人事のホンネ

凸版印刷株式会社

2015シーズン【第7回 凸版印刷】
ベンチャー気質もつ人求む! 選考では「感じる力」を見たい

凸版印刷 人事労政本部 人事部長 萩原正敏(はぎわら・まさとし)さん

2013年12月06日

■昨年の採用実績、職種
 ――2013年度入社の採用実績を教えてください。
 営業・事務系、技術系、デザイン系という三つの職種があり、合わせて210名程度です。内訳は営業・事務系約100名、技術系約100名、それ以外が約10名です。男女比は、女性が全体の35%。技術系は理系の大学院卒が8割です。特に院生の方が学部生より有利というわけではなく、応募のほとんどが院生なので、自然とそうなっています。

 ――それぞれの職種の内容は?
 技術系の職種は、研究開発職や工場などの生産技術開発職が中心です。営業・事務系職種は、営業部門への配属がメーンです。私たちの営業というのは、何か、もともと出来上がっているものをお客様にお届けする仕事ではなく、今のマーケットの中でお客様が市場から求められているものは何か、どのような提案をすれば満足していただけるか、徹底的に調べ、考え、自分なりのアイデアを乗せて提供する仕事なので、営業職でも企画的な面があります。デザイン系職種の採用者は企画部門に配属していました。

 ――デザイン系は、専門的な勉強をしている学生の応募が多いのですか。
 印刷物をつくる会社ですから、専門のデザイン・クリエイティブに造詣が深い人に来てもらうために別枠で採用しています。美大出身者が多いですが、最近はシステムデザイン学科などいろいろな学部学科から応募が来ます。近年のIT化に対応するため、美大に限らずITに強い人を採用しています。12月にスタートした2015年度新卒採用からは、より広くIT・マーケティング・クリエイティブの素養を持った人を集めるため、デザイン系採用を「企画職採用」と改め、募集職種を再編しました。人気職種なので倍率は相当高いですね。ただ、企画は営業と密接に絡む仕事ですから、営業職の中で企画的な業務を担う人もいるし、境界線は微妙です。入社後に企画職から営業職への異動や、逆のケースもたくさんあります。

 ――内定者や新入社員で、男女の違いはありますか。
 面接など選考している際の第一印象としては、女性の方が明らかにパワーがありますね。学生時代の過ごし方一つとっても、女性の方がいろいろ勉強しているなという印象です。応募者の比率は、男女半々くらいですね。

 ――ということは、結果として男子を多く採っているということですね。
 実際に仕事をやり抜くイメージが出来るかなど、面接ではじっくりと見るので、最終的な評価は第一印象と変わることがあります。バランスをとることはありますが、男女の割合を決めて採用しているわけではありません。

たとえば「留学」だけでなく、何を感じ何を身に付けたのか書いて

■選考の流れ
 ――2015年度新卒採用の大まかな流れを教えてください。
 12月1日にWEBエントリーの受け付けを始め、自宅のPCでWEB適性検査を受けてもらいます。並行してセミナーなどを開きます。その後、エントリーシート(ES)を受け付け、4月1日以降に2~3回面接があります。募集職種によって選考フローは異なります。

 ――もともと紙が主体の印刷会社ですから、ESはWEB上ではなく、紙に手書きですか。
 紙に書いて郵送してもらっています。内容は、志望理由は何ですか、どんなことにチャレンジしたいですか、など一般的な質問が多いですよ。数年前、書く量を増やしてA4サイズ3~4枚にしたら内定者から「あれはきつかった」と大変な不評だったので、従来の2枚程度に戻しました。

 ――面接はどんな形式ですか。
 これも職種によって異なるのですが、営業職では、2014年新卒採用の1次選考は6~8人でのグループディスカッション(GD)でした。面接官はディスカッションをする様子を見て、最後に少し質疑をします。

