あきのエンジェルルーム 略歴

2015年06月04日

女子学生よ、大志を抱け! 子連れで海外赴任もアリの時代へ ♡Vol.38

 いつも心にエンジェルを。

 みなさん、海外赴任はしてみたいですか? 私は一度してみたいと思っていましたが、縁がなく今に至っています。

 最近、就職環境の好転がたびたびニュースになります。その一方で気になる数字も見つけました。
 日本生産性本部が発表した「2015年度新入社員春の意識調査」によると、「年功重視の給与」を希望する回答が過去最高に、一方で「海外勤務の希望」が初めて過半数を下回りました。「仕事を通じてかなえたい夢がある」という項目も「そう思う」と回答した割合が前年比7.1ポイントも低下し、58.9%となっていました。仕事に対して、ちょっと冷めた感じがするのは気のせいでしょうか。
 さて、今回紹介するのは、女性社員の海外赴任がごく当たり前という日産自動車です。2014年だけでも30人の女性が海外に出向、子連れで海外赴任するママ社員もいます。従業員数(単独)は約2万3000人、そのうち1割弱が女性です。
 1999年にフランスに本社があるルノーと提携したのをきっかけに、同社はグローバル企業として生まれ変わりました。性別、国籍などのカルチャーギャップを克服するのは、経営危機を脱するための「至上命令」でした。掲げたのが「多様性を尊重する風土」「仕事と人生の両立」「女性の活躍推進」「異文化理解」の四つの柱です。
 他社に先駆けて、2004年10月に専門部署ダイバーシティディベロップメントオフィス(DDO)を設立しました。2005年に神奈川県厚木市のテクニカルセンターに社内託児所「まーちらんど」を開設。現在は厚木に2カ所、横浜のグローバル本社内に1カ所の社内託児所があり、計約50人の子どもが通所しています(写真は本社内「まーちらんど・みなとみらい」)。
 2006年には育児や介護のための在宅勤務制度も導入しています。
 そういった取り組みから、「人を活かす企業」のダイバーシティ大賞(2008)、ダイバーシティ経営企業100選(2013)に選ばれるなど、高く評価されています。「なでしこ銘柄」にも2013年から3年連続で選ばれています。

 女性採用にも積極的です。2015年春の新卒採用に占める女性の割合は「ノンエンジニア」で36人(54%)、理系学部生が多い「エンジニア」でも58人(17%)います。
 DDOの4代目室長である小林千恵さん(下写真)に、数ある女性活躍推進のための施策のなかでもっとも効果があったものはなにか、聞いてみました。
 「地味に見えるかもしれませんが、キャリア開発会議ですね。リーダー候補の女性の今後のキャリアについて、我々DDOの担当者、直属の上司、人事の担当者、部署のラインのボスであるGMの四者が、本人のいない場所で年に2回話し合うんです。素質があると思った女性社員は、本人に管理職になりたいという意思がなくても、積極的に挑戦するよう働きかけていきます。社内託児所の収支は“真っ赤”です。でも女性社員に早く復帰してもらうというだけでなく、エレベーターで子どもたちと乗り合うと自然とみんな笑顔になりますし、それ以上の『収穫』があると信じています」

 結果的に、2004年にわずか1.6%だった女性管理職は、2015年には5倍の8.2%に到達しました。2017年には10%達成を目標に掲げています。現在も、自動車会社8社平均の女性管理職比率は2%程度ですから、日産自動車の突出ぶりが目立ちます。
 「それでも10年かかって、女性は執行役員1人、経営会議メンバーには女性はまだ1人もいない。道半ばです。とりあえず社外から引っ張ってきて、というのではなく、時間がかかっても社内で育成したい」と小林さん。
 小林さんは1991年に新卒で入社。30代前半でルノーとの提携を経験し、社内の空気が一変したのを実感したといいます。大学ではポルトガル語を学び、入社以来、中南米での営業・マーケティングを手がけてきました。社内結婚し、子ども2人に恵まれました。
 転機は2005年。1歳と7歳の子どもを連れて、ブラジル日産の事業管理及び商品企画マネジャーとして2年間赴任することになったのです。夫は日本に置いていきました。日産自動車初の女性プラジル駐在員です。小林さんは言います。
 「出産してからも、『チャンスがあれば海外赴任に行きたい』という希望を上司に伝えていたんです。『小さい子がいる女性社員に海外なんて無理でしょ?』と思い込みで判断せず、『まだ行く気、ある?』と、私の意思を確認してくれた上司に感謝しています」
 同社のママ社員はこれまで十数人が海外赴任を経験していますが、小林さんのように夫を日本に置いていく人は実は少数派。一番多いのは夫のほうが休職したり、会社を辞めたりして、妻の赴任先についてくるパターンなのだそうです。「男は仕事、女は家庭」といったジェンダーバイアスにとらわれたオジサンたちには衝撃的な話かもしれません。
 
 福利厚生が充実している企業でも、「女性は子育てに手がかかるから」という“思いやり”から、育休復帰後は第一線から外し、マミートラックと呼ばれる負荷の少ない業務や、サポート業務が中心の部署に異動させられることは多々あります。
 しかし、日産自動車は違います。小林さんは育休復帰後いきなり上司から「昇進試験」を受けてもらう、と言われたそうです。査定期間の半分を出産で休んでいた小林さんは、「さすがに無理かも」と思ったそうですが、「事情をわかった上で推薦しているのだから自信をもって挑戦して」と上司が背中を押してくれ、無事に合格できたそう。いい上司ですね。小林さんが特別なロールモデルというわけではなく、同社には小林さんと同格の部長職以上の女性社員が44人います。
 女性社員以外にも使える制度がたくさんあります。2008年には所定の有給休暇に加えて、12日間、家族の病気や介護などで休めるファミリーサポート休暇を新設しています。それまで育児・介護の必要な社員以外は月1回までだった在宅勤務を、2014年からは全従業員を対象に月5日(40時間以内)まで拡充しました。在宅勤務を推進した結果、2012年までは250人程度だった利用者は2014年には5倍以上に増加。管理職を含め、在宅勤務を選択できる従業員のうち約24%が利用しているといいます。あわせて1日8時間勤務を意識した長時間労働の削減にも取り組んでいます。

 チャンスが公平にあるということは、結果は本人次第ということになります。競う以上は楽しいことばかりではないでしょう。それでも、「女だから仕方ない」という言い訳をしたくない女子にとっては最高の環境かもしれません。