株式会社電通
2015シーズン【第8回 電通】
「人との違い」を見せてほしい!人の心を動かすコミュ力の会社
電通 人事局 採用部長 真道哲哉 (まみち・てつや)さん
2013年12月18日
――2014年度入社予定の採用実績を教えてください。
今の内定者の人数は公表出来ませんが、今年の4月に入社したのは136名。そのうち総合職が123名、アート職が13名です。男女比は7対3くらい。この10年ぐらいは女性が3割。電通は結構厳しいイメージがあるので応募者も男性の方が少し多い。理系は2~3割。残念なことに理系の学生の選択肢になかなか入れてもらえないんですよね。
――理系の職場はあるんですか。
特に技術職的な職種はありませんが、全ての部署で活躍してますよ。なかでもクリエーターやプランナー(戦略部門)には理系出身者が多くいます。理系の人は仮説の立証やPDCA(Plan→Do→Check→Action)サイクルを使い慣れていますから。大学院卒は2~3割です。大卒と院卒で区別はしていません。
――エントリーの状況は?
プレエントリーの人数は万単位ですが、これを増やすために採用広報に力を入れています。人材の多様性を求めていることもありますので。最近、採用広報はその企業のブランドイメージに影響するくらいに大きな存在になっています。就活生は社会人予備軍ですよね。たとえ入社に至らなかった学生でも社会人になってから電通と一緒に働いてみたいと思ったり、電通に転職を考えたりするかもしれない。計り知れない影響があると思います。
エントリー人数は千単位。エントリーの課題はコピペできない内容にしています。本気じゃないと書けないようにややこしく。
――なぜ多様な人材が必要なのですか。
電通でも広告以外のビジネスが増えています。広告には興味なくても、優秀で「コミュニケーションビジネス」に向いている人はいるはずです。そういう人たちにも受けてほしい。最近の学生は、「自分は理系だから」とか、「自分なんかとても受からないから」と決め付けがちです。そういう思い込みをせずにぜひ興味を持っていただきたいと思います。
――そのための戦略は?
人を動かす心のツボを「インサイト」と言うんですが、僕たちはなんとかして就活生のインサイトに迫ろうとしています。例えば、「女性のための働き方を説明します」というよりは「女子会やります。スタッフも全員女性、講演する人も司会も女性、女性だけの説明会です」とした方が学生に響く。「理系でも電通には仕事がありますよ」というよりは「理系の学生と理系の社員だけを集めたイベントやります」の方が分かりやすい。いろんなやり方で、就活生の心にどうしたら響くかを考えるようにしています。
以前の採用メッセージは「ヒトノココロヲウゴカスシゴト、ナンデモアリ。」でした。それを発している会社が就活生の心を動かせなかったら、「電通もできてないじゃん」って言われる。これが一番恐ろしい(笑)。自ら首を絞める話でもありますが、「自分たちにできなかったら学生に響かないよね、キレイゴトを言っても」っていうことですね。
――「就活生の心に響く」PRには、いつから取り組んでいるのですか。
2009年くらいからです。我々は電通のビジネスを「コミュニケーションビジネス」と呼ぶべきだと考えているんですが、それに見合ったユニークさがあってしかるべきで、いままでのように通り一辺倒のものを作って、説明会をやって、エントリーって言うんじゃなく、就活生、あわよくば世間一般に「電通って面白い会社だな」と思ってもらえるようなスペシャルな企画をみんなで考えていく。1回目は「就活生の夢」という企画で、広告会社に入ったら何をしたいのか10文字で応募してもらいました。電通ビルのすべての窓のブラインドを開け閉めして、ビルの壁面を使って就活生へのメッセージを発信して朝日新聞さんでも取り上げていただきました。
そのような、普通の採用広報じゃない電通ならではの仕掛けを毎年やっています。(ちなみに昨年は面談に臨む全ての学生に自己紹介をするためのオリジナル名刺を用意し、渡しました)ただ、どんなに評判が良くても同じことは二度やらないから結構きついですよ。今年はまだプランニング中です。あと一番大事なのは上から目線は当然、下から目線でもなく、いかに就活生と同じ高さの目線でコミュニケーションがとれるかですね。
――総合職で入ると、実際の仕事は主として営業ですか。
7500人の社員のうち約1/4が営業ですが、今年から新入社員の初任配属はなくなりました。新聞局、ラジオテレビ&エンタテインメント局などのメディア担当セクション、ネットを中心にしたデジタル・ビジネス局、コピーライターやプランナーがいるクリエーティブプランニング局(CRP局)などで数年経験を積んで自分の強みを持ってから営業に行くようにしています。営業はある程度仕事が分かってからやった方がいいという考え方です。
――クリエーティブ部門を志望する学生も多いのでしょうね。
もともとクリエーティブ志望の人はそれほど多くはありません。新入社員研修を受けてから、クリエーティブをやりたいという人が増えます。あとは、映像、スポーツビジネス、営業とか研修を通じていろいろな仕事に興味を持つようになります。グローバルビジネスに興味がある人もいます。一般の学生からは「電通はソフトバンクのCMを考えるくらいすごいアイデアがないとダメなんじゃないか」と、勝手に高いハードルがあると見られてしまう。よほどすばらしいアイデアの持ち主でなければ受けることすら出来ないんじゃないかと。そういうイメージを勝手に持たれてしまうのは残念です。
――実際は必ずしもそうではない、いろんなタイプがほしいということですか。
実際いろんな人がいるし、いろんな仕事があります。アイデアは大事ですが、その出し方は後から学べます。新入社員研修の初日は「アイデア発想演習」というプログラムからスタートしますし、経験値を積むことである程度のレベルには達することが出来るものだと思います。
――アート職は主に美大出身者ですか?
