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東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が、女性蔑視発言の責任をとって辞任することになりました。「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」との発言には、世界中から批判の声が上がり、聖火リレーランナーやボランティアの辞退表明、アスリートからの反発も相次ぎました。中でも、五輪・パラリンピックスポンサー企業の厳しい反応が辞任の決定打になったとみられています。五輪を資金面で支えるスポンサー企業の影響力はそれだけ強いということですね。企業のスポーツイベントなどへの取り組みを知るのも大事な企業研究です。日本はジェンダーギャップ(男女格差)ランキングで世界の下位に低迷しています。今回の会長交代騒動を日本が劇的に変わるきっかけにしたいものです。(編集長・木之本敬介)
(写真は、東京五輪・パラリンピック大会組織委の理事会と評議員会の合同懇談会で辞任を表明する森喜朗会長=2021年2月12日、東京都中央区、代表撮影)
(写真は、東京五輪・パラリンピック大会組織委の理事会と評議員会の合同懇談会で辞任を表明する森喜朗会長=2021年2月12日、東京都中央区、代表撮影)
盟友の直言
森氏の発言に対するスポンサー企業の反応を、朝日新聞の記事から紹介します。●トヨタ自動車
「今回の大会組織委員会のリーダーのご発言はわたしたち、トヨタが大切にしてきた価値観とは異なっており、誠に遺憾だ」(豊田章男社長のコメント)
●日本生命「発言は女性蔑視ともとらえられ、男女平等がうたわれている五輪・パラリンピックの精神に反する表現で大変遺憾。組織委に対しても伝えた」(朝日新聞の取材に)
●東京海上日動火災保険「五輪・パラリンピックの理念に反するもので、誠に遺憾だ。引き続き、多様性と調和を掲げる東京大会の成功、そして安心・安全な大会になるよう尽力していく」(広報担当者が取材に)
●P&G「私たちは平等な社会の実現など五輪のめざす精神、理念に共鳴しており、今後もパートナーとしてそのような大会が実現するよう協働していきたい」(同)
政治が絡む出来事にはふだんは慎重な企業が多いのですが、今回は異例なほどの強い反発です。NHKは9日夜のニュースで、国内のスポンサー企業70社のうち、取材に応じた54社中36社が「発言は容認できない」などと回答したと報じました。半数以上が明確に批判の声を上げたわけです。さらに、国際オリンピック委員会(IOC)で東京大会の準備状況を監督する責任者、ジョン・コーツ副会長がテレビ電話会談で「特に最上位スポンサーからの反発が強い」と森氏に厳しい口調で伝えました。「盟友」といわれるコーツ氏の直言を受けて、森氏は辞意を固めたようです。
そもそもスポンサー企業って?
コーツ氏が「最上位」と言ったスポンサーは「TOP(トップ、The Olympic Partners)」と呼ばれる14社です。全世界で五輪マークを使った宣伝ができ、五輪に関わる自社製品納入の優先交渉権も持てます。IOCは、商業化にかじを切った1984年ロサンゼルス大会から「1業種1社」のスポンサー制度を導入。協賛金はテレビ放映権料と並びIOCの収入の2本柱となりました。日本企業では1980年代のバブル期に、パナソニック、ブラザー工業、リコーが名を連ねました。ブラザー、リコーはその後撤退。その後、トヨタ自動車、ブリヂストンが加わり、現在3社です。近年は日本以外のアジア勢が存在感を増し、1997年に韓国のサムスン電子、その後、中国のレノボ、アリババグループ
、台湾のエイサーなどが続きました。TOPの協賛金は10%をIOCが使い、残り90%を組織委や各国の五輪委員会などに分配します。
東京五輪スポンサーは4ランク
東京五輪のスポンサーは4ランクに分かれています。TOPの下に、日本国内では上位の「ゴールドパートナー」、中位の「オフィシャルパートナー」、そして「オフィシャルサポーター」がそれぞれ大会組織委員会と契約を結び、位置づけに応じて大会エンブレムや過去映像などを使う権利が与えられています。スポンサー料は1社あたり15億~150億円程度といわれますが、東京大会での国内スポンサーからの収入はロンドン大会やリオ大会の数倍に増えました。東京五輪の協賛を希望する企業が想定以上に多かったことから、組織委と大会運営を仕切る電通がIOCを説得して、「1業種1社」の原則を崩して、「競争」から「協調」に枠組みを変えた結果、日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)、みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループなど、ライバルが名を連ねるようになったためです。
組織委は2020年の年末に、国内スポンサー全社が契約延長に合意したと発表。新型コロナの影響で経営に深刻な打撃を受けた企業もある中、追加協賛金も総額220億円にのぼりました。
(表のスポンサー数は、2020年4月時点)
SDGsに反したら…
大金を投じているスポンサー企業にとっては、五輪スポンサーであることが企業のマイナスイメージにつながったのではたまったものではありません。多くの企業は今、ジェンダー平等を掲げる国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)に賛同しています。SDGsに反する姿勢をとったりすれば、消費者だけでなく取引先や投資家からもそっぽを向かれ、ビジネスに大きなマイナスの影響を及ぼしかねません。そんな時代に生き残りを競っている企業にとって森氏の発言は絶対に容認できない内容だったのですね。協賛金がなければ立ち行かないのが現代の五輪ですから、IOCに対するスポンサー企業の影響力も極めて大きいことが分かります。(写真は、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会のホームページ。組織委は7日夜の声明で森会長発言を「オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なもの」と表明した)
スポンサー一覧から企業研究
スポンサー企業は、それぞれのかたちで東京五輪・パラリンピックに関わり、支えています。選手村で箱形の自動運転の大型電気自動車(EV)を移動手段として走らせるトヨタや、競技場の映像機器などを担うパナソニックのように事業に直結した展開をする会社もあります。以下のスポンサー企業一覧を開くと、各企業のコーポレートサイトにつながっています。志望企業があれば、どんな取り組みをしているのか調べてみましょう。面接で話題に出るかもしれませんよ。●スポンサー一覧はこちら
●ジェンダーギャップについては「丸紅が総合職採用の半数女性に 企業選びの視野広げよう」【イチ押しニュース】も読んでみてください
(写真は、五輪マークのオブジェ=2021年2月4日、東京都港区)
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