あきのエンジェルルーム 略歴

2015年01月15日

育児介護しやすさ“NO.1”の会社のヒ・ミ・ツ、聞いてきました! ♡Vol.19

 いつも心にエンジェルを。

 みなさんは男性社員が多い会社は考え方がマッチョで働きにくいかも、と思っているかもしれません。エンジェルルームでも女性社員の比率の高い、働くママ社員に慣れた会社を紹介することが多いのですが、今回取り上げるのは、男性社員が圧倒的多数というソフト開発の業界大手、日立ソリューションズです。
(右は同社のキャラクター「ソリュートくん」。いろんなバージョンがあります)

 同社は日立製作所の完全子会社です。日立ソフトウェアエンジニアリングと日立システムアンドサービスが合併して、2010年10月に発足しました。システムエンジニア(SE)などの技術系、理系職が多いせいもあって、社員は男性が8376人、女性が1214人、女性比率は13%程度と低めです。SEといえば、なんとなく長時間労働のイメージもありますよね。
 にもかかわらず、日経新聞がまとめた2014年の「人を活かす会社」調査の総合ランキングでは、育児や介護をしやすい会社として1位(育児介護部門)に選ばれ、総合順位でも12位と、親会社ではないグループ子会社としては唯一のランクインを果たしています。

 同社のワークライフバランス(WLB)は2009年10月の「ダイバーシティ推進センター」設置以降、特に充実してきました。2013年度だけを見ても、在宅勤務制度168人、短時間勤務制度253人、育児休職173人など、制度を利用してライフイベントに合わせた柔軟な働き方をしている社員が全体の約10%にのぼります。

 中でも充実しているのは短時間勤務制度。時短の選択肢は、フルタイムか6時間労働(2時間短縮)かの二択という会社が多いですが、同社では4~7時間労働のいずれかから好きな時間を選べます。「子が3歳になるまで」「小学校入学まで」という条件がついている会社も多いですが、同社では小学校卒業まで使うことができます。時短勤務を選ぶ男性社員も2012年度には3人だったのが2013年度には13人に増えました。
 最近、注目を集めているのが、同社が2013年7月からスタートした、「病児・病後児保育利用時の費用補助制度」です。 

 就活中のみなさんにとっては少し遠い話のように聞こえるかもしれませんが、保育園・幼稚園というのは子どもの登園前の体温が37.5度程度を超えると、預かってくれません(施設によります)。インフルエンザのような伝染性のものは他の園児にうつしてしまう恐れがあるので当然ですが、軽い風邪などであっても熱が高いと、体調が急変した時の責任がもてない、ということで、子どもは帰宅させられます。
 
 早退するだけでも同僚や部下へのしわ寄せを考えると心苦しいのに、もし何日も続けて休むことになったら……。たとえ職場の理解があったとしても子育て中の社員は不安でいっぱいです。

 最近、病気の子、回復期の子、いわゆる病児・病後児の保育をしてくれる団体や施設も増えてきましたが、当然お金もかかります。同社の場合、病気で保育園や学校を休ませている子を施設などに預けた場合、その費用の半額を会社が負担してくれます。しかも子が小学生になっても使えます。もちろん、看病のために休むという選択肢もあります。男女に関係なく取得できるので、パパ社員がこの制度を利用し、別の会社で働いている妻に喜ばれているそうですよ。
 同社人事部の齋藤正絵さん(上写真)は2歳の男の子のママ。「つい先日、息子がインフルエンザのときにこの制度を使いました。本人はすっかり元気になったけれど保育園には預けられないという期間に、とても助かります」とのこと。

 そう、本当に症状の重いときはそばにいたいですよね。

 さらなるWLB充実に向けて、同社が力を入れているのは「総労働時間の短縮」です。その名も「カエルキャンペーン」。「意識をカエル」「働き方をカエル」「早くカエル」を合言葉に、2013年から毎月1回、強化月間には月に2回、かなり強制的な「カエルデー」(定時退社厳守日)を設定しています。旗振りだけで終わらないよう、社内イントラネットで職場別の退社状況を公開し、所属長にプレッシャー(!?)も与えています。
 毎週水曜は通常版「カエルデー」。看板やポスターで定時退社を促しています(上写真)。また、社員が「今日は絶対に定時で帰りたい」という日には、それぞれ自分の机に三角柱の札(右写真)を立て、周囲の人が定時間際の仕事を頼むのを“予防”しています。

 残された課題は男性の育休取得者で、人数はまだ年にひとケタ台です。でも、取る場合は最短でも数週間、長い場合は3年目に突入している人もいます。職場結婚した夫婦に子どもが産まれ、1人目のときは女性社員、2人目では男性社員が1年近く育休を取っているケースもあります。イクボスの鑑(かがみ)のような上司が、男性社員のほうに「次(2人目)はおまえが育休取れよ」とアドバイスし、それを夫婦で実践したといいます。
 
 育休を取る男性社員は対象社員全体の2%程度、取得しても平均して数日間程度、という日本の現状のなかではかな~りエンジェルなエピソードではないでしょうか。
 「その部署は社内でも有名な忙しい部署だったので、あそこで休めたなら、うちの部署でも休んでいいはず、と他部署の男性社員にも思ってもらえるのではないかと期待しています。ダイバーシティに特効薬はありませんが、草の根も含め、この5年間、意識改革に取り組み、昨年から全社的に『早く帰る』を奨励した結果、男性社員にもワークライフバランスが根付いてきたのを感じます」と齋藤さん。

 日立ソリューションズは12月に紹介した「イクボス企業同盟」の初代メンバーでもあります(バックナンバーも読んでね)。引き続き、有言実行を期待したいですね。