2014年08月01日

「五輪TOPスポンサー」ブリヂストンの歴史と戦略

テーマ:スポーツ

ニュースのポイント

 世界最大のタイヤメーカー、ブリヂストンが国際オリンピック委員会(IOC)とTOPスポンサー契約を結びました。日本企業はパナソニックに続き2社目です。2020年の東京五輪を控え、どんな戦略、狙いがあるのでしょうか。

 今日取り上げるのは、総合面(2面)の「いちからわかる!オリンピックのTOPスポンサーって?/一業種1社だけ。世界で五輪マークを使って宣伝できる」です。
 記事の内容は――TOPスポンサーは、IOCが一業種に1社だけ認める最高位の契約。1984年ロサンゼルス大会から始まった。コカ・コーラなど世界の有名企業が名を連ね、ブリヂストンは11社目。契約金は2024年までの10年間で350億円に上るらしい。五輪の競技場では広告が認められないが、全世界で五輪マークを使った宣伝ができる。タイヤ、免震ゴム、自転車なども契約の対象で、五輪に関わる現場で納入する際の優先交渉権も持つ。パナソニックも五輪に大型ビジョンや放送機材を独占的に納入し技術をアピールしてきた。日本企業は1980年代後半のバブル期にはパナソニック、ブラザー工業、リコーの3社が名を連ねたが、契約金高騰や産業の盛衰によって激しく入れ替わっている。TOPからの協賛金は放送権料と並ぶIOC収入の両輪で、2009~2012年は計9億5000万ドル(約950億円)だった。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 TOPはThe Olympic Partnersの略。表にあるように、世界を代表する大企業11社が名を連ねています。最大12社とされる狭き門で、世界に展開するグローバル企業でなければ選ばれません。

 世界のタイヤシェア(2012年)は、①ブリヂストン15.3% ②仏ミシュラン14.0% ③米グッドイヤー10.1%。以下、日本のメーカーでは、⑤住友ゴム4.1% ⑧横浜ゴム3.0% ⑬東洋ゴム1.5%、と続きます。ブリヂストンの地域別の売上高をみると、米州46%、日本19%、欧州12%。国外が圧倒的に多く、日本を代表するグローバル企業の一つだとわかります。TOPスポンサーへの日本企業の新規参入は25年ぶり。契約金は多額ですが、ブリヂストンは東京五輪を控えてメリットは大きいと判断したわけです。

 余談ですが、ブリヂストンの社名が創業者・石橋正二郎の名字から付けられたのは有名な話です。ブリヂストンの企業ホームページの「沿革」や「ブリヂストン物語」を読んでみると、当時のタイヤメーカーはダンロップ、ファイアストン、グッドイヤーなど発明者や創業者の名前を付ける例が多いのにならったもので、「ストーンブリッヂ」では語呂がよくないと並べ替えたそうです。創業は1931(昭和6)年ですが、ルーツは地下足袋づくり。足袋の底に使うゴムがタイヤに発展したわけです。企業の歴史を調べると面白い事実に出合えますよ。

 スポンサー選定では、スポーツとの深い関わりも評価されました。同社の沿革には「1935(昭和10)年 ゴルフボールの本格的生産を開始」とあり、創業直後からスポーツに力を入れていたことがわかります。今では、ゴルフクラブや自転車も有力事業です。IOCのバッハ会長はTOPスポンサー発表の記者会見で「様々な国でスポーツを支援してきた実績があることも理由の一つ」と話しました。米男子ゴルフツアーのブリヂストン招待をはじめ、ゴルフやテニスなど国内外の数多くの大会に協賛しています。1964年東京五輪を機に創設された自転車競技部(現ブリヂストンアンカー)からは多くの五輪選手が輩出。自動車レースの最高峰F1には2010年の撤退まで14年間タイヤを供給してきました。オートバイロードレースの最高峰モトGPの公式サプライヤーも2015年限りで、今回、五輪への投資にかじを切った形です。「スポーツを愛する企業の顔」を世界に広めることで、売上の85%を占めるタイヤだけでなく自転車やスポーツ用品などの多角化にも力を入れる方針です。

 パナソニック、ブリヂストンの両社が2016リオ五輪、2020東京五輪に向け、具体的にどんな手を打ってくるのか。ライバル各社はどう対抗するのか。注目してください。

※朝日新聞デジタルの無料会員は1日3本の記事全文を、有料会員になればすべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。ぜひ登録してください。

アーカイブ

テーマ別

月別