 ――どんなテーマで行うのですか。
 ソフトなものが多いですね。学生ならではの議論が盛り上がりそうなものから、社会人になったらこういう場面に直面しそうというものまで。どんな風に考えられる人なのかを見ます。一つの班に社員が2名付いて、質疑も含めて1時間から1時間半くらいかけます。
 2次は1対2の個人面接。学生1名に対し、面接官は人事総務系の社員と、営業部門や配属予定職場の社員の組み合わせ。課長クラスで時間は30分くらいです。
 3次が最終面接で、面接官3対学生3の集団面接です。面接官は、役員と人事部長の私と、採用の課長です。時間は45~50分くらい。最終面接を3対3にしているのは時間的な制約が理由です。学生同士を比べるためではありません。

 ――それぞれの面接では、主にどんなところを見ているんですか。
 グループディスカッションでは、コミュニケーション能力や論理的に考えられる人か、討論を観察しながら見ます。2次面接は本人にクローズアップして、仕事をやり抜く力があるかを見ていきます。

 ――最初にグループディスカッションをする理由は?
 出来るだけ多くの人に会いたいので、大勢を受け入れるためにやっています。学生同士で話をさせることで、結構いろいろなものが見えてきます。結論を導き出すためにどういうパートを担って、どう対応するか。最後は必ずインタビュー形式で個別に質問します。そこでの受け答えも瞬発力ですよね。ある一定のことは分かります。
 学生から「どんな役割をするといいですか?」とか聞かれますが、関係ありません。さすがにひと言も話さないのは評価のしようがないので、少なくとも自分の何かしらをPRしてほしい。司会は上手くいけばプラスですが、逆に空回りしてしまう学生もいます。やると言ったからには責任を持ってやってほしい。

 ――最終面接でも落ちますか。最終のポイントは?
 最終でも落ちます。最終面接で見るのは人物の全体像。どんな能力を持っているか、どういう経験をしてきて、何を感じたのか、私はそこを重要視しています。今の学生はいろんな経験はしていますが、そこから何を感じ取ったのかが大事です。
 学生の本業である勉強をどれくらいやってきたのかも見たいが、学業をPRする学生は少ないですね。では、学業以外で得たもの感じたものは何ですか、ということになりますよね。アルバイトの目的はお金のためでもいいが、その経験からあなたは何を身に付けましたか、というところに関心があります。

 ――学生の体験に「就活目当てじゃないの?」と感じることがありますか。
 ありますし、実際に会って話をすれば分かります。「語学目的」の留学を挙げる人は多いですが、就活目的でESに書くためだけであれば、非常にもったいない。せっかく時間と労力とお金をかけて、別の土地へ行ってきたのだから、「留学」と書くだけではなく、そこから何を感じ、何をつかんできたのか書いてほしい。留学で何かを見てきれいだった、面白かっただけでは足りないんです。活動への主体性など、何かつかんできた子は面白いですね。

 ――凸版印刷を受ける学生のタイプってありますか。
 一概には言えません。凸版印刷は事業分野が非常に多岐にわたり、広告に近い仕事、出版印刷、パッケージ包装材関連、エレクトロニクス部材、半導体関連部材をやっている部門などがあり、会社自体にいろんな人がいる。受けに来る人もいろんな人がいますね。

 ――では、ほしい学生像は?
 「コミュニケーション能力」と「感性」「感じる力」がある人。我々の仕事は、決まったものをつくってお客様に届ける仕事ではありません。お客様と一緒にお客様が求めるものをつくっていくのが仕事ですから、「感じる力」をすごく大事にしたい。お客様がほしがっているものは、お客様自身もイメージのレベルで伝えることが多い。それをどう形にしていくか、それが「感じる力」であるのかなと。
 メディア関連やプロモーションの事業も行っている会社なので、好奇心も大切です。お客様の課題解決のためには、トレンドを先取りして提案していかなければならず、それに精通していなければ納得してもらえない。「多くを感じる力」を持つには、多くのことにアンテナを張っていなければいけないんです。どうやって感じ取るか、どれだけのことを感じ取れるのかもありますが、まずは感じることが大事です。だから、外に出て行くのが自然な人。そういう学生が合っているかなと思います。
 あと、どんどん仕事の業態が変わっているので、自分たちでビジネスをつくれるような主体性、バイタリティー、柔軟なものの考え方を備えた人が必要です。凸版印刷というフィールドを使って、自分のアイデアで何かを始めてみたい人を採りたい。社内でいろんな仕事を勝手につくっていく会社なので、ベンチャーっぽくチャレンジしてくれる人に来てほしいですね。うちにはベンチャーよりはいろんな基盤があって、歴史も、取引先もある。そういった土台を使って新しいことができます。

