ニュースのポイント
就活で多くのみなさんが関わる会社にリクルートがあります。そのリクルートホールディングス(HD)が東京証券取引所第1部に株式を上場しました。企業価値を示す
時価総額は約1兆9000億円でソニーや東芝と肩を並べました。今年最大の上場で、1990年以降でも3番目の大型上場です。集めた資金で海外企業を買って、人材サービス世界一をめざします。将来、独立して起業したいという人にとってリクルートは特別な存在でもあります。
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「リクルート上場 1.9兆円/海外企業の買収加速へ/時価 90年以降3番目」です。
記事の内容は――リクルートHDの峰岸真澄社長は「2020年をめどに人材サービスで世界一、30年をめどに販売促進の分野でも世界一をめざす」と宣言した。同社は、人材を起業に派遣したり紹介したりする「人材サービス」のほか、旅行や住宅などの情報を冊子やネットで紹介して販売を促す「販売促進」も展開している。1962年の学生向け求人情報誌に始まり、旅行情報誌「じゃらん」、結婚の「ゼクシィ」など「マッチング(結びつける)」ビジネスモデルと、「モーレツ営業」で成長してきた。2007年から海外事業を本格化し、海外企業の買収も重ねて世界16カ国に展開中。今後は海外の売上高を現状の23%から5割に引き上げることをめざす。2014年3月期の売上高は過去最高の約1兆2000億円だが、世界最大手のアデコ(スイス)の3分の1に満たない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
就職情報サイトでは、なんといっても「リクナビ」が有名です。「朝日学情ナビ」のライバルではありますが、サイトによる就活を広めて定着させた会社ですから、取り上げないわけにはいきません。
株式の上場とは、会社が発行する株式を証券取引所でだれでも売り買いできるようにすることです。ふつう会社をつくるときは株式を社長の身内や知人ら限られた人だけに売り、上場はしません。事業拡大のためにもっとお金が必要になった会社が審査を経て上場します。株式が高値で売買されるようになれば、新しい株式を発行し、事業に使うお金をさらに増やすことができます。上場は企業が「一人前」になった証しとも言われ、知名度や信用力が上がり優秀な人材も集めやすくなります。一方で、経営情報を公開し、もうけを配当して株主に還元する責任も求められます。短期の利益を求める株主の声にも答えなければならず、経営の自由度は落ちます。リクルートは国内で事業展開する資金は上場しなくてもまかなえる姿勢でしたが、海外展開を本格化するためにはM&A(合併・買収)などに多額の資金が必要と判断し、上場に踏み切ったわけです。
株式上場については、4月15日の今日の朝刊「株式上場する企業に注目」や、今週アップした業界トピックス「すかいらーく 8年ぶりに再上場 郊外から駅前へシフト」でも書いています。読んでみてください。
リクルートは、終身雇用が当たり前の日本の伝統的な企業とはまったく異なる風土の会社です。キーワードは新規事業とモーレツ営業。若いころから社内で新規事業に携わって起業のノウハウを学べるため、30代での転職、起業が当たり前。入社時から「リクルートで事業を学んで、いずれ独立します」と公言する社員が多く、定年前の退社を社内では「卒業」と呼ぶそうです。モーレツ営業では、一つのビルの1階から最上階まですべての入居企業にアポなしで飛び込み営業をかける「ビル倒し」が有名です。1988年のリクルート事件も、不動産関連の新規事業の株式をめぐって起きました。
サッカーJリーグチェアマンの村井満さん、IT起業・サイバーエージェントの藤田晋さん、東京都初の民間人中学校長を努めた藤原和博さん、NTTドコモで「iモード」を開発した松永真理さんら著名人が輩出しているほか、人材系やIT系の成長企業の重要なポジションに必ず「元リク(リクルート出身者)」社員がいると言われます。私は仕事柄、各地の大学のキャリアセンターにお邪魔することが多いのですが、就職指導に熱心だったり、何か新しい試みをしようとしていたりする大学では、職員に「私、実はリクルート出身なんです」と告白されることが度々あります。採用や研修関連の企業の元リクにも何人も会いました。リクルートのことを「日本最強のビジネススクール」と呼ぶ人もいます。今回の上場をめぐっても、自社株を持っている社員が株式を売って起業資金を調達し、独立する人が相次ぐのではという指摘も出ています。
世界の人材派遣事業は40兆円市場と言われ、さらに成長が見込まれます。日本の企業の海外進出では、多くのメーカーが定着していますが、サービス業での成功例はあまり聞きません。今リクルートの「世界一」の野望はどうなるのか。今後の展開から目が離せませんね。
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