株式会社資生堂
2015シーズン【第9回 資生堂】
イメージと違うタフな仕事 「会社が好き」だけではダメ 顧客志向が大事
資生堂 人事部 人材開発室 採用グループリーダー課長 三輪英子 (みわ・えいこ)さん
2013年12月27日
――2013年入社の採用実績を教えてください。
88名です。技術系が33名で事務系が55名。事務系は領域別に採用していて、営業37名、財務経理6名、スタッフ(現企画スタッフ)7名、マーケティング(マーケ)3名。その他デザイン系が2名です。男女はだいたい半々ですが、今年は男性が少し多かったですね。技術系は全員理系で、事務系で理系出身の人も数名います。大学院卒は27名ほどです。
――プレエントリー、本エントリーの数はどのくらいですか。
プレエントリーは4~5万くらい。本エントリーは1万1000~2000くらいです。
――なぜ領域別の採用をしているんですか。
財務経理、マーケ、営業……と、5年前から少しずつ領域を作ってきました。最初からこれでやっていこうという方を採用することにしました。以前は「総合職全般」として採用していたんですが、配属すると本人の考えていたキャリアと違うというケースが少なからずありました。たとえば語学のスキルが高く「グローバルな仕事がしたいのに国内営業に配属になり、自分のやりたいことと違う」という不満を持っている人がいました。そこでやっていくんだという気持ちがないまま仕事をすると、成果が上がりにくいし、本人も不幸ですよね。今後も領域別採用を継続していく予定です。
特に、営業は当社でも厳しい仕事です。美容部員(ビューティーコンサルタント)とチームを組んで、得意先の立場に立って提案をしていくタフな仕事です。よほどそこに意義を感じてもらわないと厳しいですね。
――華やかなブランドイメージと、仕事の厳しさにギャップがあるということでしょうか。
ギャップを感じる人もいると思います。このため、面接でも「最初の10年間は国内の販売拠点の営業ですが、いいですね」と何度も覚悟を確認しています。営業に関しては、最初の赴任地をあえて自宅から離れたところに配属していますが、まったく新しい場所で自ら切り開いて成果を出していく、そういった行動力やチャレンジ精神を養ってもらいたいと思うからです。
――化粧品の営業ですから、女性の方が向いているということはありますか。
男女の差は全然ないですね。女性は使っているお客さんの気持ちが分かるのでその面では強みだと思いますが、営業は実際にお客様に直接商品を売るわけではなく、取引先に提案をする提案型営業なので、男性でも変わりありません。
――社員全体の男女比は?
美容部員など美容職社員を含めると女性8対男性2の割合ですが、総合職社員はほぼ半々です。説明会などでそのように伝えると、意外に男性が多いと驚かれることがありますね。
――応募してくる学生に男女の違いは感じますか。
女性の方がしっかりしていて強い印象はあります。男性は比較的優しい、マイルドなタイプが多い。グループディスカッション(GD)では、女性の人数が多いと女性が仕切る傾向があります。大学のゼミとかも、今はそうなっていると聞きます。
――社内も「女性上位」ですか。
社内では男女の違いはありません。現在、女性の管理職比率は約26%なので、管理職は男性が多いですね。一般的に女性は育児休暇や育児時間を取って遅れるという傾向はあるかもしれません。当社は評価も育成機会も均等ですので、他社に比べると男女の差は、ほとんどないと思います。
企業理念、社員の行動指針に合うかチェック
――2015年卒の採用選考の流れを教えてください。
12月1日からプレエントリーを開始し、12月中旬からWEBでエントリーシート(ES)の受け付けを始め、3月3日締め切り。それまでにWEBで適性検査を受けてもらいます。書類選考をして合格者には2回目のWEB適性検査を受けてもらい、4月1日から選考を開始する予定です。
――どのようなESですか?
ESでは、どんな人物かを浮かび上がらせる項目にしています。もちろんエントリー段階の選考の際に使いますが、その後の面接でも基本情報として活用します。
――WEB適性検査は自宅で受ける方式だと、他人にやってもらうこともできますよね。
実際に会えば分かります。面接を何度も行いますので、WEBテストのここの点数がすごく高いけど、会うと違うなと。
――1次選考はどのような内容ですか?
