G7断トツの最下位
男女格差(ジェンダーギャップ)の国別ランキングで、日本は153カ国中121位と下位に低迷しています。主要7カ国(G7)では断トツの最下位。この分野では圧倒的な「後進国」なんです。女性政治家や企業に女性リーダーが少ないのが要因です。男女格差の是正は国全体の課題ですが、就活生も無関心ではいられません。企業の取り組みは働きやすさを左右しますから、企業選びの際のとっても大事なポイントです。現状を知ったうえで、各企業の取り組みについて自分で調べてみましょう。「女性が活躍できる会社は、男性にとっても働きやすい」。これが進んだ企業の考え方です。(編集長・木之本敬介)
2006年79位→2019年121位
「男女格差報告書」は世界経済フォーラムが毎年まとめています。最新版は2019年12月に発表されました。経済、教育、健康、政治の4分野で男女間にどのくらい格差があるか、数値で発表します。「完全な平等」を100点満点として指数化し、総合順位をつけます。今回、世界の男女格差の平均は68.6点で、前年の68.0点よりわずかに改善しました。
国別では、アイスランドが11年連続1位になるなど北欧諸国が上位を占めました(表)。G7各国は、ドイツ10位、フランス15位、カナダ19位、英国21位、米国53位、イタリア76位。日本の順位は2006年の79位からほぼ右肩下がりを続け、過去最低の121位に落ちました。
衆院議員のうち女性1割
日本は、健康分野が40位とまずまずで、教育分野は91位と踏みとどまった感じですが、政治分野と経済分野が足を引っ張りました。最大の問題は女性の政治家が少ないこと。政治分野の数値は下院(日本では衆議院)と閣僚(大臣)に女性が占める割合、過去50年間に国のトップが女性だった年数をもとに出します。日本では女性首相は誕生しておらず、衆院議員のうち女性は1割。女性閣僚は今回のデータをとった2019年1月の時点でたった1人でした(2020年3月現在3人)。これが響き、政治分野は前回の125位から144位に後退しました。100点満点でなんと4.9点という惨状です。
上位の北欧諸国は議員、閣僚ともに少なくとも4割弱が女性です。お隣の韓国では、2000年から議員選挙で比例名簿の奇数順位を女性にする「クオータ制」(割当制)を導入しました。有力政党の名簿上位はまず当選するため、女性議員の割合は16.7%に増え、総合順位で日本を抜きました。
日本でも、男女の候補者数をできる限り均等にするよう政党に努力を求める「候補者男女均等法」が2018年にできました。施行後初めての国政選挙だった2019年7月の参院選。主な政党の女性候補の比率は、立憲民主党45%、国民民主党36%、共産党55%と野党は比較的高かったのですが、自民党は15%にとどまりました。結果は、過去最多タイの28人の女性参院議員が誕生し、当選者に占める女性の割合は23%に増えましたが、「均等」にはなお遠い状況です。同法の規定は努力義務で、守らなくても罰則はありません。日本でもクオータ制をはじめとする強制的な制度を導入すべきだという声は根強くあります。
「アンコンシャス・バイアス」って?
企業も褒められたのもではありません。経済分野はほぼ横ばいの115位でしたが、女性の管理職割合の順位は131位と低迷しました。政府は、「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上に」という目標を掲げていますが、課長職以上の管理職に占める女性の割合は2018年で11.8%と遠い数字です。指数の対象ではありませんが、日本の上場企業の2019年の女性役員比率は5.2%にとどまります。
なぜ日本企業のリーダー層には女性が少ないのでしょう? 経営者からは「役員は男女を問わず適性で選ばれるべきだ」「役員候補の世代は女性が少なく管理職経験や役員適性のある女性がいない」といった声が聞こえてきます。「管理職をめざす女性が少ない」というデータもありますが、ある調査では、「管理職をめざしたい」と答えた女性は入社1年目に6割以上いたのに4年目には4割以下に急落しました。将来のキャリアにつながる仕事をさせてもらえず意欲を失う女性が多いためとみられています。多くの専門家は、仕事の中身やリーダー像に男女差がすり込まれる「アンコンシャス・バイアス」(無意識の偏見)が女性登用を妨げていると指摘します。
男女平等が経済成長につながる!
世界では、経営陣の性別や人種が多様な企業のほうが投資家から高い評価を得る傾向があります。米フォーチュン誌500社にランキングされる大企業の女性取締役比率は2017年で22.2%でした。世界の政財界の指導者を集める「ダボス会議」を主催する世界経済フォーラムが男女格差の報告書を出すのも、男女平等が経済成長につながると考えているからです。
そんな世界の潮流が日本にも及んで来ました。トップダウンで女性役員比率30%達成をめざす英国発の活動の日本版「30%クラブジャパン」が2019年5月に発足。資生堂や大和証券グループなど約50社のトップが参加しています。12月には、大手企業が集まる経団連と女性役員増に向けて協力していく覚書を交わしました。固い岩盤が崩れるか注目です。
そもそも、人口の半分は女性なのに、国民を代表する国会議員が男性ばかりなのは不自然です。経団連では会長はもちろん18人いる副会長にも女性が就いたことがありません。高齢男性ばかり居並ぶ会議の光景はいまや異様ですらあります。企業研究の際には、コーポレートサイトにある役員名簿を見てみましょう。企業の姿勢が見えるはずです。
(写真は、定時総会後の記者会見に臨んだ経団連の副会長は全員男性=2019年5月30日、東京都千代田区)