や育児は主に女性が担わないといけない……。そんな、“ないない尽くし”で、少子化が解決するはずありませんよね。

 でも、絶望しているだけでは始まらないので、いま自分が立っている地点を基準に、何をすればいいのかを考えましょう。正社員を目指すもよし、もし正社員での就職が難しければ、派遣やアルバイトをしながら、出産しても収入を得られるようなつぶしの利く「スキル」を身につける方法もあります。
 いまは男性も大変ですので、「結婚=永久就職」以外の選択をおすすめします。