1次選考は「グループインタビュー」と呼んでいますが、4~5人の学生に対して入社10年目くらいの社員がインタビュー形式で話を聞いていきます。円卓にして身近で話しやすい雰囲気を作っています。1対1の面接では緊張して自分をうまく出せない人もいます。インタビュアーが上手に場を和ませて、できるだけその人の良さを引き出す狙いです。
特徴的なのは、面接で学生にフィードバックをしていて、これは感謝されているようです。面接を通じて面接官がこういうことを感じたとか、こういうところが良かった、あるいはこういうところが気になったなど、を気づきをコメントしてお返ししています。
1次選考では筆記試験も行い、面接とトータルで評価しています。
――学生の身だしなみやメークをどう見ていますか。
みなさんきれいにして来られますね。お化粧もきれいにされてきますね。化粧品会社だからといってメークテクニックを見ているわけではありませんので、清潔感の方が大事かなと思います。
――デパートなどの資生堂の店舗に行ったことを話す学生はいますか。
結構多いですね。強要はしませんが、少しでも情報収集して会社とのマッチ度を確認しておくのは、本人にとっていいと思います。
――2次選考の内容は?
次の2次面接は、課長クラスの1対1の面接30分と、グループディスカッション(GD)です。GDはテーマを出して、時間を区切って行います。仕切っている人がいいという訳ではなく、発言内容も聞いていますし、一人ひとりどう関わっているか見ています。
――最終面接の形式は?
年によって違いますが、学生1人対2~3人の面接です。
――やはり志望動機が大事ですか。
志望動機は聞きます。「日本の文化を世界に広げたい」とか「お客さんの笑顔が見たい」。あとは会社が出している情報に関する内容が多いですね。正解はありませんので、自分の言葉で自分なりの考えや想いを語ってもらえれば良いと思います。
学生がされてきた成果も聞きますが、ここでは、自分で目標を立てて、目標を達成するために一生懸命やって、その成果をきちんと振り返れるか、を見ています。会社に入ると自分で目標を立ててやっていかなければなりませんし、それが会社に入ってからの仕事のやり方ですから。
――では、三輪さんが見るポイントはどこですか?
当社の企業理念との合致度を確認します。単に「資生堂が好きなので」と言う人もいます。それは大変ありがたいことなのですが、仕事は仕事でハードですから、それだけでは続かないと思うんですね。会社を通じて、お客さまに対してこんなことがしたいという想いがあれば、その人はモチベーションを保てるのではないかと思います。会社では、どんな上司に会うか、どんな場所に配属になるかも分からない。お客さんに対して何かをやりたいという強い気持ちがある人は、たぶんめげないで長くやってくれるかなと思います。
人の話を聞け、意見を言える人、ビジネスマインドもほしい
――企業理念と採用基準の関係について、詳しく聞かせてください。
企業理念体系はホームページにも書いていますが、2012年につくった「MVW(Our Mission, Values and Way)」です。企業使命(Mission)と、それを実現していくうえで持つべき心構えや価値観(Value)、そして行動(Way)。グループ企業の全社員は、この企業理念に基づき、こういう行動を求めるというグローバル共通の行動様式があります。会社に入ってから身に付けるものもあるし、学生にはこれを求めましょうというものもある。これをブレークダウンして評価項目を作り、ここから面接での質問項目や評価点を決めています。軸がないと評価が難しいですからね。
――他社では聞いたことがない理詰めの選考方法ですね。
面接官が複数いるので、選抜の基準をできるだけ合わせたい。その基本は、社員に求める行動様式だろうと思います。求める人材像として掲げている、主体的行動力、多様性の受容、チャレンジ精神の3つに関しても、ESの質問、面接の質問でそれぞれについて見ています。
――三輪さんには、どんな学生が魅力的に見えますか。
やっぱり人の話をきちんと聞ける人、自分の意見をきちんと持っていて自分の言葉で言える人ですね。目立つのは発言が多い人ですが、私はそれよりも発言内容から、ビジネスマインドがあるか、アイデアまでいかなくても何かビジネスに関する発想力、着眼点、問題意識があるかを見ています。発言は少なくても、言うべきタイミングにしっかり発言をする人や、議論を進ませる気遣いができている人は、いいなと思います。会社でもそうですよね。自分の役割をきちんと演じられている人はいいなと思います。
――財務やマーケの領域には専門の勉強をした人が入るのでしょうか。
財務は、大学で勉強している人が対象です。マーケティングを専攻する学生の受験は多いですが、マーケティングで大切なのは知識だけではないので、専攻していないとだめということはありません。きちんとお客さんのニーズを捉え、何が必要か、ロジカルかつクリエイティブに考えないといけない仕事です。知識面だけではなく、幅広い観点で選考します。
――領域ごとに選考基準は違うのですか。
営業は、チームで活動ができるか、周囲を巻き込むコミュニケーション能力、リーダーシップがあるか、取引先からの信頼を得ることができるか、といった点を重視します。企画スタッフに関しては、専門性の高さ、あるいは語学力や異文化への対応力なども確認します。売り上げの海外比率が約50%になったので、本社スタッフはコーポレート部門としてグローバルに対応しないといけないからです。
――語学力はどの程度重視しますか。
業務内容によっても必要なレベルは違いますが、仕事に必要な語学力があれば大丈夫です。昔は他の語学ができる人も採っていましたが、どうグローバル化に参画してもらうかを考えると、やはり英語が重要ですね。
――内定者、新入社員にはどんなタイプの人が多いですか。
みんな明るくて、素直で、親しみやすい人が多いと思います。単に感じがいいだけではなく、軸があって自分からしっかり人を巻き込める人が多いですね。仕事ではいろんなタイプの人と付き合わなくてはいけないですから、コミュニケーション力は高い人を採用したつもりです。
――エントリーする学生像は?