基本的には美大の出身者ですね。あとは一般の大学のデザイン系の学部で学んだ方なども入社しています。
――最近の新入社員はどんなタイプが多いのでしょう?
一見いい学生が多いですね。おとなしくて。生意気な学生が減ってきているということでしょうか。あとは、ちょっと諦めが早い傾向があるのかもしれない。
――本当は生意気な人がほしい?
そこは難しくて、今の電通のビジネスに合った人だけを採れば良いという訳ではなくて、将来を見据えて未来の電通のビジネスを担える人材を採らないといけない。将来の電通がどうなるかはよく分かりませんが、世の中も変化するだろうし、変化に強い会社になるために、いろんな人がいないと。人材の多様性を求めていますが、そのバランスが難しいと感じます。
頭を使う難しいES、より良くするため誰かと相談…アリかも
――採用試験の流れ、スケジュールを教えてください。
12月1日からプレエントリーしてもらい、本エントリーは2月上旬ごろからで、SPIの適性検査が3月中旬、4月から面談です。面談は原則としては土日に行います。
――なぜ土日に?
学業に支障がないようにということもありますが、現場の社員が面談するので通常業務のない土日にしています。一緒に働きたいか、電通の適性があるかどうか、現場の社員に判断してもらおうということです。
――面接を「面談」と呼ぶのはなぜですか?
上から目線じゃなくて、面談で言葉のキャッチボールというか、会話の中で適性やコミュニケーション能力を推し量りたいからです。
――ESの「コピペできない設問」は、ハードルとして設けているのですか。
電通みたいに一人ひとりの個性が大事な会社にコピペして入って来るのもどうかと思うし、そうした課題を面白がれるのも一つの資質です。頭を使う、知恵を絞るのが大事な会社なので、ああいう迷惑なものになっています(笑)。
――以前のESでは、「新しいアプリを考えろ」とか……。
「廃校になった小学校の使い道を考えろ」とか、「おみくじに代わる正月の慣習を考えろ」とか、その学生の個性が表現出来るような課題を書いてもらいます。
4~5年前から「採用広報だけじゃなくて、採用選考においても電通らしい面白さがないと嘘だよね」と変えてきました。いかにも電通らしい選考をやっていきたい。採用は、母集団が毎年違うし、よく「生もの」だと言われます。いいものは残しつつ変えていく、アップグレードできる仕事です。前例にとらわれず新しいことにチャレンジしていく会社なので、採用もそうあるべきだと思いますね。
――エントリーしてくる学生はどんなタイプが多いですか?
いろんなものごとを面白がれる人、積極的だったり、好奇心が強かったり、考えたことをアウトプットできる人。例えば、サークルで映画を作っていましたでも、アプリを作りましたでも何でもいいんですが、自分の考えたことを形にしていく人が多いように思いますね。
――求める人材と合致していますか。
そうですね。理系の人の場合、趣味ではなく学業でアウトプットしている人が多く来ます。体育会系では例えば、チームを動かすために自分でメニューを考えて実践しているような人とか。そういう意味では、求める人材を採用できていると思いますね。
――憧れで受ける学生も多いと思いますが、こういう学生はちょっと違うぞというパターンは?
