あきのエンジェルルーム 略歴

2015年05月28日

圧迫面接に負けない「自分を愛する心」をキープしよう ♡Vol.37

 いつも心にエンジェルを。

 就職活動をしていて、自分のプライドを著しく傷つけられた経験はありませんか。いわゆる「圧迫面接」は有名ですが、私が就活していた時代は「ここは奴隷市なのか?」と思うような面接もありました。
 容姿が問われる業種でもないはずなのに「横顔を見たいから横を向いて」だの、「歯の矯正、どうして今までしてこなかったの?」(八重歯で悪かったわね!)だの、「お化粧ヘタだねえ」(これは今もゲイバーでよく言われる)だの、さんざんな目に遭いました。
 志望動機や自己PRに関連する質問であればいいのです。実際、当時も自己PRの後、「君は自信家だねえ、その自信はどっから来るの?」という、やや嫌みったらしい質問を受けたことがありました。これは、「圧迫面接」の範囲内だと思ったので、真剣に対応しました。

 「私が自信家に見えるとすれば、もしかすると過去の○○といった経験のせいかもしれません。実は……」とその体験を説明し、その上で、「しかし、初対面の方にそのようなことを感じさせる自分の態度については反省すべき点もあるかと思いますので、今後、気をつけていきたいと思います」というような回答をした覚えがあります。ちなみにこの会社からは内定が出ました。
 一方で、最悪だったのは「就活なのに髪を束ねてこない子は珍しいねえ」と、ある男性面接官に髪を触られたことです。今であれば、もう少し気の利いた受け答えができたかもしれませんが、当時は、こんなに無礼なことをする人が世の中にいるのだ、しかも、私が入りたいと思っていた会社にいたのか!? というショックが大きくて、受け流すこともできず、「キッ」とにらんで「な、何するんですか!」と言い返した記憶があります。
 相手は私を人間と思っていない、心がある生き物だと認めていない、そんな会社なら落ちて上等――。その瞬間、吹っ切れていましたが、もし、どうしてもこの会社に入りたいと思っている学生だったらどう対応するのだろう、我慢してニコニコするのだろうか、でもそうすればこれからも同じような「被害者」が生まれてしまうだろう……。モヤモヤした思いが残った記憶があります。

 いま考えれば、大学のキャリアセンターなどに通報して、公のルートでその会社に抗議してもらうこともできたのでしょうが、当時はそこまで頭がまわりませんでした。さらにその会社が内定を出してきたのにも驚きました。あれはなんだったのでしょう? 「NO!」を明確に言える人材がほしくて学生を試したのでしょうか? だとしても、許されることではないと思います。 
 いま就活をしているみなさんには、当時と違って強力な「武器」があります。就活中にこういう行為があったら、即座にSNSで拡散したり、就活サイトの掲示板に書き込んだり、告発する手段があります。おそらく20年前のようなむちゃくちゃな面接をされることは少なくなっているでしょう。そうであってほしいと願います。

 それでも、自尊心を傷つけられる場面があるかもしれません。そういうときは、自分の心にフタをせず、ぜひきちんと反論してください。「いまの質問は大変失礼だと思います」「どういう目的があってその質問をされているのですか」と聞き返していいのです。それに対し、「実はこういう意図があって……」と説明してくれる、あるいは「申し訳なかった」と素直に謝ってくれる、そんな会社でなければ、入社した後も苦労するのは目に見えています。
 大事なのは「自分さえ我慢すれば」と思わないこと。反論して落ちたら「ああ、あれが悪かったのね、まあいいわ、あんな会社こっちから願い下げよ」と思えます。一方、理不尽なことをさんざん我慢したのに落ちたとしたら、どうでしょう。

 「あれは落とす人間への単なる嫌がらせだったのに我慢して損した」、あるいは「あんなにつらいことも我慢したのに、それでも落とされるなんて、他の面で自分はよほど評価が低いのか」と、悔しさ、情けなさが倍増すると思います。仮に入社できたとしても、そのときの面接官が将来、上司や同僚になると思ったら、イヤですよね。

 みなさんは、2014年1月に87歳で亡くなった吉野弘さんという詩人をご存じでしょうか。「祝婚歌」という「二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい……」で始まる詩や、国語の教科書に掲載されていた「夕焼け」などが有名です。私は、父親になったばかりの吉野さんが長女に向けて作った「奈々子に」という作品が好きで、よく読み返します。部分的に引用すると――。
赤い林檎の頰をして 眠っている 奈々子。(中略)

唐突だが 奈々子 お父さんは お前に 多くを期待しないだろう。
ひとが ほかからの期待に応えようとして どんなに 自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり 知ってしまったから。
お父さんが お前にあげたいものは 健康と 自分を愛する心だ。
ひとが ひとでなくなるのは 自分を愛することをやめるときだ。(中略)

お父さんにも お母さんにも 酸っぱい苦労がふえた。
苦労は 今は お前にあげられない。
お前にあげたいものは 香りのよい健康と
かちとるにむづかしく はぐくむにむづかしい 自分を愛する心だ。
(ハルキ文庫『吉野弘詩集』より) 

 子を大切に思う親のまっすぐな愛情が伝わってきます。「自分を愛する心」はいったん失ってしまうと取り戻すのは本当に大変です。人生にはプライドを捨ててでも、勝負しなくてはいけないときもあります。しかし、「自分を愛する心」が十分に確立されていない段階で、自分を粗末にするとそのしっぺ返しは大きい。
 みなさんの「自分を愛する心」がすり切れてしまわないよう、就活中は特に念入りにメンテナンスをしてください。