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2020年東京オリンピックは、チケット抽選販売に応募が殺到するなど来夏の開催に向けてだんだん盛り上がってきましたね。五輪にはたくさんの企業が関わります。これから、国際オリンピック委員会(IOC)の最高位スポンサー「TOP(トップ、The Olympic Partners)」をはじめ、公式スポンサー企業を目にする機会が増えてきます。スポンサー企業はなぜ多額の協賛金を出し、五輪・パラリンピックをどう支えているのでしょう。企業の具体的な活動も紹介します。面接で話題に出るかもしれませんよ。(編集長・木之本敬介)
(写真は、リオ五輪の閉会式=2016年8月21日)
(写真は、リオ五輪の閉会式=2016年8月21日)
「TOP」の日本企業はパナ、トヨタ、ブリヂストン
TOP13社は全世界で五輪マークを使った宣伝ができ、五輪に関わる自社製品納入の優先交渉権も持てます。IOCは、商業化にかじを切った1984年ロサンゼルス大会から「1業種1社」のスポンサー制度を導入。協賛金はテレビ放映権料と並びIOCの収入の2本柱となりました。日本企業では1980年代のバブル期に、パナソニック、ブラザー工業、リコーが名を連ねました。ブラザー、リコーはその後撤退し、今はトヨタ自動車、ブリヂストンが加わっています。近年は日本以外のアジア勢が存在感を増し、1997年に韓国・サムスン電子、その後、中国・レノボ、台湾・エイサーが続き、今回は中国のネット通販大手、アリババグループが加わって話題になりました。TOPの協賛金は10%をIOCが使い、残り90%を組織委や各国の五輪委員会などに分配します。●「五輪TOPスポンサー」ブリヂストンの歴史と戦略参照
(写真は、TOP契約の調印を終えて握手する津谷正明・ブリヂストンCEO兼会長とトーマス・バッハIOC会長=2014年6月13日、東京都千代田区)
JALとANAが並ぶ
東京五輪のスポンサーは4段階あります。TOPの下に、日本国内では上位の「ゴールドパートナー」、中位の「オフィシャルパートナー」、そして「オフィシャルサポーター」がそれぞれ大会組織委員会と契約を結び、位置づけに応じて大会エンブレムや過去映像などを使う権利が与えられます。●スポンサー一覧はこちら
スポンサー料は1社あたり15億~150億円程度といわれています。東京大会で大会組織委員会が見込む国内スポンサーからの収入は3200億円と、ロンドン大会、リオ大会の数倍に増えました。高額なのに、なぜこんなに集まったのか。図を見てください。日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)などライバルが名を連ねています。東京五輪の協賛を希望する企業が想定以上に多かったことから、組織委と大会運営を仕切る電通がIOCを説得して、「1業種1社」の原則を崩して、「競争」から「協調」に枠組みを変えたのが要因です。
「食」でスポーツ、健康をサポート
朝日新聞の連載記事「五輪をめぐる 支える企業」から、スポンサー企業の取り組みをみてみましょう。【コカ・コーラ】1928年のアムステルダム大会から五輪に関わりを持ち、TOPが誕生した1980年代からずっとその地位にある。「平和な祭典への共感」「五輪マークやマスコットなどと、我々のマーケティング活動がうまく一つになって、消費者に感じてもらっている」などを投資する理由に挙げる。東京五輪では聖火リレーのスポンサーにも。日本全国を121日間かけて回るため露出が多く、競技に興味がない人でも目に触れる可能性が高い。高橋オリバー・東京2020年オリンピックゼネラルマネジャーは「五輪には、いつも人々が思い起こすシーンがある。そこに『あのとき、コカ・コーラがあったな』と思い出してもらえるのが理想」と語る。
【味の素】選手強化のための栄養支援「ビクトリープロジェクト」を日本オリンピック委員会(JOC)と共同で進める。フィギュアスケートの羽生結弦選手ら多くの契約選手やチームを抱える。プロジェクトリーダーの栗原秀文さんは、競泳の瀬戸大也選手を「食」でサポート。栄養計画をつくり、練習や試合で使うカロリーをどう食事で補うか「エネルギー収支」を整えて体調を管理する。同社は2009年、トップ選手の強化拠点ナショナルトレーニングセンター(東京都北区)の命名権を取得。食堂では栄養バランスを考えた「勝ち飯」を提供している。「おいしく食べて健康になる。そんな人生を応援するのがうちの会社の哲学。スポーツ支援はその哲学とつながって、世の中の共感を呼ぶと確信している」(栗原さん)。勝ち飯の一般への普及も見据え、受験生らに提供する試みも始めた。
【明治】千葉県市川市と、健康、福祉、スポーツ振興、参加国・地域と交流をはかるホストタウン事業などの包括連携の協定を結んだ。市川市はブルガリアのホストタウン。ブルガリアヨーグルトで知られる明治は、市のフェアで両国のつながりを知るセミナーなどに協力している。同社は、地域の健康づくりや地域包括ケアでの連携を模索。「2020年以降に残るものがつくれれば、小売店や食品といった入り口からではない、今までにないビジネスモデルがつくっていける」(オリンピック・パラリンピック推進部の八木沢博正さん)。全国各地の学校で食育の授業もしている。
【NEC】パラスポーツの2010年バンクーバー大会銀メダリスト、上原大祐さんは2016年からNEC社員として、全国の自治体に障害者スポーツを根付かせる仕事をしている。長野で県民パラスポーツ大会開催、徳島で県立高校がスポーツ用車いすを購入する取り組み支援、東京・渋谷区では公立小の放課後クラブで児童がパラスポーツをできるようボッチャの用具を寄贈。札幌ではパラアイスホッケーの女子クラブ発足に力を貸した。「パラスポーツの日常化」の理念は、NECが東京大会で掲げる「集まろうぜ。」の合言葉に通ずる。
【パナソニック】ずっとTOPの座にある唯一の日本企業で、五輪との関わりが最も強い企業の一つ。2012年ロンドン大会から開閉会式に同社の機器が導入され、2016年リオデジャネイロ五輪では五輪初の「公式開閉会式パートナー」に。プロジェクションマッピングを映し出したプロジェクターの機器導入から運営全般までを取り仕切った。ロンドンから導入した高輝度のプロジェクターは評判を呼び、世界シェアは約6割に。世界最大のショーケースでの実績がビジネスに直結した。
事業に直結したパナソニックや、自社の得意分野をスポーツに生かしている味の素のような会社から、必ずしも直結しない例まで活動内容はいろいろです。スポンサー企業一覧を開くと、各企業のコーポレートサイトにつながっています。ほかの企業がどんな取り組みをしているのか、調べてみましょう。
(写真は、瀬戸大也選手と語り合う味の素の栗原秀文さん=味の素提供)
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