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「GAFAM」の一角を占める巨大企業・グーグルは、世界のデジタル広告市場で3割のシェアを握っています。今回その活動に、公正取引委員会が一石を投じました。みなさんの生活や経済活動に欠かせなくなっているデジタル広告でグーグルは一体何をしたのか、どこが問題視されたのか、ニュースを理解して今後の動きをチェックしていきましょう。(編集部・福井洋平)
(写真・グーグルが千葉県印西市に開設したデータセンター/2023年、写真はすべて朝日新聞社)
グーグルの技術使った配信に制限を求める
独占禁止法は企業に自由な競争を促すための法律で、独禁法とも略されます。大きな企業がむりやりものの値段をつり上げたり、企業があつまって新しい企業の参入を排除したりすると、消費者にとっては大きな不利益になりますし、経済活動も活発になりません。この独占禁止法を運用して企業の活動をチェックしているのが公正取引委員会(公取委)です。今回問題となったのは、インターネット検索サイトの利用者に、検索した内容に応じた広告を配信する「検索連動型広告」です。ヤフー(現在のLINEヤフー)は2010年、グーグルと事業提携し、グーグルの技術を使った検索連動型広告の事業を始めました。ところが、グーグルは2014年になり、ヤフーに対して外部のスマートフォン向けサイトなどではグーグルの技術を使った検索連動型広告の配信をしないよう要求したのです。公取委はこれが市場の公正な競争をゆがめているとみて2022年に調査を開始。グーグルはヤフーへの要求を撤回し、今月になり自主改善計画を公取委に提出しました。公取委はグーグルに計画の履行義務を科した、としています。
グーグルは検索連動型広告で圧倒的シェア
検索連動型広告の市場規模は、電通などの推計では2023年は1兆729億円で初めて1兆円を越えました。ネット広告全体のなかでも約4割を占める大きな市場です。例えば、ある言葉をネット検索すると、その言葉に関連する商品の広告が検索結果の上や下に「スポンサー」と明記したうえで表示されます。その広告を利用者がクリックすると、広告主がグーグルなどに広告料を支払うという仕組みになっています。国内ではグーグルとLINEヤフーの2社のみが手がけています(2021年の公取委報告書による)が、グーグルの力が圧倒的です。グーグルは検索エンジンとしてのシェアが巨大なうえ、グーグルマップなど展開しているサービスも多く、利用者の検索履歴や位置情報といったデータを豊富に持っています。それらを使って広告を見せたい人により効果的に表示させることができるという強みがあり、国内シェアの7~8割(2019年度)を占めています。これだけ強い企業が競合になりそうな企業を排除すれば、まともな競争は生まれなくなります。では、グーグルはどうやってライバルであるヤフーを排除したのでしょうか。
ヤフーとグーグルの提携、公取委は当初容認も
きっかけは、2010年の両社の業務提携です。ヤフーはこの年、アメリカのヤフーが技術開発をやめたため、広告配信の技術などをグーグルに頼る方針に転換しました。いわばビジネスの心臓部をライバル会社に委ねる形であり、グーグルの力が強くなることが心配されました。両社は公取委に相談したそうですが、契約上ヤフーが自由に事業展開できるようになっていることから、公取委は業務提携を容認していました。ところが4年後、グーグルは外部のスマホ向けサイトなどでグーグルの技術を使った検索連動型広告の配信をやめるように要求し、ヤフーはこれを受け入れました。公取委はグーグルとヤフーに契約状況を定期的に確認していましたが、グーグルはこの契約変更については説明していませんでした。契約変更を知った公取委が2022年に調査を開始すると、グーグルは契約を取り下げましたが、それまでの間、ヤフーの自社サイトを除けばスマホ向けサイトでの検索連動型広告はほぼグーグルが独占していたとみられ、「競争を制限する効果が大きかった可能性がある」と公取委は会見で指摘しています。
(写真・会見でグーグルを対象とした行政処分について説明する中島菜子・公正取引委員会デジタルプラットフォーマー上席審査専門官=2024年4月22日)
米当局もグーグルを提訴
ネット検索におけるグーグルの強さは圧倒的で、米調査会社によると世界の検索市場でのグーグルのシェアは91%です。グーグルの2023年の売り上げは約3070億ドル(約47兆円)ですが、約6割が検索広告となっています。こうした状況のなか、 グーグルが本社を置くアメリカの競争当局も取り締まりに乗り出し、2020年にはグーグルの検索エンジンをスマホの初期設定に入れてもらうようにアップルに毎年最大120億ドルを支払い競争を阻害したとして、グーグルを提訴しています。決着には、数年かかる見込みです。
触れない日は考えられないというくらい、グーグルはみなさんの生活に浸透しています。ただ、大きすぎる影響力に対して規制当局からの監視の目も厳しくなっています。今回とは別件ですが、4月18日にはグーグルマップで不当な口コミや間違った内容を投稿されるなどしたとして、医師や歯科医師ら63人がグーグルを提訴しました。削除を求めても実際に対応されるのはごくわずかで、グーグルは適切な対処をしないまま営利目的でサイト運営を続けている、と訴えています。こちらの訴訟も今後注目されそうです。
近年はインスタグラムやTikTokなど競合になりそうなサイトも伸びており、グーグルの天下がどこまで続くかは未知数といえそうです。どんな業界でもウェブとのつながりは欠かせませんが、グーグルをはじめとするいわゆる「ビッグ・テック」の動きには注目していきましょう。
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