人任せ、主体的じゃない、受身、そういう人たちはちょっと厳しいと思いますね。以前「ヒトノココロヲウゴカスシゴト、ナンデモアリ。」という採用メッセージにしたところ、面談で「人の心を動かす仕事をしたいんですが、何かありませんか?」と言う学生がいた。そりゃ違うだろ、君が作るんだよと。これって笑い事じゃなくて、うちの「電通若者研究部(ワカモン)」が発表したデータで、「就活生がターゲット企業に望むこと」の上位に「OB訪問をやってほしい」というのがありました。最近、個人情報の絡みで難しくなっているのはわかります。でも、それは自分でやれよ、自分でツテをいろいろ探してやりなさいよと言いたくなる。そのくらい受け身なんだなと思いましたね。
■面接のポイント
――面接の形式を教えてください。
2013年の実績ですが、4月最初の土日が1次面談で1対1です。30代中盤から40代くらいの社員で15分くらいです。その次が部長クラス、2対1の個人面談で、20~25分くらい。その次が初めて人事部門中心で、今年は2対1もしくは学生数人の複数面談でした。最終面談だけは平日実施で役員3人前後と学生5~6人でした。15分くらいでこれは重要な最終確認の場ですね。
――4回の面接で、それぞれ中心に見ているポイントはありますか?
あります。最初の面談では、サービス業なのでコミュニケーション能力を一番に見ています。すぐ人と仲良くなれますという狭義のコミュニケーション能力じゃなく広義の能力です。要は、面談員の質問を素早く理解し、自分の考えを的確に簡潔にまとめて、分かりやすく説明できるかどうかというベーシックな面。あとは、イマジネーションというか洞察力。こう言うと面談員はどういう気持ちになるのか、だとするとどう伝えればいいんだろうなど、細やかな対応ができるかどうか。
危険察知能力もありますね。「志望動機は?」と問われて、用意してきた動機を延々としゃべり続けたりしたら危険察知能力ゼロでしょう。面談員が飽きていることに気づかず、短い面談時間の中で5分間も志望動機をしゃべるなんてあり得ない。そういったことも含めてコミュニケーション能力なんです。
仕事でもありますよね。お得意さんのところに行って、相手の顔色を見ながら、今日は新しい話を聞いていただけそうかな?とか、それともあんまりややこしい話を長時間はできないなとか、短めに切り上げるべきかなとかを考える。そういう、人と相対する能力は1次面談である程度見られるんじゃないでしょうか。
――2次、3次面接で重点的に見るポイントは?
電通で何をやりたいのか、自分のことを相手にしっかり伝えられるか、ストレス耐性や諦めない力があるか、などを見ますね。
――1次面談に呼ぶのは何人くらいですか。SPIでバサッと足切りするんですか。
コミュニケーションの会社なので、できるだけ会って話をしたい。人は5分でもいいから会わないと判断できないですよね。体温の伝わらないWEBテストで落とすことは極力したくない。毎年SPIをやめて全員と面談できないかと考えているんですが……。東京、大阪、名古屋の3カ所でやる1次面談は、今年から人数を増やしました。SPIの点数は、誰もが努力すればクリアできる範囲だと思っています。
――ESでも足切りするんですか。
電通という会社にまじめに向き合って一生懸命考えて自分を表現できたなら大丈夫なんじゃないかと思いますよ。最近少なくなりましたが、全部「AAAAA」など同じ文字が並んでいるものは当然はじきますし、極端に文字数が少ないものも考えてしまいますね。あとは明らかにおかしいコピペとか。
――でも、「廃校になった小学校をどうする」とか、自分で考えるのは大変ですよね。
WEBエントリーは個室での試験じゃないので……。テレビのクイズ番組じゃないけど、「ライフライン」をいかに多く持っているかも、その人の能力だろうと思いますよ。
――本人が書いたかどうか分からなくても、いいものは評価すると?
そうしないと意味がない。いま自分のパソコンでSPIをやるとき、友だちを呼んで来るとか、代わりに受験するバイトもあるって言うじゃないですか。エントリー課題は難しい内容です。別に親や友だちと相談してもいい。より良いものを出そうと努力するなら、それもアリかもしれません。現実の仕事は一人だけでやることはありません。最高のモノを出すために意見をしてくれる人的ネットワークを持っていることも大切ですからね。
――WEBのESは誰が読むのですか。どんなESを評価しますか。
基本的には人事が読みます。ただ、似た内容のものが多い。もしかして同じ情報を回してるんじゃないかと思うほど。だから普通に見てちょっと変わっていたり面白いものに惹かれます。他の学生のものとは毛色が違う、人と違って目立っているかどうか、ということかもしれませんね。これって結構大事なことで、面談で「最近好きなCMは?」と聞くと、平気で「ソフトバンクの白い犬」とか答える学生が結構多い。広告会社を受けるならもう少し変わったこと、他の人と違うこと言えないの?と思いますね。その答えに君自身の個性やヒトとは違うユニークな視点はないのかと。
――選考で印象に残っている学生は?
