2014年07月24日

繰り返されるガザの悲劇…新聞で現代史を知ろう

テーマ:国際

ニュースのポイント

 パレスチナ自治区ガザでのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘により、たくさんの市民が犠牲になっています。8日の戦闘開始以降のガザの死者数は684人、イスラエル兵も29人が死亡しました。ガザではなぜ何度も悲劇が繰り返されるのか。今日の記事は、パレスチナ問題を中東現代史を含めて解説しています。まずは関心を持つことから始めましょう。

 今日取り上げるのは、国際面(10面)の「ガザ 繰り返される悲劇なぜ」です(わかりやすいように記事の順番を入れ替えました)。

 記事の内容は――①ユダヤ・アラブ対立の根源と経緯=19世紀に欧州などで迫害されたユダヤ人が、旧約聖書に書かれた「祖先の地」に国家を再建しようという運動を起こしてパレスチナに移住し始め、もともと暮らしていたアラブ人(パレスチナ人)との衝突が始まった。オスマン帝国が支配していたパレスチナは、第1次世界大戦を経て英国の委任統治領になり、1948年にユダヤ人国家イスラエルが建国された。4次にわたる中東戦争でイスラエルは領土を広げ、ヨルダン川西岸とガザがイスラエルに占領された。多くのパレスチナ難民も生まれた。
 ②今回の戦闘の発端=6月にイスラエル人少年3人が誘拐され遺体で見つかった。イスラエルはハマス(イスラエルの占領への抵抗組織で、ガザ地区を支配している)を犯人と断じて数百人のパレスチナ人を逮捕。7月にはパレスチナ人少年がイスラエル人に誘拐・殺害される事件も起き、怒ったハマスがガザからイスラエルへのロケット弾攻撃を始めた。イスラエル軍は圧倒的な軍事力で報復し事態がエスカレートした。
 ③国際社会の対応=イスラエルの第一の味方は巨額の軍事支援をしている米国。米国のユダヤ系社会は米政府に政治的な影響力を持つ。米国にとってイスラエルは安全保障上も重要な同盟国であり、パレスチナ問題やガザの紛争では常にイスラエル寄りの立場をとる。アラブ諸国は基本的にパレスチナを支援する立場だが一枚岩ではない。エジプトはイスラエルと国交があり、パレスチナ紛争の仲介をしてきた。今のシーシ・エジプト大統領はハマスを敵視している。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 空はつながっているのに/どうしてかな/どこまでが平和で/どこからがせんそうなんだろう

 沖縄慰霊の日の追悼式で、石垣市の小3増田健琉(たける)君が読み上げた詩です。13日の1面コラム天声人語は、この詩を書き出しに、中東などの惨劇を綴っています。2年前にシリアの内戦を取材中に銃弾に倒れたジャーナリスト・山本美香さんは早稲田大学の学生に向けたメッセージにこう書きました。

 「世界の安全は日本の安全につながります。人道的な見地からも、目をそらしてはいけないことがたくさんあるはずです。それを『仕方がないこと』『直接関係がないこと』と排除してしまうのでは、ジャーナリズムの役割を果たしているとはいえません。そうした広がりのない視点と態度は、形を変えながら私たち自身にかえってきます。内外問わず、目が届きにくい、忘れられがちな問題を掘り起こしていくことも、メディアの責務としてあります」

 世界はつながっています。たとえば中東情勢が不安定になると、石油の値段が上がり、いずれは私たちの生活に影響します。遠い国の出来事が企業活動やみなさんの就活にも関係するのです。私たちは、すぐには紛争解決の役には立てないかもしれません。でも、まず知ることが第一歩です。

 今日の記事には、用語解説「コトバンク」とのリンクをいくつか付けました。知らない言葉はコトバンクでチェックしてください。中東紛争の基本的な構図については、2013年9月12日の今日の朝刊「3分で読める中東現代史」でも書きました。こちらもどうぞ。

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