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(「Think Gender」は、ジェンダー=社会的・文化的につくられた性差=をめぐるさまざまな問題を考え、ジェンダー平等な社会をめざす朝日新聞の企画です)
「同質的な集団からの脱却」
丸紅は総合職約3300人のうち、女性が約1割で、管理職に占める女性の割合は6.4%。2021年春入社の総合職は女性の割合が過去最高の3割に達しましたが、いまの比率で採用を続けると、20年後も男性がほぼ8割で、現状とほぼ同じ状態と試算しました。「(経営目標の一つとして)社会課題を先取りして解決することを掲げていながら、男性8割の会社が十分に応えていけるのか」(人事部)という問題意識があるといいます。このため、例年100~110人を採用している新卒総合職について、3年以内に女性を40~50%に増やすことにしました。柿木真澄社長(写真)は「環境変化に柔軟に対応するには、同質的な集団からの脱却が必要不可欠だ」と語っています。日本は男女格差ランク121位
2019年の世界経済フォーラムのジェンダーギャップ(男女格差)ランキングで、日本は153カ国中121位と過去最低を記録しました。日本は健康分野が40位、教育は91位でしたが、政治が144位と底辺に近く、経済も115位に低迷しています。中でも女性の管理職割合の順位は131位でした。この惨状を打開しようと、政府は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上に」との目標を掲げてきましたが断念。2021年度からの第5次男女共同参画基本計画で「2020年代の可能な限り早期に30%程度」と目標を先送りしました。経済界では、大企業でつくる経団連が2020年11月、企業の役員に占める女性を「2030年までに30%以上」とする目標を初めて掲げました。今は上場企業で6.2%なので高いハードルですが、企業が成長するには多様性が必要との考え方が定着したことが背景にあります。経団連幹部は「経営のあり方を重視するESG投資が急速に広がっており、女性役員の比率が判断基準の一つになっていく」と話しました。女性の登用に取り組まないと企業が生き残れないとの危機感です。
「クオータ制」
女性の割合を増やす方法の一つに「クオータ(割り当て)制」があります。国会や地方議会などの議員選挙で、候補者や議席の一定割合を男女に割り当てる制度で、約120の国・地域が取り入れて実績を上げています。日本の第5次基本計画では、2025年に国政選挙の候補者の女性割合を35%にすると掲げ、政党にクオータ制の導入などを要請するとしていますが、決めるのは政党で強制力はなく、実効性は疑問視されています。海外では企業の管理職などに取り入れている国もあり、ノルウェーでは上場企業に女性役員の割合を4割以上とするよう法律で義務づけています。役員や幹部の女性社員は急には増やせませんが、新卒の採用ならすぐに増やすことができます。長期的な社員の構成を考えて、新卒の女性採用を大幅に増やすのが丸紅の方針です。「3年以内に女性を40~50%」という目標を掲げているので、事実上クオータ制の導入といえそうです。今後、他の業界や企業に広まるか、注目です。
朝日新聞のジェンダー平等宣言
朝日新聞社も取り組みを始めています。2020年4月、「朝日新聞社ジェンダー平等宣言」を発表しました。今は12%の女性管理職比率(2019年9月時点)を「2030年までに少なくとも倍増をめざす」とし、宣言や取り組みを実効性のあるものにしていくため、朝刊掲載の「ひと」欄で取り上げる人物や主催するシンポジウム「朝日地球会議」の登壇者について、「男女どちらの性も40%を下回らないことをめざす」という数値目標を掲げました。女性の新入社員は近年4割ほどを占めていますが、管理職の数字はまだまだです。男性の育休取得率を向上や、性別を問わず育児や介護をしながらでも活躍できるように働き方を見直し人材の育成につとめること、ジェンダー平等に関する社内の研修や勉強会を開き、報道や事業に生かしていくことも盛り込みました。
一方で、2021年1月29日の朝日新聞の「声」欄には、「服装への注目、なぜ女性だけ」と題する読者の投稿が載りました。米大統領就任式の関連記事で、新しい正副大統領夫妻のうち副大統領の夫の服装だけ取り上げられていなかったことに疑問を投げかける内容です。「セカンドジェントルマンだけ報じないのは『ファッションを社会へのメッセージ発信手段として使うのは女性。男性は政策など中身が重要』と受け止めてきた習い性の裏返しに見える。男女の区別の固定観念はメディアにも強いように感じる」と指摘されました。採用や就活も、報道も、固定観念からの脱却がポイントです。
●「日本の男女格差、最低の世界121位! なぜ?」【時事まとめ】も読んでみてください
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2024/10/11 更新
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