リクルートスーツじゃない服装で来る子には注目しますね。2年ほど前、上下白のスーツで来た男子がいました。丈の短いバミューダパンツで来た男子は、2次面談員が高い評価をして、「次は一応スーツで来た方がいいよ」って言ったとか。
本当はリクルートスーツは禁止にしたい。ただ、うちの選考だけじゃなく、他社選考にその足で向かう学生に負荷がかかるため、やりませんが。
ビジネスの視点抜きに「社会貢献」言われても…
――インターンシップは実施していますか。
うちは業務上、執務スペースに学生を入れることができません。クライアントさんのトップシークレットを扱っており、機密を見られたらまずいので。そこで、クリエーターやトッププランナーが実践的に教える「アイデアの学校」と題したものをやっています。今年は8月と9月の計7日間でおこない、鎌倉の研修所にも1泊しました。結構大変な応募課題を課したのですが、3000人以上が応募してくれて、52人参加しました。
――書類選考と面接で決めるのですか。
はい。コピーライター・CMプランナー、ストラテジックプランナー、デジタル×クリエーティブの3コースがあり、選考方法はコースによって違います。
――採用の参考情報にはなりますか。
ならないですね。結果的には50人参加したら通常選考を経て10人くらいは電通に来ますが。もともと電通に興味ない学生も参加してますので。電通がどういう会社なのかを伝える採用広報の面が大きいです。僕らが入ったころはやたら飲んで強引に仕事を進めるようなイメージがありましたが、実はあたりまえですがアイデアがすごく大事な会社で、その最たるものがクリエーター、プランナーです。自分でアイデアを出すことを徹底的に学生に学んでもらう。ライバルがいる中で自分を追い込んで必死にアウトプットしていく大変さ、面白さを体験してもらう。たとえ電通じゃない、広告業界じゃない他の会社に行っても、商品開発などに少しでも役に立ててもらえたらなと。
――かなり厳しい内容だとか。
グループワークも個人ワークもあるし、課題を出して1週間後にプレゼンとか、学生は相当大変みたいですね。このインターンシップは5年くらいやっています。来年からは形を変えると思いますが。
去年から「デザインサマースクール」というアート職に興味がある学生向けのインターンを、また関西支社では、「クリエーティブ塾」というインターンシップもやっています。
――人事部でOB訪問の紹介はしていないんですね。
紹介はしていません。自分でツテを見つけるのも資質のうちだと思います。ただ、OB訪問に類したイベントはやっていて、学生が社員の話を聞くチャンスを極力多く作るようにしてます。
――大学別の懇親会は?
ないですね。電通ってびっくりするぐらい学閥がない会社です。大学での説明会に出向くのは20大学くらい。地方の大学にうちの方から説明したいと相談し、行くことが増えています。例えば去年は鹿児島や高知に行きました。結局内定者は早稲田、慶応が多いんですが、多様性という意味でも地方大学に電通に適した人材がいるかもしれないので。
――地方大学からの内定者は増えていますか。
まだ、なかなか増えていないんですよね。地方に行ってよくあるのが「○○大学なんかで電通に受かるんでしょうか」みたいな質問です。自らの中に限界を作ってしまっている学生が多く、初めから東京で働くイメージを持っていない。地元の役所とかを目標にしている人が多いかもしれないし。でも僕らは地方にも電通で働くポテンシャルを持っている学生がきっといると思っています。
――リクルーター制度は?
ないですね。ただ自主的に自分の出身クラブの後輩を指導するなど熱心な社員もいますね。「この学生いいから会ってください」とか言われて、会うことはありますよ。興味を持ってくれるのは嬉しいことですし。楽しい会社だけど厳しい会社だよって言います。ワークライフバランスも大事ですが、勤務時間がきっちり9時半~5時半という会社じゃないですからね。そういうサービス業の厳しさを話して、それを理解してくれて、なおかつ真剣に受けてくれたら嬉しいですね。
――企業とのお付き合いが大事な広告会社ですから、コネ入社もあるんでしょうね。
それについてはノーコメントです。よく解釈すると自分が受かるためにあらゆる手段をつくすことはあるかもしれません。自分でもベストを尽くすけれど、親の知り合いもプラスアルファで利用してなんとかしようとする、僕はそれもひとつの方法だと思います。
――ありがちな志望動機は?
