
(写真はiStock)


国が副業推進に舵をきった理由は、「技術革新や起業に有効」と考えたためです。当時の法改正議論にかかわった大学教授によれば、国はイノベーションにつながるような高所得者による副業を念頭においていました。しかし、現状の副業・兼業は「生計維持のため」が多いようです。総務省の調査では、本業の所得が299万円以下という人が約3分の2を占めており、特に99万円以下の人の割合が最も多かったそうです。独立行政法人の2022年の調査でも、副業をする理由(複数回答)は「収入を増やしたい」(55%)、「一つの仕事の収入では生活できない」(38%)との答えが上位を占めています。
終身雇用制はすでに当たり前ではなくなり、リモートワークの浸透で自由な時間も増えました。今後の転職をにらんで持ち運びできるスキルを身につけたい、複数の収入先を持っておきたい、というニーズも高まっています。学情が2024年7月に20代の社会人を対象に行ったウェブアンケートでは、約7割が勤務先で認められていたら「副業したい」「どちらかと言えば副業したい」と回答。また、転職活動時に副業可という企業は「志望度が上がるか」という問いに、「志望度が上がる」「どちらかと言えば志望度が上がる」とした回答はあわせて6割程度にのぼっています。就活に際しても、志望する会社が副業に対してどういった対応をしているか、気になる方も多いのではないでしょうか。

そしてもうひとつ気にすべきことが、副業によって労働時間が長くなることに対してどう対策するか、ということです。冒頭にあげた事例では、まさに副業・兼業が健康被害につながるケースが可視化されました。ワークライフバランスも崩れがちになるという指摘もあり、自分で自分の労務管理をする意識を高めることはとても大切です。
そんな中、厚生労働省が副業・兼業を促進するため、割増賃金の支払い方法を見直すという報道がありました。いま、1日8時間、週40時間を超えた労働に対しては割増賃金が支払われることになっており、副業・兼業をしている場合は両方の労働時間を足して計算する仕組みになっていました。しかし11月12日の朝日新聞記事によると、厚労省はこの仕組みを改め、企業ごとの労働時間で割増賃金を計算するという方向で検討を始めているとのことです。たとえば本業で35時間、副業で20時間働いた場合、現状の仕組みではあわせて55時間働いたことになり15時間分の割増賃金が発生しますが、見直しがされればどちらの企業でも割増賃金は発生しないことになります。現状の仕組みの場合、どちらが割増賃金を支払うかがわかりにくく、また割増賃金を負担しなければいけない副業先が雇用を拒む可能性もある、と指摘されてきました。今回の見直しによりそういった障壁をなくし、副業をさらに広げることが厚労省の狙いとされています。
しかしこの見直しが実現すれば、長時間労働を抑えるという割増賃金本来の効果は期待できなくなります。本業と副業、トータルでの労働時間をどう管理するのか、さらに冒頭のケースのように心理的負担が本業と副業両方で重なっているときにそれをどうチェックするのか、さまざまな課題が残されています。今後のキャリアプランを考えるにあたっては、いま国の副業に関する制度がどうなっていて、今後どういう変化が起きそうなのかもチェックをして、自分の健康とキャリアを両立させる方法を考えてほしいと願っています。
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2025/11/30 更新
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