手書きのES、人に読んでもらおうと思って書いているか

■インターンシップとビジネスコンテスト
 ――インターンシップについて教えてください。
 公募制で8月終わりから9月の上旬に1週間程度で実施しています。2つの日程で営業職・技術職・企画職あわせて約60人、全体で110~120名程度が参加しています。たくさんの応募をいただくので、参加者は書類選考と面接で選抜しています。

 ――インターンを受けて内定した人はいますか。
 2013年度は内定者の1割弱くらいがインターン経験者でした。

 ――インターンシップを経験した学生は違いますか。
 インターンに参加したからといって選考で有利になることは一切ありません。ただ、インターン参加者は仕事への理解度が明らかに違います。当社のインターンシップでは、実際の職場で体験をします。営業職であれば、実際に当社の営業と共に得意先訪問までしてもらうので、短い期間とはいえ、リアルな体験ができる。特に凸版印刷の仕事は、なかなか外からイメージしにくいので、中で経験するかしないかでは仕事に対する理解度が大きく違うと思います。実際の仕事を垣間見た上で、「違うな」と思った人は採用がオープンしても選考を受けに来ないですが、受けに来る人は、当社に入ったらどんなことができるかイメージが明確なので、自分が社会に出て実現したいことと合致している場合は、志望動機などもリアリティがあって、もっと話を聞きたくなりますね。

 ――ビジネスコンテスト(ビジコン)も実施しているそうですね。始めた経緯とインターンとの違いを教えてください。
 インターンシップは実習型で、職場を見て理解を深めてもらいます。得意先まで同行し、がっちりと体験してもらう。そこを学生には評価してもらっています。一方でビジネスコンテストは、そもそも凸版印刷に関心を持っていなかった学生も含め、知名度を上げたい。就活生に限らず1年生から4年生まで参加できるので、広く会社の認知度を上げて、今まで知らなかったという人でも凸版印刷の新しいソリューションを知って興味を示してほしい。それがのちのち何かにつながるかなというのが本音です。当社はあらゆる業界のあらゆる企業がお客さまなので、トッパンファンを増やしていくことは、全社的なミッションでもあります。

 ――いつ始めたのですか。
 今年で3回目です。応募は自由で、定員はありません。11月のプレゼンイベントに5組まで参加できます。我々が期待した通り、トッパンを知らなかったけれど面白そうだからと応募してきた学生もいます。だから、採用選考への応募率はインターンより低く、ただ単にビジネスコンテストに興味があったからという人が多い。まずは知ってもらうのが目的です。事務局は人事部ですが、運営主体は企画部門で、審査でも企画部のプロが見て、ダメ出しをすることもあります。審査員長は企画部門の役員ですからね。多額の賞金が出るようなコンテストではないですが、参加した学生にとっては、マーケティングや新事業開発を生業としている社会人から本格的なフィードバックをもらえるという点で有効だと思います。また、このコンテストでは、グランプリをとった学生には、凸版印刷の得意先にプレゼン提案ができるという特典を用意しています。

 ――ビジコンで優秀な学生を採用選考で優遇することはありますか。
 基本的にはありません。ただ、そういうアイデアを持っているだけでなく、貪欲な学生たちなので、本選考でもさらにいろいろ調べたり、自力で勝ちあがってきますね。

 ――では、ビジコン参加者で、結果的に内定した学生はいますか。
 2014年度の内定者に2人、ビジネスコンテストの参加者がいます。1人は去年のグランプリをとった学生です。最終審査でプレゼンした企画は実際に関係者にプレゼンし、事業化に向けて社内の企画部門と揉んで打ち合わせを進めました。貪欲に学ぼうとする姿勢、臆することなく意見を言う度胸などがいいですね。自分たちでビジネスを作っていかないといけないので、そういう人が欲しい。

