2019年03月22日

イチロー選手引退…就活生が学ぶべきは「準備」「失敗」「見られてる意識」【今週のイチ押しニュース】

テーマ:スポーツ

 大リーグ・マリナーズのイチロー選手(45)が引退を表明しました。日米の28年間で4367本という前人未到の安打を放つなど、数々の記録を打ち立てましたが、記憶にも残る偉大な選手でした。そんなレジェンドから就活生が学ぶべきことは?(編集長・木之本敬介)

(写真は、引退会見で笑顔を見せるイチロー=3月22日未明)

栄光の軌跡

 イチロー選手の実績を振り返ります。1991年秋のドラフト4位で愛知・愛工大名電高から当時のオリックスに入団しました。1994年に210本の年間最多安打(当時)打ち、この年から史上初の7年連続首位打者に。2000年オフに大リーグ・マリナーズに移籍し、2012年途中からヤンキース、2015年からマーリンズでプレーしました。2004年に262安打を放ち大リーグの年間安打記録を84年ぶりに更新しました。2009年には大リーグ史上初の9年連続200安打をマーク、10年連続まで伸ばしました。2016年6月、日米通算安打数を4257とし、参考記録ながらピート・ローズの持つ大リーグ最多安打を抜き、同8月には大リーグ史上30人目、日本選手初の通算3000安打を達成しました。打撃だけでなく、「レーザービーム」と称された送球、大リーグで10年連続ゴールデングラブ賞を得た守備範囲の広さ、盗塁でもファンを魅了。野球世界一を競うワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で優勝を決める決勝打を放ったのも記憶に残ります。

(写真は、日米通算4000安打を達成したヤンキース時代のイチロー=2013年8月21日)

笑顔でグラウンド一周

 近年は出場機会が減り、昨年3月にマリナーズに復帰するも結果を残せず、今季はマイナー契約を結んで20、21日に東京ドームであった日本での開幕2連戦に出ました。計5打数無安打でしたが、21日は試合後に記者会見することが発表されたことから、事実上の「引退試合」に。イチローの一挙手一投足に大歓声が送られ、守備途中で交代する際には、試合中にもかかわらず、マリナーズの全選手・スタッフと握手してハグ。試合後も帰らずに待つ満員の観客のもとに戻り、グラウンドを一周して大歓声に笑顔で応じて選手生活に幕を閉じました。今日未明の引退記者会見で、印象に残っているシーンを聞かれたイチロー選手は「この後、時間がたったら今日が一番真っ先に浮かぶのは間違いないと思います」と答えました。

(写真は、試合後に場内を一周し、ファンの歓声に応えるイチロー=3月21日)

「努力の天才」

 イチロー選手は「天才」だと思います。野球の才能も飛び抜けていますが、準備を怠らない「努力の天才」でもあります。毎試合、誰よりも早く球場入りして入念に準備をするのは有名です。近年、出場機会が減っても、その姿勢は変わらず、ストレッチから素振り、そして打撃練習。これを試合の間、繰り返していたといいます。

 オリックス時代の同僚も、万全すぎるほどの準備をして試合に臨む姿勢が印象に残っているそうです。「試合前というよりも、試合の終わった後から準備が始まっていました。彼は最後まで残って、道具の手入れをやっていた。そういうところが次の日の試合の準備へとつながっていたと思う」。バッティングに納得がいかなかった日は、日付が変わるまでマシンを相手に練習をする姿もよく目にしたと語っています。

 引退会見の冒頭でイチロー選手はこう語りました。
 「今日の球場の出来事、あんなもの見せられたら後悔などあろうはずがありません。もちろん、もっとできたことはあると思いますけど、結果を残すために自分なりに重ねてきたこと。他人より頑張ったということはとても言えないですけど、自分なりに頑張ってきたとははっきりと言えるので。これを重ねてきて、重ねることでしか後悔を生まないということはできないのではないかなと思います」

(写真は、巨人戦の前にウォーミングアップするイチロー=3月18日)

就活は「95%の努力と5%の運」

 才能あふれるイチロー選手でも努力と準備を怠れば、よい成績を残せなかったのです。就活も準備が何より大切です。今は学生優位の「売り手市場」ですから一人でいくつも内定を取る学生も多く、「就活なんて楽勝」という話も聞きますよね。でも、こうした学生は実は、自己分析、企業研究といった準備ができているんです。やり方は人それぞれですから、根を詰めなくてもできる「準備が得意な学生」もいます。どんなに優秀な学生でも、受ける企業のことをまともに調べず、社員にも会わずに採用試験を受けたら落ちます!

