あきのエンジェルルーム 略歴

2015年01月29日

きっかけは「公私混同」でも、結果よければ全てよし!?  ♡Vol.21

 いつも心にエンジェルを。

 「公私混同」……。だいたいよくないことに使われる四字熟語ですよね。しかし経営者の公私混同が働く社員にとってもウェルカムだったという、ややレアなケースもあります。

 今回紹介するのは、ニコニコ動画などのサービスを運営するドワンゴです。社員数は約1000人、男性社員が77%と、女性比率はそう高くありません。しかも社員の平均年齢は31~32歳と若いので、育児する女性社員に対する施策は法定をやや上回る程度で、充実とまではいえない環境です。
 そんな会社に2014年12月、社内保育施設「どわんご保育園」(下写真)が設置されました。きっかけは同社の川上量生(のぶお)会長に同年9月、長女が生まれ、待機児童問題に直面したから。おお、なんというシンプルリーズン!
 同社の保育園の場合、対象は満1歳から2歳の3月までの乳幼児で、保育時間は9時~19時、現在の園児は4人、定員は10人です。運営費の一部は会社が負担し、社員は割安に利用できます。通勤時の荷物を減らすため、着替えなどを園で洗濯してくれるランドリーサービスも利用できます。至れり尽くせりですね。何より、「復帰はしたいけど、子どもが小さいうちはできるだけそばにいたい」というママ社員の、やや背反する思いをかなえるスペースとしても喜ばれています。

 川上会長は長女が生まれるのを機に保育園について情報収集していて、待機児童問題を知りました。入園できるように市役所の人と仲良くなったり、形式上離婚してシングルマザーになったり、というナンセンスな環境に憤慨し、自分の会社でも「きっと困っている社員がいるに違いない」と、設置に踏み切ったそうです。とはいえ、0歳児保育が可能な保育園を開設するには条件が厳しく、対象は満1歳から、ということで、会長本人の長女(0歳児)はまだ対象外……。本来の意味での公私混同には至っていません。
 そもそも川上会長といえば、インタビューなどで「企業の合理性を考えると、社員は死ぬまで独身でプライベートなしで働いてもらったほうがいい」「エンジニアに関する限り、結婚どころか彼女ができると大体パフォーマンスが下がる」と、経営者としてのホンネを赤裸々に語っていましたが、いまは、結婚や出産など社員のプライベートの充実は、「瞬発力は下がるけど、長期的にはプラス」と思えるようになったとのこと。
 同社人事部長の野々垣尚志さん(左写真)は言います。「昔はサブカル的イメージで男性中心の企業でしたが、創業19年目を迎え、ここ数年、女性社員にも長く働く、という文化が芽生えてきました。それなのに保育園が見つからないという物理的な事情で復帰できない女性社員が多かった。市場のニーズなどに合わせてビジネスや体制が変化する会社なので、制度上は満3歳まで育休が取れますが、現実的に考えると2年も休むと、キャッチアップできなくなる。自分のいた部署がなくなっている可能性すらあります。早めに復帰したほうが、労使双方にメリットがあるので、社内保育園は地元の保育園に空きが出るまでの緊急避難として非常に有効だと考えています」

 ドワンゴといえば、就活中のみなさんにとっては、新卒入社試験における「受験料制度」で有名でしょう。2015年度新卒採用時は「ニコニコ」にちなんで2525円でしたが、2016年度は、採用に実際にかかる費用として算出した3000円(本エントリー・首都圏学生のみ)となっています。
 賛否両論ありますが、導入したことで、本エントリーの人数は前年の3割程度にまで減り、丁寧に選考ができるようになったそうです。

 黙っていても志望学生が集まる人気企業ならではの強気な制度ですが、就活生でなくとも、「入社したくなる」ポイントは、保育園以外にもいろいろあります。
 2014年4月には福利厚生の一環として「社内美容室」が誕生しました。表参道の有名美容室の支店です。もちろん会社の補助もあり、通常より割安。21時まで営業、カット、パーマ、シャンプー、ブローだけでなく、ヘッドスパなどのメニューがあり、休みの日に美容室に行く時間を作りにくいママ社員に愛用されています。保育園と違って、こちらは川上会長もよく使っているそうですよ。

 社内のカフェテリアに「タリーズ」が入っています(右写真)。「え、そんなのよくあるじゃん!」と思いますが、ビルの1階などの一般の人も入れるスペースではなく、完全に社内、しかも社員は会社補助によりどのドリンクも100円引き。羨ましいですね。本社の入っている、歌舞伎座タワーとは別のビルにはなりますが、マッサージルームもあります。入社志望者が多いのもなるほど納得です。

 こんなに福利厚生を充実させて、さて、どんな学生がほしいのか。
 採用も担当している野々垣さんは「あくまでも一例ですが、好きなことであれば1時間でもしゃべり続けていられるような人ですかね。営業などであればバランスタイプも必要ですが、突出した『好き』『得意』のない人はうちには向かないかも」と言います。

 そういう野々垣さんは大手インフラ会社からの転職組。「思った以上にまじめな会社で、利益だけを求めるのではなく、世の中に必要と思えば赤字でも続けています。役員室もないですし、社長、会長とも気軽にコミュニケーションを取れる、風通しの良さとスピードが自慢」だそうです。

 我こそは、と思う方は千円札3枚、ご準備ください。

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