最近は「グローバルな仕事がしたい」「社会貢献」「人の役に立ちたい」。でも、グローバルな仕事についてあまり考えていなかったり、社会貢献をビジネスにどう結びつけるかまで考えていなかったり。あくまでビジネスをしている会社なので、その視点を抜きに人の役に立ちたい……とかでは難しいですね。
「日本の良さを海外に出していきたい」「日本の文化やモノづくりを海外に輸出して」的な人も多い。突き詰めて考えて具体性があればいいが、何となく言っている人が多いようにも感じます。
――内定者が競合する企業は?
商社とコンサルが多いですね。どうしてでしょうね。
――商社と内定がバッティングすると、学生の引っ張り合いになるんですか。
どちらも世の中に対して影響力のある仕事ですが、個人のアイデアを世の中に分かりやすく発信できるのがコミュニケーションビジネスです。個人の表現とかアイデアを社会に向けて出していき、広告という形でその姿を見られることに興味を持つ学生は電通を選んでくれます。
プライベートでもテレビ・新聞を見て…いつも考えている
――研修について教えてください。
4月の新入社員研修は約1カ月間。10人程度の新入社員にリーダーとサブリーダーがついて、班単位で行動を共にします。そこで人事主催の研修だけでなく良き相談相手になってもらいます。
――配属は多くが東京ですか。
136名のうち、関西に10名、中部に3人ほど。ほとんど東京ですね。それ以外の地方勤務はありません。電通の営業所は東京、関西、中部ですから。海外は若くして行くケースはあまりないですね。一人前にならないと通用しないので10年目以降くらいが多いですね。海外駐在の人数は、現在は150人くらいです。
――電通の仕事の厳しさとやりがいは?
新聞、テレビといったマスメディアやインターネット、屋外広告や車内広告、イベントなど、人々の目にふれるものに関わりを持つ仕事です。アイデアが面白くてクライアントさんに投資をしていただければ、それらのメディアに自分のアイデアが反映される。世の中に対する影響力を実感できる仕事、スケールの大きな仕事ができる会社です。そのためにはそれができるアイデア、実行力、企画力を身につけるために、現場で相当苦労しないといけない。入って何年かはけっこう厳しい。時間的にも厳しいし要求されることも多いと思います。
――月に1日しか休めないとか。
決してそんなことはありませんよ。たとえ休みの日に仕事になっても代休は取れます。しかしお得意様ありきの仕事なので……。昔に比べれば休めるようになってきました。ただ、タイムマネジメントもその人の能力です。生活に密着した、ありとあらゆるメディアに関する仕事なので、プライベートでも、テレビを見て、新聞を見て、これは……といつも考えています。時間の使い方が上手い人は仕事も楽しめるんじゃないかな。
――広告を取り巻く状況は厳しいとも言われます。広告業界は今後どうなっていくのでしょう。
人間はコミュニケーションをする動物なので、例えば私見ですが、もし将来ヒトがテレパシーでコミュニケーションを取れるようになっても、そこに付加価値を付けてビジネスにするのがうちの社員です。電通の「鬼十則」(4代目の吉田秀雄社長が作った電通社員の行動規範)の一つに「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。」というのがあります。もし広告が下降線をたどっているのなら、違ったもので伸びる仕事を作ってやるぞと。それが電通の場合は広告以外のイベントだったり、エンターテイメントだったり新規ビジネスも含めていろいろあるんだと思います。
――電通から独立して起業する人もいますが、辞める可能性があるとわかっている学生を採用しますか。
今は自分で起業する学生もいますよね。うちも「グッド・イノベーション」を理念に掲げ、「アントレプレナーシップ」、つまり企業家精神を大事にしています。そういう学生には入社して経験を積んでもらって、5年経って辞やめたくなったら辞めてもらってもいい。企業家精神を持った人が、新たな電通の仕事を切り開いてくれるかもしれない。辞めるリスクがあるから採用しないということはないです。社内でいい刺激になればいいし、独立後に一緒に仕事ができればよりいいかもしれない。
実際、起業が理由で内定辞退する人もいるし、1~2年で辞める人もいます。クリエーターも独立心が強いけれども残る人もいます。電通にはいろんな能力を持った社員がいて、電通という器を使えるからこそ自分もより大きな力を発揮することができる……だから社内にとどまるんです。
■真道さんの仕事について
――真道さんが電通を選んだ理由は?
