あきのエンジェルルーム 略歴

2014年12月04日

会社は選べても上司は選べない!? イクボスカモーン!の巻 ♡Vol.14

 いつも心にエンジェルを。

 出産や子育てをきっかけに女性の約6割が退職しているのはなぜでしょうか(バックナンバーも読んでね)。
 みなさんも、もしかしたら、「子どもが小さいうちは子育てに専念して、落ち着いたら再就職しよう」と思っているかもしれません。実際、未婚女性(18~34歳)の理想とするライフコースは、「両立コース」「専業主婦コース」をおさえ、この「再就職コース」の割合が最も高いのです(2010年国立社会保障・人口問題研究所「結婚と出産に関する全国調査」)。
 でも、ちょーっと待った!

 再就職で、出産前と同等の仕事を見つけることができる女性はほとんどいません。よほど専門的なスキルのある人でない限り、正規労働者として再就職するのは不可能に近いのが現実です。非正規になると、賃金は安く、雇用は不安定になります。経済力は夫頼みになり、夫との関係性が「対等」から遠ざかります。
 そんなリスクを背負っていても、女性がいったん退職する背景には、夫の協力が期待できず、「辞めないと、子育てできない」という現実があるからです。ほんの数日であっても、育児休暇を取る男性社員は全体の2%程度しかいません。育休を取る女性社員は80%以上なのに、です。

 収入の関係(育休期間中は原則無給)で、男性は育休を取りにくいと言われますが、2014年4月から、育児休業中に雇用保険から支給される給付金が、育休を取りはじめて半年間は、従来の賃金の2分の1から3分の2に増えました。こういった支援制度が整っても、職場の感覚、夫婦の価値観のせいか、男性の育休取得率は、厚生労働省が調査を始めた2007年以降からまだ一度も3%を超えたことがありません。(左上写真は2012年「イクメン」賞を受賞した著名人)

 私自身、出産時も復帰後も、夫は地方に単身赴任中でしたので、育児参加は期待できませんでした。シングルマザー状態で仕事を続けるのはまさに綱渡りの連続、後輩に同じような働き方は、とてもじゃないけどすすめられません。

 職場は出産前と同じ週刊誌の編集部、しかも表紙撮影やグラビア、対談など、芸能人や作家といった著名人が相手の仕事を担当していたので、土日も深夜も関係ありません。
 残念なことに実家は遠く、ベビーシッターさんが頼りでした。保育園にお迎えに行ってもらい、夕飯は朝や前日の夜にまとめて作って冷凍しておき、食べさせてもらっていました。

 自分が保育園にお迎えに行けるのはせいぜい週に1、2回。その日を確保するために万全の準備をしたつもりでも、著名人の訃報など、突発的なことも起こります。そのときは抱っこひもで娘をお腹の前にくくりつけて、再び会社に戻り、娘の頭ごしにパソコンで作業をしたり、デザイン会社に子連れでレイアウトの相談に行ったりしていました。職場では若い男性部員が娘を肩車してくれたり、女性部員があやしてくれたり、あたたかい雰囲気に救われましたが、やはり聞こえてくるのです。

 「こんな時間まで赤ちゃんを起こしておいていいの。普通はもう寝る時間じゃないの?」

 特にパパ社員によく言われました。おそらくその家庭では、子どもの健康や生活習慣に気を配り、早く寝かしつけているのでしょう。「悪い母親だ」と責められている気がしました。だからといって、その人が私の仕事を代わってくれるわけではありませんし、私以外に、目の前の仕事をする人間はいません。
 特に「仕事命!」というタイプでも、出世を望んでいたわけでもないけれど、当時、編集部にいたママ部員は私ひとり。独身部員はもちろん、安い給料で同じような激務をこなしている契約部員を前に、「特別待遇」を求めるような気持ちには到底なれませんでした。
 「もっと実家が近かったら」「もう少しパパが協力的だったら」。何度も意味のない「たられば」が頭に浮かびました。出産を機に退職する女性社員の気持ちはよーくわかります。
(右上写真は世田谷区の子育て支援施設。子を保育園に預けられないママたちの交流の場になっています。ちなみに私も区立保育園の空きが出るまで2年待ちました)
 いかにも“3K職場”のイメージのマスコミに限らず、「ワークライフバランス」が浸透しにくい職場には共通点があります。
 「業務の量や内容に比べて働く人の数が少ない」という物理的な事情と、「いい仕事をする(いいモノを作る)ためには“限界”まで努力するべき」という暗黙の了解です。だから、「ママだからって時短勤務なんてされたら迷惑だよね」「男性が育休なんてありえない」といったマッチョな雰囲気ができてしまうのです。
 私のかつて働いていた部署で、30代の男性社員が3カ月間の育休を取得したとき、当時の上司は本人のいないところで、「あいつ、こんな忙しいときに休みやがって、戻ってきたらこき使ってやる!」「一回殺す」などと不穏当な発言をしていました。ダメな職場ですね。こんな職場ではママ部員はもちろん、どんな部員も安心して働けるわけがありません。 

 みなさんは、入社する「会社」を選ぶことができます。でも、残念ながら「上司」は選べません。福利厚生制度が整った会社に運良く入社できたとしても、自分の所属する部署の上司が、上に登場するような上司だったら、制度は絵に描いた餅、宝の持ち腐れです。
(左上写真は2012年に長男誕生時に3.5日間の育休を取得した鈴木英敬・三重県知事と妻の美保さん。「育休知事」としては湯崎英彦・広島県知事に次いで史上2人目)

 解決策はあるのでしょうか。実はいま、「上司を変える」ための取り組みが進んでいます。その名も「イクボスプロジェクト」といいます。
 「部下・スタッフのワークライフバランスを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(イクボス)」を増やすための活動です。詳しくは次回、紹介します。