みなさん、きちんとされていると思います。ただ、1次のグループインタビューでは、同じグループにすごく話がうまい人がいると、テンポに乗れない学生はかわいそうだなと思うことがありますが、そのあたりはインタビュアーが配慮してくれるので、学生は周りに振り回されずに自分らしさを出してほしい。
■資生堂の強み
――インターンは実施していますか。
現在はやっていないです。今後は職種や領域別に必要に応じて検討していきたいと考えています。
――OG・OB訪問は人事で対応していますか。
学生がキャリアセンターなどで社員の名前を調べて連絡をしてきてくだされば、取り次ぐことはしています。こちらからの紹介はしていません。大学に名簿を渡したりもしていません。
――会社説明会はどんな形式ですか。
資生堂主催の説明会は開いていません。合同企業説明会にお邪魔したり、大学に出向いたりしていますが、講演形式が多く、ブース形式はほとんどやっていません。合同企業説明会の講演会もすぐに席が埋ってしまうので、今年はエントリーした人にはWEBでの説明会をご用意しました。少しでも多くの人に会社の理解をしていただいたうえで受けていただきたいと思います。
――選考において大学名は重要ですか。結果的に内定者の多い大学はありますか。
大学名は全然関係ありません。ですから、最終的に偏りがある場合もありますね、社内でも出身大学はほとんど意識がありません
――内定者が競合するのはどんな業界ですか。
やはり同業他社は多いですね。あとはメーカー、銀行、証券、電機メーカーとかですが、比較的大手企業が多いような気がします。
――他社との違い、資生堂ならではの強みは何でしょうか。
日本のトップメーカーとしてビューティーを作っていく技術力、ブランド力、クリエーション力、おもてなしの心。価値の高いものを作ろうとか、日本の美を世界に伝えていこうという意識は、社員みんなが持っていると思います。当社は宣伝制作は社内で行っており、常に新しいもの、クリエイティビティの高いものをつくっていこうという意欲があります。
あとは、会社のことを誇りに思っている社員が多い。140年を超える歴史が長い会社なので、今まで培ってきたものを壊しにくいというのはあります。過去のものを新しくするのは大変です。でも、そこを現状に満足しないで常に変化させようという意識は非常に高い。
会社のロゴやマークに象徴されますが、時代に合わせてちょっとずつ進化しています。時代を見ながら、時代に合わせて少しずつ変えていく。過去からのバトンをさらに磨きをかけて渡すって感じですね。全部崩した方が楽なのかもしれませんが、高い技術、デザイン、ブランド力、仕事を伝承し、変革しながら引き継いでいく会社です。
「美しくなることで幸せに」をお客様に届ける仕事
――社内の研修、教育制度は?
社内に「エコール資生堂」という企業内大学があります。7つの学部があり、役員が学部の学部長をつとめています。たくさんの研修、プログラムを用意しており、社員がプロとしてやっていくために教鞭をとる。そういう仕組みがあるので、社員は自分も何か勉強しよう、という気持ちになります。
新入社員は約3週間、神奈川県の葉山にある研修所で新入社員研修を受けて、その後は、期間はさまざまですが、配属先となる部門や事業所での研修があります。その後も2年目フォロー研修や各領域ごとの研修などがあります。
――営業の配属は全国ですか。
はい。支社は15カ所あり、全国各都道府県に営業拠点があります。スタッフ部門は最初に営業を担当してもらう方もいます。マーケの場合は最初に約3年間営業を経験します。お客さまの行動や市場をリアルにつかんでもらうためです。
――配属先の希望は?