僕は、普通の私立大生で、実は就職なんかしたくないなと思っていました。金融にも興味持てないし商社も違うなと、そんなときに博報堂さんのDMが自宅に届きました。それが結構面白くて心にグサっと来たのがきっかけで広告業界に惹かれました。電通はその時は知らなかった。当時はネットもなかったのでいろいろ周りに聞くと、電通っていう会社の方が大きいらしい。それで電通に関する本を読んでみました。面白そうだけど怖そうな会社だなというのが最初の感想です。ただ、しょせんサラリーマンなので、規模が大きい方が、自分の思ったことやアイデアをより大きく分かりやすく世の中に発信できる。世の中っていう池にアイデアという石を投げ込むとすると、石が大きい方が波紋も大きい。当時は電通と博報堂を一緒に受けられなかったので電通を受けました。あと学生だったので浅はかな考えですが、商社で働いて、一緒に飲んだ女の子に「この鉄鉱石、オレが持ってきたんだぜ」と言ってもウケないかもしれませんが、電通なら「このタレント使ってるキャンペーン、俺がやったんだぜ」と自慢できる(笑)。
――実際入社してみてどうでしたか?
思った通りじゃなかった! 最初に当時もっとも厳しいといわれた新聞雑誌局の地方紙担当に配属されました。まともな時間には帰れないし、罵声は飛ぶ。一方で世の中の動きにビビッドに反応する。キツいけどスリリングで刺激的でした。当時、新聞原稿は電子送稿ではなく凸版やフィルムだったので、原稿を地方紙の本社に送るときに、台風が来て電車が止まるとか飛行機が飛ばないとかになるともう大変でした。でもそんな時に限って新車の発売広告だから絶対に載せないといけないとか。隣の県に飛んでる飛行機を調べたり、新聞社にお願いしてそこまで原稿を取りに行ってもらったり……生きた心地がしないような経験も随分しました。
――一番印象に残っている仕事は
営業で自分の担当商品の扱いを他の広告会社に取られ、2~3年かけてやっと奪回したことです。新発売のときから電通がずっと担当させていただいてきた飲料だったのですが、扱いを失うとクリエーティブ担当もストラテジー担当もいなくなり、1人で考えなくちゃいけない。自分のアイデアを持っていき、少しずつ橋頭保(きょうとうほ)を築いていく。そしてクライアントの気持ちを少しでもこちらに向けてもらう。電通ならこういうことができるという話を非公式にして、まずは競合プレゼンまで持っていく。取られた商品を奪回するのは、営業の醍醐味です。もっとも、取られないのが一番いいのですが……。
みなさんに一言!
就活中にどれだけポジティブに過ごせるかが大事です。新聞を読んでいてつらいのは、就活で悩んで自殺する人が年々増えてきているという記事です。企業が採れる人数は限られているので、学生のみなさんも一つ二つ失敗したって人生終わるわけじゃないというくらいに思っていてほしい。みんながみんな希望の会社に入れるわけじゃない。希望の会社に入ったからって希望の部署に行けるわけじゃないし、ましてや入社3年以内の離職が3割もいる。もし第1志望の会社にすんなり入ったとしても、それが自分にとってハッピーかどうか。ミスマッチですぐに辞める人も中にはいるでしょう。このように正解はありません。
自分のやりたいことがどうしても見つからなければ、極論を言うと、「俺は就職人気ランキング1位から50位まで受けてみよう」でもいいのかもしれません。取って付けたような業界の知識や中途半端な志望動機を聞かされるより、「いやあ、やることが見えないのでトップ50受けました」の方が面白い。就活は一生が決まる側面もあるけど、これですべてが決まるわけじゃない。広い視野で俯瞰して見ることができる自分を持っていてほしいと思います。
株式会社電通
【マスコミ・出版・印刷】
電通は単なる“広告会社”ではありません。 商品開発から顧客の事業課題の解決まで、コミュニケーションが関わるところ全てが電通の事業領域です。アイデア次第で無限の可能性を持つのが、電通のビジネス。広告という枠やメディアの壁、国境までも自由に越えて、 昨日まで無かったアイデアで人の心に響くベストなソリューションを生み出していきます。「アイデアで世の中を動かしたい!」「自分の夢ややりたいことを、電通で実現させたい!」「人の心を動かす仕事をしたい!」と考えている多くの方々をお待ちしております。
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