人事のホンネ

サントリーホールディングス株式会社

2015シーズン【第10回 サントリー】
仕事は泥臭くハードだが「やってみなはれ」 価値観を聞きたい

サントリーホールディングス 人事部 課長 竹田雄平(たけだ・ゆうへい)さん

2014年01月08日

■採用実績と募集職種
 ――2014年度入社予定の採用実績を教えてください。
 128名です。春に入社する人が122名、秋に入社する人が6名の予定です。男女比は6対4。事務系は91名、技術系はシステム部門を含めますと37名です。秋入社は、海外の大学の卒業時期が6月とか7月なので、留学生と外国籍の方のために設けています。なお、外国籍の方はトータルで9名です。

 ――近年の採用数の傾向は?
 大きくは変わっていません。例年、事務系・技術系合わせて100名を上回る程度となっています。外国籍の方の採用は3~4年程前からです。当社のグローバル展開に貢献していただくことはもとより、ダイバーシティー(多様な人材の活用)の観点からも採用しています。性別、ハンディキャップだけでなく、国籍も含めて多様な人に来てもらいたいと思って活動しているので、特に枠は設けていません。よい方がいれば採用するという形です。ボストンや上海での就職フォーラムにも出向いて採用しています。

 ――2014年度新卒採用のプレエントリー数はどのくらいでしたか。
 8万人程度です。前年に比べてプレエントリーの数は増えましたが、エントリーシート(ES)の応募数は若干減りました。

 ――募集職種について教えてください。
 弊社では、総合職や一般職といった区分は設けておらず、あえて言えば、「総合職」のみを採用している、とご理解いただければと思います。また、すべての職種がエリアに限定のない形での募集です。「ビジネス部門」は営業からマーケティング、スタッフまで幅広く関わります。「財経部門」は、最初は財務や経理に配属されますが、その後は本人の希望なども踏まえながら、他部門を含めてキャリアを形成していきます。「生産研究部門」は技術系の職場で、主に農学・生物系と電気・機械・化学工学系というように、学んできた学問で二つに分けています。さらに「情報システム部門」は社内のシステム系の仕事です。この部門は財経部門と一緒で、最初の配属部署は決まっていますが、以降は他部門を含めて広く選択肢を用意しています。

 ――女性の比率が比較的高いですが、今の学生に男女で違いを感じることはありますか。
 あえて言うと女性の方が準備してきていて、会社のことを聞いてもしっかり答えてくれる方が多いように感じますが、実際の選考においては、人物本位のスタンスなので、先ほどの男女比率も結果としての比率ということです。

ESの「挑戦と創造」 何を頑張り、生み出してきたのか見たい

■採用選考の流れとES
 ――2015年度入社の採用の流れを教えてください。
 12月1日からプレエントリーを始め、各地のセミナーで会社説明をしています。部門によって詳細は異なりますが、1月から3月にかけてESの募集を行い、4月から面接がスタートします。

 ――自社セミナーはどんな形で開いていますか。
 ビジネス部門は、今まで自社主催の説明会はやっていませんでしたが、今年初めて開く予定です。内定者にアンケートを取ったら「サントリーに入ろうと最終的に決めた理由は何ですか」という問いに、「人」という答えが多かった。セミナーは、基本的には人事部のスタッフが説明していますが、今回は12月の下旬から1月上旬にかけて、何名か現場の社員を呼んでトライしてみようということになりました。1日に3回実施して、1回に200~300人来ていただけるとすると3日間で2500名ぐらいの接点になると思います。3日間のうち1回は大阪でやります。技術系も説明会形式では初めての開催となります。
 
 ――ESは手書きなんですね。
 そうなんです。手書きにしているのは、その学生の持っている個性をしっかり見たいからです。パソコンで打って印刷する学生もいますが、自分で書く人が圧倒的に多いですね。書き方一つとっても、丁寧に書いてくる学生もいれば、雑な印象を受けることもあります。

 ――書く分量も多いそうですね。
 A4で2枚ですが、1枚目は生年月日や高校、大学、趣味、写真、サントリーに入ってやってみたいことなど一般的なこと。2枚目は「挑戦と創造」というテーマで今まで二十数年間の中で培ってきたものを書いてくださいという内容です。白紙で、どう表現してもいい。字だけの方も、イラストを書く方も、写真を貼ってくる方もいます。部活の話、アルバイト、留学と内容もさまざまです。内定者に聞くと、「挑戦と創造」の項目は、どういう思いで志望しているのか書きやすいと言います。自由な分、本気の学生は書きやすい。面接でお会いできる人数は限られますから、大学でやったことやサントリーでやりたいことだけでなく、プラスアルファをしっかり書いていただき、それをESを通してしっかり見たいと思っています。

 ――「挑戦と創造」がキーワードなんですね。
 今回、創業者の言葉「やってみなはれ」のメッセージを改めて前面に出そうとしています。「やってみなはれ」は短くすると「挑戦」という言葉になるのかもしれません。ただ、この「やってみなはれ」は、「思いついたら何をやってもいい」ということではなく、簡単ではありません。仕事の担当者は、その仕事をより良くしようとしますよね。それをとことん突き詰めていきなさいということです。いろんなケースを想定していろんなことを考えていく。とことん考えたうえで、誰かがやるのではなく自分がやる。そして、最後まであきらめないでやりきりなさいと。そういう意味が込められていて、主体性とか失敗を恐れずにというところにつながっていくと思うんですね。それをひとことで言うと「やってみなはれ」なんです。
 そういった考えの中での「挑戦と創造」というテーマなのです。二十数年間生きてきて、いろいろ頑張って取り組んできたことがあると思います。どんなことを頑張って挑戦して、そこから何を生み出してきたのかをしっかり見たい。内容についてはあまり狭く考えず、広く考えて書いてもらえばいい。大学の時の話を書く人もいますし、「幼少期から」という書き方をする学生もいます。

 ――「挑戦と創造」の項目は、イラストなど表現方法も評価の対象ですか。
 僕たちは「作品」をみているわけではありません。イラストを描いて、うまい下手を競うわけではない。文字だけでもまったく問題ありません。文字だけの人もたくさん通っていますよ。僕が受けるとしたら……絵心がないので文字だけになると思います。
 その学生がどういう困難をどう越えてきたのか、そういう内容は訴えかけるものがありますからそこは見ていますね。正解や、こうじゃないといけないというのはありません。

 ――ほかにも見るポイントはありますか。
 字のうまい下手よりも丁寧に書いているかどうかは大事だと思います。これ、ほんとに読んでもらおうと思ってるのかなとか、さすがにこれは読めないというのは、間違いなくプラスにならないですね。一方で、あまりうまくなくても丁寧に書いているものはわかります。

 ――1枚目の写真では何を見るのですか。
 写真も個性的で面白くて、スペースに好きに貼ってくださいと書いてあるんですが、スナップ写真を貼ってくる方もいれば、部活の写真の人、証明写真を貼ってくる人もいます。学生の間で「どんな写真を貼るといいですか」といったことが話題になることもあるようですが、何でもいいんです。その人がわかれば。普段どういう表情をするのか、どういう写真を選んでくるか、といったことを参考にしたいと思ってこのスペースを設けています。求めているのは自分がどんな人かが伝わる写真です。部活の集合写真を貼ってくる学生もいますが、7~8人写っていてどれが本人か分からないときがありますので、自分がどれなのか分かるようにして送っていただければと思います (笑)。特定できないから面接には上げないということもないんですが。