 ――今年のビジコンはどうですか。
 毎回面白い案が出てくるので楽しみです。トッパンのソリューションを紹介したうえでテーマを与えて、ビジネスアイデアを出してもらいます。学生ならではの視点を生かして提案してきてくれますね。凸版印刷はけっこう若手の意見を組み入れて、何でもやってみたらという感じでやらせてくれます。自分で言うのも何ですが、社会に出て何か新しいことをやってみたいという人にとっては面白い会社だと思います。

■ESと面接について
 ――エントリーシートは誰が見ていますか。
 採用チームメンバーで手分けして読んでいます。

 ――ES評価のポイントは?
 手書きなので、人に読んでもらおうと思って書いているか、というのが第一のポイントです。あまりにも雑なものは読めないですね。空欄が多すぎるものもNG。あとは、設問に対する回答になっているか。手書きなのでコピペは出来ないのですが、中には明らかに他社宛の内容を書いてくるものもあります。

 ――手書きのESにこだわる理由はなんですか。
 思いのたけが見えます。どれぐらい企業研究して書いたかが分かります。もちろん、志望度だけで本人のポテンシャルは測れないので難しいのですが、ある程度は、弊社への関心の度合いが見えると思っています。学生の負荷を考えると悩ましいのですが、手書きの紙で見えてくるものは大事にしたい。

 ――凸版印刷は多様な事業を展開していますが、どんな志望動機が多いのでしょう?
 広告会社と同じことをやれると思っている学生が多いのですが、これは半分正解で半分不正解です。凸版印刷はメーカーなので、広告とはやっぱり全然違う。各種セールスプロモーションの分野では、広告会社と競合することが多々ありますが、最終製品までつくるのが弊社の特徴です。セールスプロモーションに関心を示してくる学生は多いですね。一方で、昔からいる「本が好きなので出版関係の得意先を担当したい」という学生もいます。 
 さらに、食品やトイレタリーのパッケージもつくるので、食品会社などと併願してくる学生もいますね。食品業界は学生にとても人気がありますし、お菓子など身近な商品のパッケージを企画して一緒につくり上げていくこともあるので、そういう仕事ができるという点は魅力になっているのかもしれません。黒衣役ですが、自分の手で世の中に物を出していける点が学生の心をつかむのかなと思います。

 ――食品業界のほかに内定者が競合する企業は?
 メーカーのほか、通信系なども最近増えていますね。弊社ではWEBキャンペーンの開発などシステムも含めたサービスも展開しているので、IT系と併願する学生もいます。
 通信のSE希望の方も併願して来ますよ。例えばギフトカードのASP(Application Service Provider)サービスを他社と一緒に開発していて、顧客データを預かる仕組みづくりも含めて提供しています。
 他にも例えば、佐賀県の教育システムのICT化を進めています。こういった分野では、理系で情報系専攻などの学生にとって、専門知識を生かして自由な領域で新しいビジネスを構築していく面白みはあると思います。

 ――IT系の業務は増えていますか。
 多いですよ。逆に言うと、紙だけで成り立つ事業は少なくなっています。最近はスマホと絡めたキャンペーンも多い。ですから、ITの「スキル」とまで言わずとも素養や知識は、技術職、企画職、営業職には必須ですし、もちろん事務管理職種でも求められます。

顧客は国内に2万4000社、これだけのステージはなかなかない

■ずばりホンネ
 ――選考に大学名は関係ありますか。説明会はどういう大学に行きますか。
 大学名は関係ないですね。学校で判断はしません。説明会はOB・OGがいる大学に行きます。大学で選別するわけではありませんが、これだけの人数を採用しようとすると、毎年それなりの数が入社している実績校を重視せざるを得ません。

 ――リクルーターや、社員が大学に出向くことはありますか。
 理系では、OB・OG社員が研究室訪問をしています。営業職も、学内セミナーに行くときはできるだけOB・OG社員を同行するようにして、親近感を持ってもらえるよう努めています。

 ――理系の場合、採用実績のある大学の研究室ごとの推薦枠ってあるのでしょうか。
 ありますが、減ってきました。今は研究室との付き合いによる推薦枠と自由応募が半々くらいですかね。一生懸命自由応募してくる学生が増えています。推薦だと、決まったら入社しなければなりませんからね。

