あきのエンジェルルーム 略歴

2014年12月18日

イクボス界の「サムライ・ブルー」に! これが“伝説のイレブン”だ  ♡Vol.16

 いつも心にエンジェルを。

 ワークライフバランス(仕事と家庭の両立)や育児への理解が深い管理職「イクボス」を育てるための、「イクボス企業同盟」について前回紹介しました。すると、「つまり加盟しているところは、みんなエンジェル企業って考えていいの?」「どんな企業が加盟したのか、もっと詳しく知りたい!」という質問を各所からいただきました。
 最初の質問の答えは「NO!」です。

 取り組みの内容、方向性はまちがいなく「エンジェル」なのですが、始めただけでは、必ずしも「エンジェル企業」とは言い切れません(♡Vol.9 の「仮面エンジェル企業」も読んでね)。
 しかし、公の場で、「イクボスを増やす」と“宣言”したわけですから、エンジェル企業もしくはその予備軍であるのは確かです。現在は11社ですが、まだ加盟していない企業向けの勉強会なども開き、加盟企業を1年後に50社程度に増やすのが目標ということですから、これからこそ注目ですね(画像:イクボス企業同盟HPより)。
 次に2番目の質問に答えます。女性社員が多くて、「なるほどね」という企業もあれば、「エッ、ここがどうして手を挙げたのかな」と意外な企業もあります。
 仕掛け人であるNPO法人ファザーリング・ジャパンの安藤哲也代表理事は、初代メンバーを“伝説のイレブン”と命名していました。それぞれの担当者(人事部の人が多かったです)の意気込みとともに紹介します。

◆株式会社みずほフィナンシャルグループ(金融):年に約1600人が産休育休を取得し、出産後に職場復帰している。社内広報誌やビデオ作製、育休復職前セミナーなど、さまざまな角度から多様な働き方をサポートしている。管理職の意識も向上してきた。 

◆全日本空輸株式会社(航空):社員の54%が女性。それでも昔は出産退職が主流だった。それが今では年に約1000人が育児休暇を取っている。上司の理解、配偶者の理解が大事。ワークライフバランスが社会全体の風潮になるように後押ししたい。

◆コクヨ株式会社(文具):今年で創立110年。向こう100年の成長戦略にダイバーシティーは不可欠と考えた。社内の実践はまだ不十分だが、ようやく産後復職率はほぼ100%を達成した。中間管理職の意識はまだ追いついていないと感じる。

◆グラクソ・スミスクライン株式会社(製薬):日本人社員の25%は女性。育児介護休暇や時短を利用する社員も多い。パートナーの女性の社会進出を進めるために男性社員の意識改革、企業改革、社会通念改革に取り組み、ベストプラクティス(最善の方法)を共有したい。

◆株式会社日立ソリューションズ(情報通信):人しか経営資源がない会社なので、残業は多い。社員の85%が男性。病児・病後児保育費用補助制度を導入し、子どもの病気のとき、両親のどちらかが休む、という選択肢だけでなく、病院や施設、ベビーシッターに預ける、ということも可能になった。

◆UBS証券株式会社(金融):外資系の金融といえばモーレツ、というイメージを払拭したい。イクメンセミナーなどでロールモデルを示し、育児や介護で制約のある社員のワークライフバランスを維持したい。ワークライフバランスの満足度が上がると、会社への忠誠心もアップする。

◆東京急行電鉄株式会社(鉄道):鉄道というと男性的なイメージだが鉄道業務に限っても女性社員が180人いる。2014年10月から戦略的にダイバーシティーに取り組み始めたばかり。イクボスを増やすことでワークライフバランスを実現したい。

◆サイボウズ株式会社(情報通信):4割が女性、しかも社員の平均年齢は32歳。ボス(管理職)も30~40代が中心で、まさに育児中の世代。ベンチャーなので、女性社員が子どもを産み退社しても、知名度が低くて思うように補充要員を採れなかった。柔軟な働き方は必要に迫られて整備した。

◆日本生命保険相互会社(金融):7万人いる従業員のうち9割が女性。今までもダイバーシティーをがんばってきたが、これからもがんばりたい。男性、上司の意識改革のため、現場の反発もあったが、2013年に男性社員の育休取得率100%を導入、達成した。

◆富士ゼロックス株式会社(機械):取り組みが遅れていたが、いまはダイバーシティーは柱の一つ。多様性が変化と成長を生む。労働組合とも協力して、2万3000人の従業員のワークライフバランスを充実させようと取り組み、上司が変わる兆しが出てきている。

◆トヨタファイナンス株式会社(金融):少子高齢化、アベノミクスも何も関係なく、社員の幸せをどうしたら実現できるか、試行錯誤してきた。以前は30歳で7割の女性が辞めていたが、今は3割にまで減った。第2フェーズとして男性の意識改革に取り組みたい。
 ことほどさように、取り組みのレベル、制度の浸透度、成熟度には差があります。育休の定義、取得日数も、各社さまざま。現時点ではエンジェルにはほど遠い企業もあります。
 しかし、女性にばかり、「働け、産め、育てよ、介護せよ」と頑張りを押しつける成長戦略より、女性の周囲、上司や夫こそ、先に変わるべきという「志」は貴重です。すでにイクボスがわんさかいる企業より、現時点ではダメボス(失礼!)の多い企業こそ、「変化」が必要なのです!
 1992年に育児休業法が改正され、男性も育休が取得できるようになりました(左上写真)。20年以上経った今も、男性の育休は、まだ市民権を得たとは言えません。「イクボス」の浸透にもきっと時間はかかるでしょう。

 オセロのように、そして「アタック25」の必勝パターンのように、これらの企業が「角」となって、一斉にひっくり返っていくといいですね。

人気記事