どういうチャネルに興味があるかは聞きますが、希望がかなうとは限りません。場所については何度も「全国どこでも行けますね」と確認しています。
――海外駐在員は何人くらいいますか。
海外で勤務する駐在員は約120人くらいです。世界のグループ社員全部で約5万人。日本が2万5000人なので、それ以外が現地法人の社員です。現地法人の社員は現地で採用をしています。海外でチャレンジしたい人は、手挙げ式の海外派遣制度があります。ただ、グローバルの業務は、別に海外に行くことがすべてではありません。。本社自体がグローバルで、多くの人が日々海外との仕事をしています。例えば人事部で言えば、海外の各法人の人事部と連携しながら仕事をしています。
――仕事の理想と現実、やりがいとつらさについて教えてください。
資生堂の仕事は、「人が美しく幸せになるようなサービスや商品」をお客様に届けること。それをやりがいと感じるかどうかが大事です。そこに価値ややりがいを見いだせない人は厳しい。
仕事をしていて大変なことは、すごくたくさんあります。例えば商品をつくるというのも、とてもタフな仕事です。いろいろな難関を乗り越え、めげずにモノをつくらないといけない。いくら大変でも「大変なモノ」になっちゃいけないですよね。厳しい状況でも、明るく楽しく仕事ができる人じゃないと。なぜなら、最後は、お客さまを美しくするための商品であり、お客さんとの接点では、明るくきれいでなくてはいけないからです。
――グループや社内の調整、説得が大変そうですね。
商品開発は、企画から1年以上、調査を含めると2年くらいかかるので結構長い。その間に、関係するいろんな人を動かしていくマネジメントが必要なんです。研究所、宣伝、営業など、みんながこの商品をお客さまに届けたいと思ってもらわないといけない。ときには「全然ダメ」と言われたり、否定的なことを言われる場合もありますが、なんとか考えを理解してもらう努力が必要です。一方で柔軟性も必要。自分が強い意志を持って取り組まないと飲み込まれてしまうこともある。提案がうまく通らないとめげますが、それが商品になってお客さんの手元に届いて喜んでもらえると思うから頑張れる。それを楽しいと思わないと。それができない人は難しい。やらされ感でやっている人は本当につらいと思いますね。人を巻き込む情熱を持って最後までやり遂げることが一番大事なんです。
■三輪さんの就活、仕事について
――三輪さんご自身はなぜ資生堂に入社したんですか。仕事の主な経歴を教えてください。
もともとマスコミ志望だったんですが、自分がやりたいことは、人に何かを届けて変化を与えたいんだということに気づき、メーカーでもそういう価値を届けることができると思い、資生堂を受けました。最初は社内の研修部門で、得意先向けの機関紙の編集を5年ほどやりました。産休、育休に入って、その後「イプサ」という関係会社で12年ほどマーケティングを担当し、その後、中国事業部で「オプレ」や「ウララ」といった中国専用ブランドを担当しました。人事部に来てから4年半たちます。この4月から採用を担当しています。
――印象に残っている仕事は?
北京オリンピックの年、2008年に「オプレ」というブランドのイノベーションに取り組んだ仕事が一番印象に残っています。いま中国で約1000店くらいあるデパートブランドなのですが、商品はもちろん、ロゴを変えたり、カウンターのデザインを変えたり。モデルを含めたコミュニケーション全体をリニューアルしました。中国の女性の美意識も高くなってきているので、ブランド全体を大きく変えましょうということになった。なかなか大変でしたが面白かったですね。そういう高いハードルを乗り越えると、自分に自信もついてきます。
――関係会社も経験されていますが、本社とどう違いますか。
イプサでは商売感覚がすごく磨かれました。担当した商品が売れたかどうか、毎日売り上げをみていました。ときどきコスチュームを着て店頭に出たりして、お客さんの反応も直接見たりしました。本社に比べると会社の規模が小さいので、ブランド全体を見渡せるということで、とても勉強になりましたね。
みなさんに一言!
ありのまま本音で語ってほしい。作った自分で入社してもミスマッチになってしまうので、ありのままの自分で受けていただきたい。合っているか合っていないか、こちらも選ぶけれども、学生さんにもしっかり見極めて選んで欲しい。お客さんにどう喜んでもらえるかという顧客志向が高い人がいい。ブランドイメージが強いので、ギャップが生じがちですが、「好き」や「憧れ」だけではなく、自分が何をやりたいのかきちんと考えてほしい。高い目標をかかげて、情熱を持ってやり遂げられるか、長い歴史がある会社だけに、変革にはエネルギーが必要。そこを自らチャレンジできるタフな人がほしい。大変なことがあっても楽しめる人、楽しく仕事ができる人に来てほしい。
株式会社資生堂
【化粧品・生活用品】
当社は、1872年に日本初の洋風調剤薬局として東京銀座に誕生しました。社名の由来となった中国の古典、四書五経の一つ、「易経」の一節である「万物資生」―すべてのものは大地の徳から生まれる―は新たな文化を生み出そうという創業者のフロンティア・スピリッツそのものであり、それは現在に至るまで「新しく深みのある価値を発見し、美しい生活文化を創造する」という企業理念として生き続けています。 この企業理念は化粧品・トイレタリー・医薬品等、多岐にわたる事業において付加価値の高い商品やサービスとなって実現されています。
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