あきのエンジェルルーム 略歴

2014年12月11日

イクボスにあらずんば、上司にあらず!? さよなら昭和な管理職 の巻 ♡Vol.15

 いつも心にエンジェルを。

 前回、「イクボス」という言葉を紹介しました。イクボスとは簡単に言えば、部下などのワークライフバランスをサポートできる上司のことです。 
「イクメン」は聞いたことがあるけど、「イクボス」は知らない、という人がまだ多いかもしれませんね。それもそのはず、「イクボス」という言葉が誕生したのは、2013年2月に群馬県庁で実施された「イクボス養成塾」でのこと。まだ生まれたてほやほやの“キーワード”です。
 「イクメン」ブームの仕掛け人でもある、特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンにより、2014年から「イクボスプロジェクト」が本格的にスタート、各地でイクボスを増やすための講座が開かれています。10月には初めて、イクボス個人を表彰する「イクボスアワード2014」も発表されました。
 
 そもそも「イクメン」は、育児に積極的に取り組むパパを、イケメンをもじって名付けられました。2010年に厚生労働省が、男性にもっと育児に参加してもらおうと「イクメンプロジェクト」を発足させたあたりから、注目されるようになりました。
(左写真は京都市のNPO法人が発行する「イクメン図鑑」)
 2013年4月には10県の知事らが「子育て同盟」を結成するなど、イクメンへの“追い風”はそれなりに強くなってきています。

 家事はほとんどできないうちの夫も、ベビーカーを押して散歩したり、子どもを公園で遊ばせたりするのは好きだったので、子育てする父親は「カッコイイ」というイメージ戦略は、まずまずうまくいったといえるかもしれません。 
 「イクボス」はその進化形です。いくら新米パパがイクメンを目指したところで、職場に理解がなければ、ひとり勝手にイクメンになることはできないのが日本の現状です。前回紹介した、男性社員の育休取得率の低さ(2%程度)をみればわかりますよね。

 まず上司(管理職)に、部下のワークライフバランスを考慮できる「イクボス」になってもらい、子育て中の社員はもちろん、だれもが自身の生活も大事にしながら働きやすい職場づくりをしてもらおう、というのがイクボスプロジェクトの目的です。
 今回のプロジェクトのリーダーでもある、ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん(左写真)は3児の父。バリバリ働く妻を支える「元祖イクメン」でもあります。

 「イクメンと同じで、“イクボス”ってカッコいいよな、と管理職本人はもちろん、社会全体が思うようにならないと、イクボスは増えていかない。イメージ先行でもいいから、各企業や管理職に『やってみようかな』と思ってもらうことが大事。男性管理職でよくいるのが、子育て中の女性社員にだけ『早く帰っていいよ』と言えばイクボスだと勘違いしている人。そうじゃなくて、まず自分自身がちゃんと早く帰るのが理想のイクボスなんです」(安藤さん)

 50代くらいの管理職の多い職場で「イクボスセミナー」を開講して、「部下の子育てをうまくフォローできるイクボスになりましょう」と言っても、半分くらいは寝ているのだそう。自分自身の子育てがもう終わっていて、しかも、その年代だと子育てが妻任せだった人も多いため、興味も関心もないんですね。そういうときは、介護施設に入りたくても入れない待機老人の話をして、介護で休まないといけない社員にどんな配慮をするべきか、という話に切り替えるそうです。
 それでも、「そんなに部下に配慮しなきゃならないなら、管理職なんてなるんじゃなかった」と冗談っぽくグチる管理職も多いとのこと。まだまだ課題は山積みです。
 まずは、ファザーリング・ジャパンが作った「イクボス10カ条」を見てみましょう。

①理解:部下が子育て・介護・地域活動など、ライフ(仕事以外の生活)に時間を割くことに理解を示していること。
②多様性:ライフに時間を割いている部下を差別せず、ダイバーシティーな経営をしていること。
③知識:ライフのための社内制度(育休制度)や法律(労基法など)を知っていること。
④組織浸透:管轄する組織全体に、ライフを軽視せず積極的に時間を割くことを推奨し、広めていくこと。
⑤配慮:転勤や単身赴任など、部下のライフに大きく影響を及ぼす人事については、最大限の配慮をしていること。
⑥業務:育休取得者が出ても業務が滞らないよう、情報共有チームワークなどの手段を講じていること。
⑦時間捻出:部下がライフの時間を取りやすいよう、会議や書類の削減、意思決定の迅速化などを進めていること。
⑧経営目線:ボスの上司や人事部などに対し、社員のライフを重視した経営をするよう提言していること。
⑨自らWLB:ボス自ら、仕事×私生活×社会貢献というWLBを重視し、楽しんでいること。
⑩業績達成:組織の長として、職責を全うし、業績やコミットメントを果たしていること。
 確かに“昭和”な管理職にはちとハードルが高いかも、ですね。
 
 安藤さんによると「部下の尻をたたくのが管理職で、甘やかしたら業績が上がらないと思い込んでいる人がまだ多い。でも、実際は逆で、部下は、自分を大事に思ってくれる“イクボス”に対して必ずリスペクトの気持ちを持ちます。『この人に褒められたい』と部下のパフォーマンスが上がる例の方が多いんですよ」とのこと。ふむふむ。

 実は、イクボスを一気に増やすためのあるプロジェクトがこの12月から始動しました。その名も「イクボス企業同盟」。パパ社員、ママ社員、そして介護する社員が増加する時代に、自分の会社に理想の上司(イクボス)を育てていこうと積極的に取り組んでいる会社のネットワークです。(上写真は文京区で開催された「イクボス企業同盟」記者発表会)

 イクボスを「増やす」ことを命題と考えているなんて、ちょっと”エンジェル”な気がしませんか。記念すべき初代メンバーは11社。どんな会社が同盟に参加しているか、ぜひチェックしてみてください。