あきのエンジェルルーム 略歴

2015年01月22日

同じ仕事なのにお給料が全然違う! アナタは我慢できますか? ♡Vol.20

 いつも心にエンジェルを。

 年末に放映された“朝生”こと、テレビ朝日系列「朝まで生テレビ 激論!戦後70年 日本はどんな国を目指すのか!」で、慶応義塾大学教授で人材派遣大手パソナグループ会長でもある竹中平蔵氏の「正社員をなくしましょう」という発言が雑誌やネットで話題になっています。「(同一労働同一賃金を目指すなら)正社員をなくしましょうって、やっぱね言わなきゃいけない」というものです。

 この連載でも11月20日付「大手の派遣より、中小の正社員ってホントかな? ♡Vol.12」で、正規と非正規の現実について取り上げています(バックナンバーも読んでね)。
 これから就職する若い人、再就職を目指す母親たちにとって、「正社員」はどんどん狭き門になっています。目の前に「正社員」という選択肢があっても、家庭の事情で長時間働けない、転勤できないなどの理由から、あえて「非正規」を選んでいる人もいると思いますが、どちらかというと「正社員」になりたくてもなれず、やむなく「非正規」を選んだ、という人がほとんどではないでしょうか?

 総務省「就業構造基本調査」(2012年)によると、国内にいる約5350万人の雇用者のうち、正規雇用が3310万人、非正規雇用は2040万人、全体の4割近くが非正規ということになります。非正規は社員数も割合も右肩が上がり。直近30年の雇用統計をグラフ化したものを見てもよくわかります。

 しかも、非正規のうち7割弱が女性です。 
 竹中氏は、かつて経済財政担当大臣として国の経済政策を決める立場にいました。今も政府が設置している「産業競争力会議」や「国家戦略特区諮問会議」に名を連ねている一人です。いわば政府の“ご意見番”という立場の人が、正社員を増やす、あるいは非正規社員の立場や権利を守る、という方向に努力するのでなく、守られている正社員のほうの立場を「下げる」ことで、「同一労働同一賃金」「公平」に近づけようと考えているとしたら、とっても怖いことです。(右写真は産業競争力会議での一コマ)

 非正規には、期間限定の契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなどがあります。このうち派遣という雇用形態は、賃金の中抜き(中間搾取)や雇い主の責任が曖昧となることから、厳しく規制されていた働き方でした。それが1985年に派遣法が成立し、自由競争、規制緩和の名のもとに、労働者の立場はどんどん弱まってきました。それをさらに規制緩和しようというのが、過去に2回廃案となった改正派遣法案です。これが、1月下旬に始まる通常国会に再々提出されようとしています。3度目の正直となるのかどうか、その行方から目が離せません。
 私は約10年、出版部門で雑誌の編集をやっていました。同僚や部下の多くが非正規で、当時の部署では、単発で仕事を受ける完全なフリーライター、フリー編集者と区別するために「常駐フリー部員」と呼んでいました。字のごとく、正社員と同じように編集部に常駐し、同じような勤務スタイルで昼も夜もなく働いていました。しかし、収入は、正社員の半分程度など、「労働」と「報酬」が見合ってないケースもたくさんありました。

 常駐フリー部員は立場が不安定なだけに、「一生懸命働いて、評価されなくては契約を更新してもらえない」あるいは「がんばれば正社員にしてもらえるかも」と無理をしがちです。実際に正社員として採用される人も中にはいますが、あくまでも一握りです。
 みなさんの就職活動においても、あこがれていた業種、人気の業種で、正社員採用がかなわず、「アルバイト社員であれば」「契約社員でもよいならば」入社OKという話が企業側、採用担当者側から提案される可能性があります。

 この選択に正解はありません。あえて私からアドバイスするとしたら、「自分に自信がある。心身ともにタフ。自己主張もできる」と思えるなら、とりあえず入り口はどうあれ、あこがれの仕事で一度、働いてみるのもよいでしょう。なぜなら、そういう人には、いざというとき、非正規社員としての経験を糧に転職したり、起業したり、フリーとしての道を極めたり、という可能性があるからです。つまり、非正規としての仕事を、たとえ安い賃金であったとしても、オンザジョブトレーニングと割り切れる人ですね。

 一方、そうじゃない人、たとえば「ノーといえない」「頼まれた仕事は一生懸命やる」「真面目」「あんまり気は強くないかも」といった人は、最初の社会人経験を非正規からスタートするのはおすすめしません。非正規社員というのは、企業側からすれば「お金をかけずに成果(即戦力)がほしい」という意味です。特に非正規が多い職場では、時間をかけて仕事を教えてもらったり、能力を開発してもらったり、という機会は正直、期待できません。人間関係もこま切れになりがちです。「過労×低賃金」のダブルパンチで、心身の健康を損なう人も少なくありません。
 かつて時代の風雲児となったホリエモンこと堀江貴文さんは「正社員にはなるな」とよく発言しています。趣旨は、「大学を出て、大企業に就職すれば一生安泰という時代は終わった(その通り!)。だから、一つの企業に縛られず、複数の仕事を“かけもち”できるフリーな立場でいることこそ安定である」というものです。倒産やリストラに備えたダブルワークのススメと言えばいいでしょうか?

 しかし、おわかりかと思いますが、これはすでに「稼ぐ力のある人」だけができる働き方です。自他ともに仕事のできる人になってから、柔軟な働き方のできる環境を探しても遅くはありません。

 本来、働き方は働く人本人が決めればよいことで、どちらが「良い」「悪い」と他人が評価すべきことではありません。現状を考えると、正社員に比べ、非正規社員が極端に不安定な立場にあることは確かですが、正社員になれなかった、イコール、就活失敗というわけではありません。自分の人生観と照らし合わせて、納得したうえで、最初の一歩を踏み出してください。(上写真は「流氷の天使」ことクリオネ)