
■配属と研修
――内定者が競合するのはどんな企業ですか。
飲料食品メーカーは当然多いです。総合商社も多いですね。もちろん金融の方もいて、うちに来る来ないはケースバイケースです。商社とかぶるのはどうしてなんでしょうね。幅広い仕事が経験できると思っていただいているのかな。うちは営業、マーケティング、スタッフなどいろんなローテーションがある。いろんなことやってみたいという学生にとっては面白いというところがあるかもしれません。
――海外勤務は多いのですか。
入社してすぐに海外勤務ということはありません。現在、サントリーホールディングスには約5000名の社員がいますが、そのうち日本から海外赴任しているのは150名程度。海外での仕事は、ある程度マネジメント的な立場で行くことが多いので専門性がないとできません。ただ、その部門を海外で任せられるとなれば、早くて4~5年目で行っている社員もいます。
――採用にあたって、英語力はどの程度重視しますか。
あるに越したことはない、ということです。僕はよく言うんですが、言葉ができるのと仕事ができるかは別。英語ができるからといって海外で仕事ができるわけではありません。あくまでプラスアルファで、語学力は後からついてくるものだと思っています。
――研修制度について教えてください。
内定から就社1年後までの1年半を育成期間と位置づけて、社員としての基本を身につけてもらいます。そのために、さまざまな研修プログラムを用意しています。
――配属はどうやって決めますか。
入社前、キャリアビジョンシートに10年後にどうありたいか、そのためにどういうことを身につけたいかを考えて、希望を書いてもらいます。入社直前の3月に面談して配属部署を決めます。ビジネス部門採用の約半分が営業に配属されます。その場合、東京配属もありますがそれ以外のエリアが多いですね。ビジネス部門の残り半分はいわゆるマーケティングとスタッフ(総務・人事などの管理部門)になる。このスタッフは東京か大阪が勤務地になります。
■やりがいと厳しさ
――サントリーでの仕事の理想と現実、やりがいと厳しさについて教えてください。
サントリーは宣伝のイメージが強く、いいイメージを持ってくれている学生が多い。ひょっとしたら、きらきらとして楽しそうに見えるかもしれませんが、仕事は相当ハードです。
例えば、私個人の経験からお酒の営業の話をすると、ビールのシェアは第3位で、上位2社の商品を取り扱う店にサントリーが行っても用事はない。そこに入っていくのは大変です。仕事は意外に泥臭く、厳しいものです。
――そこにどうやって食い込むのですか。
得意先に「お前と付き合ったらうちも勉強になる、プラスになる」と思ってもらえるかどうかが勝負。私は飲食店の営業を9年間やってきましたが、ほとんどのお客さんは焼肉屋に「うまい肉食べに行こう」と思って行くので、ビールの銘柄はそんなに気にしない。そこはオーナーさんもわかっている。店が流行っていくには、どのメーカーの営業マンと付き合えば一番プラスになるかを考える。だから、プラスだと思っていただけるような提案をします。私はよくお店の物件の提案をしました。渋谷で焼き肉屋を5店舗経営するオーナーさんが「銀座に店を出したい」と言ったら、物件をあたって持っていくわけです。流行っているお店は情報を欲しがるので、大阪、広島で営業していたときには、東京では今こんなことが流行っているという情報をよく出していました。メニューの提案も随時します。
あとは、やっぱり信頼関係が大事です。オーナーさんが宿題を与えても何の返事もなければ「この営業マンに言ってもしょうがないな」となる。できるできないを含め早めにお返事していく。その積み重ねが信頼だと思います。信頼していただければいろんな悩みも話してもらえ、チャンスが広がります。
――サントリーが競合他社と違う点は?
「やってみなはれ」のカラーはある。だから何か面白いこと、新しいことを提案する会社だと思ってもらえているんだろうなとは思います。商品では、日本酒以外のお酒は全部扱っているので、お店全体のことを考えた提案ができるのも強みだと思います。
――高級ビールの分野では、「ザ・プレミアム・モルツ」が強いですね。
おかげさまで10年連続過去最高の販売数量を達成しました。今は「ザ・プレミアム・モルツ」があるからうらやましいですね。僕が営業のころはまだビールでは苦戦することが多かったので。
――営業する際に、商品力と個人の力とどちらが大事ですか。
両方だと思います。何で差をつけるかですよね。1人ができることは限られています。お店の物件紹介も、社内に担当部署があり、お店のメニューを作る部署もあります。個人の力と社内の組織の両方を駆使するのが営業のだいご味です。
■竹田さんの就活と仕事
――竹田さんご自身はどんな就活をされたんですか。
僕は理系でした。工学部土木工学科というところで、周りはゼネコンや公務員になる人が多かった。ただ、アルバイトなどをするうちに自分は図面を書くより、人と接する営業の仕事の方がやりがいを感じると思うようになった。物を売るなら同じ会社の仲間が作った商品に愛着を持っていきたかったので、メーカーを中心にまわりました。お酒が好きだったのでお酒のメーカーも回ったんですが、最後はサントリーと素材メーカーで悩みました。素材は物の原料ですから、いろんなところに物を売っていけて、すごく可能性が広がるような印象をもっていた。サントリーについては、当時はインターネットもなくあまり情報がなくて、飲食店相手にビールを取り扱ってもらうくらいしか仕事のイメージを持っていませんでした。どっちが仕事の幅が広がるかを考えてサントリーは一度断ったんです。
そうしたら当時の人事担当が「お前うちで何やりたかったんだ」と。答えたら、実はいろんな仕事があるからと、急きょ営業の社員が2人来てくれて、20分ほどいろんな仕事の話を聞かせてくれたんです。月曜日の朝の時間がない中ですよ。生意気を言う学生にそういう対応をしてくれたのがうれしかった。これから40年働くわけですから、仕事をする環境も大切だと思い直しました。周りと力を合わせて、自分がしっかり仕事をしていける環境を考えると、サントリーかなと。そこで、一度は断ったサントリーに「お願いします」と言いました。
――ご自身の仕事で印象に残っている仕事について教えてください。
営業9年、人事が10年。広島に赴任した時はけっこう大変でした。広島には競合他社の工場があって、最初にあるお得意先様にあいさつに行ったら「ありがとう。これで気兼ねなくビールの銘柄を変えられる」と言われたところからスタートしました。いきなり全店じゃなくて、ポロポロと変わっていくんです。ずっと悩んで現場を回って、1年半か2年くらいかかって、ようやくもう一度ちゃんと契約を結び直そうということで、最終的にはサントリーをメ-ンにしてくれました。そこに至るまでは相当苦しかった。もともとうちのお客さんでしたから、周りは新しい店はサントリーでオープンするのが当たり前だと思っていて、ふたを開けたら違うので「何やってるんだ」と言われる。つらかったですね。オープンしたら必ず顔を出し、とにかくいろんな現場に顔を出して、現場から信頼していただけることを地道にやって、経営者から「お前が一番現場の受けがいいよな」って言っていただけました。