2014年11月13日

続く地銀再編、志望業界の厳しい面も知ろう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 横浜銀行と東京の東日本銀行、熊本県の肥後銀行と鹿児島銀行――地方銀行で経営統合の動きが相次いでいます。背景には、人口減少やこれまで地方にあった工場の海外移転など構造的な変化があります。金融庁も合併や統合を勧めています。同様の動きは今後も続くのでしょうか?

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の連載「けいざい深話 地銀サバイバル②/消えた県境 金利下げ消耗戦」です。
 記事の内容は――栃木県はかつて足利銀行が5割以上のシェアを握り、激しい競争とは無縁だったが、同行が2003年に経営破綻(はたん)すると、栃木銀行のほか群馬銀行や茨城県の常陽銀行も栃木県に攻勢をかけ、全国有数の激戦区になった。パナソニック、コマツ、キリンビールと栃木では工場閉鎖が続き、ここ10年で事業所の数は3割減り、残った貸出先の奪い合いは苛烈(かれつ)に。昨年末に再上場を果たした足利銀に「殿様商売」と言われたかつての面影はない。「名古屋金利」という言葉まである東海、多くの地場銀行がしのぎを削る近畿など、各地で低金利競争が起きている。加えて、預金者の高齢化が進んでいるため、相続による地銀からの預金流出も懸念されている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 28年前、私が新聞記者として最初に赴任した青森県には、青森銀行、みちのく銀行という二つの地方銀行がありました。地元経済界での影響力は絶大で、就職先としても青森県庁とこの2行は誰もがうらやむ存在でした。2行の支店は青森市内をはじめ県内各地にありましたが、当時私が給与振り込み口座を持っていた都市銀行は職場に近い支店が1カ所しかなく、不便な思いをした記憶があります。各県には、こうした地域を代表する地方銀行がたいていあり、地域経済を支えています。

 地方銀行は、全国に支店を展開する都市銀行(三菱東京UFJ、みずほ、三井住友のメガバンク3行など)に対し、各都道府県を中心とした地域で営業する銀行です。明治時代の旧国立銀行の流れをくむ全国地方銀行協会加盟の地銀64行と、旧相互銀行から転換した第二地方銀行協会加盟の第二地銀41行があり、両方を「地方銀行」と呼んでいます。前者の多くは地元自治体の指定金融機関で、地元企業のメインバンクのため高い域内シェアを持っています。第二地銀は中小企業などの取引先が多く、きめ細かい対応が特徴です。

 今も地銀の地域での存在感は大きいのですが、その足元が揺らいでいることが、今日取り上げた連載記事からわかります。少子高齢化と人口減少、これまで地方にあった工場の海外移転などによる地方経済の衰退で経営環境は厳しくなっています。多くの地銀が、残された企業や個人に群がり、低金利での融資を競って体力をすり減らす構図です。このため合併や統合を進め、体力を強めて生き残らせようというのが金融庁の方針です。

 横浜銀行、東日本銀行の統合が実現すれば、単純合算で預金量は約13兆7000億円、店舗数は関東の1都6県を中心に計約280店。預金量で九州の地銀連合「ふくおかフィナンシャルグループ」(福岡市)を抜き、全国で最大の地銀グループになります。合併したある地銀トップは「競争に勝ち残るには、統合による経営の効率化が必要」と言い、SMBC日興証券の国分希氏は「地域金融機関の消耗戦が続く中で、規模の大きな銀行が小さな銀行を吸収するような再編が今後もさらに広がる可能性がある」と指摘しています。肥後銀行と鹿児島銀行を含め、この数年の経営統合の動きは、11月14日掲載の「業界トピックス」で詳しく触れます。下にリンクがありますので、こちらも読んでみてください。

 金融に関心があって、とくに地元での就職を目指す人や地域に貢献したい人にとって、地銀はとても魅力的な企業だと思います。目指す人は、その銀行のいい面だけではなく、厳しい側面も知ったうえで挑戦してください。志望する銀行はどうしたら生き残っていけるのか、新たな成長戦略を描けないか、あなたなりに考えてみてください。厳しい環境を知っておかねばならないのは他の業界でも同じです。面接で「この業界の将来について、あなたの考えを聞かせて」といった質問は定番ですよ。
 明日以降も経済面の連載「地銀サバイバル」は続きます。

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