2014年11月12日

円安で明暗 決算記事で企業の好不調を知ろう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 自動車など海外で稼ぐ大企業は絶好調だが、原料を輸入に頼る業種は不振、経営基盤が弱い中小企業は強い危機感――業種によって業績の明暗がはっきりしてきました。加速する円安の影響です。9月中間決算から、各企業の好不調とその理由を知りましょう。

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「円安 明暗/大手に輸出の恩恵・コスト膨らむ中小/十傑に自動車3社/輸入業種は危機感」です。
 記事の内容は――東京証券取引所第1部の上場企業の2014年9月中間決算の発表がヤマ場を越えた。SMBC日興証券が発表済みの1048社(集計対象の75.7%)をまとめたところ、最終的なもうけを示す純利益の総額は約11兆円に達し、過去最高を更新する勢いだ。好調が目立つのは輸出や海外で稼ぐ企業。トヨタ自動車は純利益が1兆1268億円と過去最高となるなど、自動車メーカーは上位10社に3社入った。日立製作所や東芝、三菱電機など発電や鉄道といったインフラ関連も伸びた。一方、発表済みの15.8%にあたる166社は2015年3月期の純利益予想を引き下げた。円安の悪影響を受けた企業が目立つ。輸入小麦でパスタをつくっている日清製粉グループ本社は純利益見通しを引き下げ、燃料をドルで買う日本航空の通期見通しは減益。業績の明暗は株価にもあらわれ、トヨタなど輸出産業では今年最高値更新が相次ぐが、小売りや紙パルプなど円安の影響を受けそうな企業は値下がりが目立つ。中小企業は膨らむコストを規模の大きい取引先への販売価格に転嫁するのが簡単ではないため、危機感がさらに強い。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 決算とは、企業が一定期間の経営成績や財政状態をまとめ、「いくらお金を使って、いくらもうけたか、財産の状況はどうなっているのか」を明らかにする手続きのこと。法律で1年に1回は行うことになっていますが、多くの企業は上半期6カ月間の中間決算もまとめます。4月から翌年3月を会計年度とする企業が大半で、4~9月の中間決算の発表が今の時期に集中します。

 9月中間決算の純利益トップ10を並べた一覧表を見てください。自動車や商社など輸出産業が好調です。一方で食品業界などは円安による輸入コスト増が響き、利益予想を引き下げる会社が目立ちます。円安は物価上昇を招き、個人消費を冷え込ませかねません。自動車産業も前年は好調だった国内での販売は落ち込んでおり、販売店や部品メーカーなどには、悪い影響が出始めています。米国など向けの車は海外でつくる台数が増えているため、恩恵がある部品メーカーは自動車メーカーと一緒に海外に進出したり海外工場に輸出したりできる企業に限られています。中小、零細企業には、原材料の高騰など「円安の負の側面」だけが重くのしかかる構図です。

 就活では企業の短期的な決算の数字に一喜一憂する必要はありませんが、いま企業が置かれている状況は如実に数字に表れます。決算記事からは、企業が何に力を入れているのかや、取り組みの成果、課題、業界の最新動向が読み取れます。志望業界・企業の決算記事には必ず目を通してください。円安がこのまま続いたら……、加速したら……など、今後の円安の影響も予測してみましょう。これからOB・OG訪問などで社員と話すときの話題にもなりますよ。

 円安のイロハについては「円安ってなんだ?原因と企業への影響を知ろう」(9月10日)も読んでみてください。

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