2025年02月20日

広がる「週休3日制」 自分にあった制度を見極めることが大切【イチ押しニュース】

テーマ:社会

 土日に加えて平日を1日休む「週休3日制」を職員が実現できる自治体が、全国に広がっているそうです。東京都は昨年、小池百合子都知事が2025年度から職員の週休3日制を導入すると発表しました。大企業を中心に少しずつ導入が進んできた週休3日制が、一気にひろまる契機になるかもしれません。柔軟な働き方ができるかどうかは、企業を選ぶうえで重要な条件になると思います。週休3日制はどうやって実現できたのか、どういうパターンの制度があるのかなど、週休3日制をめぐる動きをチェックして自分のすすむ企業選びの参考にしていきましょう。(編集部・福井洋平)
(写真はiStock)

東京都で2025年度から週休3日制を導入

 東京都の小池知事は2024年12月、2025年度からの週休3日制導入を発表しました。

「働き方のニーズは人それぞれ。一人ひとりの働き方に選択肢ができるようになる」

 会見で、小池知事はその意義をこう強調しています。週休3日制とはいっても、1週間に働くトータルの時間は変わりません。勤務時間を自分で決めるフレックスタイム制を利用し、労働時間をほかの出勤日に振り分けることで、平日を1日休みにできる仕組みとなっています。労働時間が変わらないため、給与の額も変わりません。これまでは育児や介護などの条件付きで認めていましたが、2025年度からはほぼ全職員を対象にするそうです。トータルの労働時間は変わらないわけですが、1日まるまる休みの日が増えることでその日を学業にあてたり育児、介護などにあてたりと、生活のパターンに選択肢が増えることになるでしょう。都庁内からは「巨大組織の都庁で成功すれば、メッセージになりそう」と、週休3日制普及への後押し効果を期待する声もあがっているそうです。
(写真・都議会の所信表明で「週休3日制」導入の考えを明らかにした小池百合子知事=2024年12月3日/朝日新聞社)

「公務員離れ」対策で週休3日導入

 東京都よりも早く、全国にさきがけて2024年4月から週休3日制を取り入れたのは、茨城県です。1日あたり2時間ほど多く働き平日1日休むケースが多く、自己啓発や育児、疲労蓄積の防止といった理由で取得する人が多いそうです。朝日新聞の調べでは、2025年1月までに茨城、千葉、兵庫、大阪、奈良の5府県で週休3日制が導入され、さらに東京を含め11都県が今後導入予定といいます。ちなみに国家公務員も2025年度から、働き方改革として週休3日制を導入する予定だそうです。

 自治体が週休3日制導入に積極的な理由は、公務員離れが深刻化していることです。たとえば都庁(行政事務・大卒程度)の採用試験の受験倍率は2019年度の5.6倍から2024年度には1.5倍と、3分の1以下に落ち込んでいます。働き方改革を進める民間企業に志望者が奪われる流れを止めるべく、制度改革に踏み込んだというわけです。

 一方で朝日新聞の記事では、週休3日制導入のハードルも指摘しています。たとえばある県では、県税事務所や旅券センターなど窓口での業務がある部署で週休3日の希望者が殺到した場合を懸念していて、優先して取れる人を決めるといったルール策定を検討するそうです。また別の県では、職員が少ない部署はどうするか、時間外勤務を減らしながら週休3日を取り入れると現場が混乱する、といった声もあがっていました。自治体は事務仕事から窓口業務、現場職までさまざまなタイプの職場があり、そこでの取り組みは大企業だけでなく多くの民間企業にとっても参考になるかもしれません。今後どのように制度が浸透していくかにも注目していきたいです。
(写真はiStock)

「給料同じ、時間同じ」か「給料減る、時間も減る」か

 多様な働き方が経済の活性化につながるとして、政府も週休3日制の導入には前向きになっています。2021年6月に閣議決定した「骨太の方針」では、「企業における導入を促し普及を図る」と記されました。

 週休3日制といっても、導入の方法はさまざまです。大きくわけて下の3つが考えられます。
1 出勤日の労働時間を増やして、賃金は変えない
2 出勤日の労働時間は変えず、賃金を減らす
3 出勤日の労働時間は同じで、賃金も減らさない

 さきに紹介した東京都などが取り入れようとしている制度は1のパターンです。民間企業ですと、たとえば日立製作所は2022年度に「1日の最低勤務時間」を廃止しました。1日ぶんの労働時間(7時間45分)を他の日に振り分けることでまる1日「非就業日」をつくることを可能にし、結果的に週休3日にすることもできるという制度です。ほかにもリクルートは2021年4月から年間の休日を15日増やして145日、週約2.8日の休みとする週休「約3日」制を取り入れました。1日の所定労働時間を増やすことで年間の総労働時間は変えず、給与の変更もありません。リクルートのウェブサイトでは制度導入の狙いを「将来的な働き方のフレキシビリティの獲得が目的」としています。

 2の制度を取り入れる企業もあります。みずほフィナンシャルグループは2020年12月から希望する社員が自分磨きや育児・介護との両立などに利用できる「週休3日・4日勤務」制度を取り入れました。休みの日には給与は発生しません。また、SOMPOひまわり生命も仕事と妊娠・育児・介護との両立を支援する環境を整えることなどを目的に、2017年9月から「週4勤務(週休3日)制度」を導入しています。こちらも給与は下がる仕組みとなっています。
(図表はすべて朝日新聞社)

自分にあった働き方を見極めよう

 社員にとって理想的な制度は3のパターンでしょう。1日休みが増える分、年間の総労働時間は減り、しかも給与が同じだったらとてもありがたいですよね。もちろんこの制度が実現するためには、時間あたりの生産性を増やす取り組みが必要になります。

 2024年3月21日の朝日新聞デジタル版では、GDP(国内総生産)で日本を抜いたドイツでの働き方改革の取り組みを取り上げています。そこで紹介されている従業員36人の金属加工品会社は、2022年10月から金曜日を休みにして、週の総労働時間は36時間と以前の40時間から1割削減しました。賃金は据え置きで、実質的な賃上げとなっています。この会社は週休3日にすることで光熱費が2割減っただけでなく、不要な書類作成などの業務をなくしたり、部品加工ロボットを導入したりといった取り組みも奏功し、2023年の売上高は前年比で1割増えたそうです。そして何よりも、従業員のモチベーションが大きく高まり、就職希望者も増えて新たに技術者を雇うこともできるようになったのです。

 ただ、短い時間で効率よく仕事をこなしていくことは、高いプレッシャーと引き換えになることも十分考えられます。週休3日制の効果を測定する実証実験にたずさわるドイツの大学教授は「労働時間を減らすことはポジティブな面がある一方、短い時間で効率を上げるのに労働強化につながる面もある」といい、実験を通してストレスの少ない生産性向上の方法などを分析すると述べています。

 給与が下がってもいいから休日を増やしたい、働く日は長く働いてもいいから給与を変えず休みが欲しい――人によって、休みと給与についての考え方はそれぞれです。自分にあった仕組みを選択できることが一番よいですが、仕事の内容によっては働き方がほぼ決まってしまう職場もあるでしょう。企業選びに際して働き方の内容が気になる人は説明会やOB・OG訪問といった機会を利用して、具体的にどのような制度が社内で運用されているかをしっかり確認することが大切だと思います。

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