 先輩内定者はこう言っています。
 「インターネットだけの情報に頼らず、泥臭く足を使って数多くのイベントに参加したり、何十人もの内定者や社会人と会ったりしてきました。内定を頂いた企業についても、他の誰にも負けないと胸を張って言えるほど企業研究をしました。就活は、『95%の努力と5%の運』で成り立っていると私は考えます。言い換えれば誰でも努力次第で行きたい企業に行けるということです。就活を終えて振り返った時に『やりきってもう悔いはない』と思えるほど努力すれば、きっと良い結果が待っているはずです」(就活体験レポート「就活は95%の努力と5%の運」から)

(写真は、春の甲子園で投げる愛工大明電時代のイチロー=1991年3月29日)

イチローでも3回に2回は失敗!

 イチロー選手の大リーグ通算打率は3割1分1厘でした。「3割」が一流の証の世界で、45歳まで続けてのこの数字は驚異的です。そんなレジェンドでも、3回のうち2回は打ち損じていることになります。かつてこう語りました。
 「4000の安打を打つには、8000回以上は悔しい思いをしてきた。それと常に向き合ってきたので、誇れるとしたらそこじゃないかな」

 今の就活は、たくさんエントリーして、たくさん落ちるシステムになっています。先日、NHKの「就活応援TV」に出演したのですが、昨年の番組に出て就活を終えた4年生が「4勝11敗15分けだった」と話していました。引き分けは途中で選考を辞退した会社ですね。たいていの就活生は負け越します。その負け、失敗を反省して次にいかしてきたのがイチロー選手です。みなさんは200本ヒットを打たなくてもいいから、イチロー選手よりは気が楽ですね。納得できる会社の内定を1社もらえればいいんです。それでもたくさん落ちるのが当たり前ですから、ある程度の数は打席に立たないと、その1社にめぐり合うことはできません。最低20社へのエントリーを目指してください。就職人気ランキングのトップ100に名を連ねるような人気企業ばかり受けずに、BtoB(企業間取引)企業や中堅・中小企業にも早めに目を向けることが大事です。

(写真は、記者会見で米大リーグ挑戦の意欲を語るイチロー=2000年10月12日)

見られていることを意識しよう

 イチロー選手は、バットの構え方やボールの投げ方にとどまらず、グラウンドに入っていくときの走り方、ちょっとしたポーズ、表情まで、常に「見られている」ことを意識して行動していると聞いたことがあります。打席でのルーティンも、投げ方も「イチローならでは」で格好いいですよね。

 みなさんも採用試験では、よーく見られています。格好つけることはありませんが、選考にふさわしい態度ではないと判断されればアウトです。
 「部屋に入ってきた第一印象から、最後出ていくところまで、面接と言われる時間のすべてを見ています」(「人事のホンネ」サントリー
 「会った瞬間から、どんな挨拶をするかとか、目を見ながら話すかとか、服の端を触って話すなど、しぐさ一つとっても気になります」(「人事のホンネ」住友生命

 マスコミのビジネス職に内定した先輩はこう言っています。
 「説明会で心がけたのは、『しっかりメモをとる』『必ず一つは質問する』『基本的なマナーをしっかり守る』『記入式アンケートはきちんと心をこめて書く』でした。アンケートに連絡先を書く欄があったり、説明会で席が決められていて名札を付ける形式だったりすると、後で人事から面談の連絡がくることが多いです。どんなに小さな説明会でも必ず人事の方は見ていることを意識した方がいいと思います」(就活体験レポート「小さな説明会でも、見られていることを意識」から)

 努力と準備を怠らない、失敗にくよくよせず反省して次にいかす、見られていることを常に意識する――どれか一つでもいいので、イチロー選手を見習って実践してみてください。

(写真は、練習を終え、引き揚げるイチロー=2016年8月2日)

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別