 ――大学のキャリアセンターに社員名簿を提供したり、人事部に問い合わせてきた学生にOB・OG社員を紹介したりしていますか。
 個人情報の関係があるので名簿の提供はしていません。学生からの問い合わせも受けますが、対応できる範囲は限られますので、紹介はしていません。自力で探すのも大事な活動だと思います。

 ――大日本印刷(DNP)と両方内定した場合は、かなり引っ張り合いになりますか。
 特に強引なことはしないです。会社説明会でも「DNPさんとの違いは何ですか」とよく質問をされますが、ホームページなどを見比べてもらえれば分かるとおり、事業領域は良く似ていて、同じくらいの規模で、同じぐらいの売り上げなので、ご自身の目で見て、どっちが自分の肌に合いそうか、選んでくださいという答え方をしています。でも、当然まったく違う会社ですので、自分で違いを感じ取ってもらうのが一番です。

 ――業界1位(DNP)と2位(凸版印刷)の差はあまりないと。
 両方内定してDNPさんに行く人もいれば、うちに来る人もいます。社風や、何か感じるものがあって選んでいるのでしょうが、それが何かと我々が言葉で表現できるものではないですよね。

 ――では、学生に対してアピールする凸版印刷の売りは何でしょう。
 若手社員の言うことを聞く文化、オープンな社風が売りです。トップダウンではなくボトムアップで意見を吸い上げることが多いので、上司をちゃんと説得さえ出来ればゴーサインが出る会社です。自由にアイデアを形にしていくことが認められているので、ベンチャースピリットも生かせる土壌だと思います。日本国内でお客様じゃない会社はないくらい非常に広い顧客を持っています。2万4000社以上あります。これまで培ってきたノウハウを使って、自分のアイデアを活かそうと思ったら、これだけのステージはなかなかない。そういう会社だということを知ってもらう努力は必要だと思っています。

 ――どうやって学生に伝えていますか。
 ビジネスコンテストもその一つです。就活目線とは違う場面でPRできますから。今年は「起業家スーパーカンファレンス」という起業を考えている学生を集めたイベントで、ビジネスコンテストの告知をしました。通常はベンチャー企業を立ち上げた経営者が学生に起業の良さを伝えるイベントに、突然トッパンのような大企業が行ってPRしたわけです。「トッパンみたいな会社でもこういうことに興味があるんですね」「面白そうですね」と、学生からも反響がありました。

■研修、配属、やりがいについて
 ――入社後の研修について教えてください。
 全国の新入社員が集まって、3週間くらい全体研修をします。合宿もあって、社会人としての心構えや会社全体を知る研修です。その後事業部に配属になり、その先は、いろんなパターンがありますね。例えば事業部ごとに工場実習などの研修を行ったり、そのまますぐに職場に配属されることもあります。研修を経て、夏から秋ごろに職場に配属されるのが基本的な流れです。
 「ファーストキャリアプラン」という育成制度があり、入社後3年間はじっくり時間をかけて育成します。OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)がメーンですが、「ブラザー」「シスター」という先輩がつきます。習うより慣れろの精神で、いきなり担当得意先を任されることもありますし、製品についての広範な知識が必要な分野では、まずは内勤での営業サポートをし、その後一人立ちする職場もあります。営業職は、企画部門に提案資料の相談をしたり、生産管理と制作スケジュールの調整をしたり、新商品であれば工場に新ラインを構築するために技術と打ち合わせしたり……。多くの関係者を巻き込んで仕事を進めていく必要があるので、全体的に学んでいけるようにします。また、節目節目で振り返りと今後どうしていきたいかを確認するフォローアップ研修があります。これとは別に、専門的な知識を得る研修もいろいろあります。

 ――配属にあたって、希望はかなうのですか。
 希望通りは7~8割ですかね。事業所は東京が比較的多いので在京地区への配属が多く、地方配属は3割くらい。計画的に地方に配属して、一定の期間でローテーションして在京に異動する制度もあります。海外勤務もありますが、1年目はありません。海外駐在は会社全体で160~170名、「トレーニー制度」といって海外現地法人に2~5年目くらいの若手を1年間研修で派遣する制度を3年前に始めましたが、本格的に駐在するのは10年目くらいの中堅が多いです。

 ――採用について抱えている課題や今後の方針は?
 各社の競争は激化しています。ベンチャー的気質を持った人を求めていますが、他の会社もそういうバイタリティーのある人を求めていると思うんですね。その中で凸版印刷に適性があって、志望してくれる人を採るのは至難の業だと思います。だから出来る限り広くアプローチしていく。ベンチャー志向の人が希望の職種に配属されないリスクを減らすよう、職種別に応募出来るように変えていきたいとも考えています。

■萩原さんの仕事について
 ――なぜ、凸版印刷を志望したのですか。
 私の家は、製本業をやっていました。戦争で廃業しまして、父親は別の製本業に行き、叔父と叔母は出版社で働いていました。ずっと本との関係が深く、書籍周りの仕事をしたいなと思っていたんです。それで印刷会社を選びました。
 ただ、時代は変わりましたね。違う会社になったようです。入社した頃はペーパーメディア中心でしたから。

 ――お仕事の経歴と印象に残っている仕事を教えてください。
 ずっと総務人事系です。若いときから、仕事を任せてもらってきました。思い出深いのは、「カートカン」という紙製の飲料容器の仕事です。凸版印刷を含む3社合弁の事業だったのですが、なかなか上手くいかず1社がやめることになりました。我々もリソースを相当つぎ込んでいましたし、撤退となると従業員をどうするのかという非常にデリケートな問題に発展します。従業員に対する責任を感じるとともに、商品に対する愛着もありました。そこで私が各方面を説得し、最終的には凸版印刷が全て引き取ることになりました。
 だからカートカンには愛着があるんですよ。あのとき頑張らなかったらどうなっていただろうと思います。他ではつくれないので国内は独占です。容器をつくって中身の充塡(じゅうてん)までトッパンでやっています。苦節十何年、最近はブランド力が認められ、ようやく伸びてきて、機能性飲料の容器などで使われています。メジャーなブランドでの採用も増え、セブンイレブンのプライベートブランド(PB)商品にも採用されました。

 ――凸版印刷の仕事の厳しさとやりがいについて教えてください。
 厳しさは、担当し預けられた仕事から逃げない、逃げられないということですね。我々の会社は若いときからいろんなことを経験してもらうし、やりたいことは任せます。その分、やりきる意志が必要なんです。
 採用案内の表紙には「原点が、ある。限界は、ない」とあります。この「原点」というのは印刷テクノロジーです。凸版印刷は大蔵省印刷局の技術者が立ち上げた会社から始まりました。いろんな事業領域に広がってきましたが、ベースは印刷を核に培った印刷テクノロジーです。「限界は、ない」は、自分で限界を決めるな、やろうとすればいかなる仕事もできる、その代わりやるんだったら絶対逃がさないからね、ということです。

みなさんに一言!

 就職活動をしてみて初めて分かる会社がいっぱいあると思います。活動して、自分の目を開いて、自分がそこで何をやりたいのかよくよく考えてほしい。入社3年で新卒の30%が離職すると言われています。なんでそうなのか。本人の辛抱が足らんというのもあるでしょうが、自分がどういうフィールドで何を実現したいのか考えて入った会社であれば、もう少し続くのではないかと思います。就職活動はなかなか思い通りにはなりません。意に沿う会社があれば、沿わない会社もあるでしょう。でも、少なくとも3年間はそこで頑張れ、そこでやっていることを好きになってほしいと伝えたい。それでも違うのであればしょうがない。規模の大小や知名度に関わらず、面白い会社はたくさんあります。この機会にいろんなものを見て、自分は何がしたいのか、腹に落ちるまでに考えてください。

凸版印刷株式会社

【マスコミ・出版・印刷】

 1900年の創業から100年を超える歴史を経て、原点である印刷技術はマーケティング、IT、クリエイティブ、多彩な加工技術と融合し、世の中の幅広いニーズに応える「印刷テクノロジー」へと進化をとげました。  今では、書籍、証券・カード、各種セールスプロモーション企画・運営、食品パッケージはもちろん、スマートフォンの電子部品や太陽電池の部材、世界トップシェアのハイバリアフィルム、電子書籍、電子チラシ、そして社会に役立つ研究開発まで、幅広い分野に進出しています。