2014年06月10日

外国人旅行者のハート♡をつかむ3つの視点

テーマ:経済

ニュースのポイント

 今年の4月、44年ぶりに、外国人旅行者が日本で使ったお金が、日本人旅行者が海外で使ったお金を上回りました。金額にして177億円の黒字です。外国人観光客が急増し、宿泊や買い物など積極的な消費活動をした結果です。その背景とともに、こういった局面では、どんなビジネスチャンスがあるのか考えてみましょう。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「アジア客狙いビザ緩和/4月旅行収支 44年ぶり黒字」です。
 記事の内容は――外国人旅行者が日本で使ったお金から、日本人旅行者が外国で使ったお金を差し引いた4月の「旅行収支」が黒字になった。財務省が発表した4月の国際収支(速報)によるもので、黒字は大阪万博が開かれた1970年7月以来、約44年ぶり。タイやマレーシアからの観光客へのビザ発給の要件を緩めるなどの政府の取り組みの効果で、日本を訪れる外国人が急増しているためだ。政府はさらに成長を続ける東南アジアの富裕層を呼び込むために、いっそうのビザ緩和を検討、東京五輪がある2020年までに外国人旅行者の数を年間2000万人まで増やすことを目標に掲げている。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 古い言葉ですが、職場に近いこともあって、「銀ブラ」(銀座をブラブラすること)が大好きな私。この前もデパートの靴売り場で、店員が流暢な広東語や韓国語で、外国からのお客様に商品の説明をしているのを見かけました。 
 4月に日本を訪れた外国人旅行者の多い国を順番に並べると、台湾の25万7900人がトップ。以下、韓国、中国、タイ、アメリカと続きます。トップ5には入りませんでしたが、急増ぶりが目立っているのは、8位フィリピンの2万9700人(前年同月比129.5%増)、9位マレーシアの2万5200人(同71.2%増)です。急増の背景について、日本政府観光局は、2013年7月以降のビザ緩和に加えて、日本に就航するLCCの便数が増えたことや、日本の「お花見シーズン」を積極的にPRした成果と分析しています。

 さらにアジアからの旅行客を取り込むためにはどうすればいいのでしょうか。3つの視点から考えてみます。

 1つめが、イメージ戦略です。国であれ、店であれ、まず興味をもってもらうことが肝心です。これに当たるのが、官民ファンド「クールジャパン機構」が取り組んでいる事業です。中国に日本文化を売り込むショッピングセンターを作ったり、東南アジアで、日本のテレビ番組やアニメ、映画を流す会社に出資したり。シンガポールでは、日本食レストラン街をつくる事業も進んでいます。

 2つめが、利便性です。日本に興味をもった外国人にとりあえず1回来てもらうための作戦、それがビザ緩和であり、LCCの増便や、ショッピングにおける免税といった魅力的な環境です。10月には免税対象品が化粧品や食品に拡大されます。外国人客の購買パワーがますます存在感を増すでしょう。

 そして3つめが、リピーター客になってもらうこと。いかに旅行者に快適に過ごしてもらうか、です。中でも今後、大幅な増加が見込まれるのが、イスラム教徒の多いマレーシアやインドネシアからの旅行客です。そのためのインフラ整備が急速に進んでいます。大手のホテルチェーンや成田空港では6月から、レストランで「ハラール認証」(宗教的理由から豚や酒などの食材を使わないなど)を得た食材を使用したメニューを提供するなど、新たな取り組みが進んでいます。
 「ハラール」については2014年2月19日の「今日の朝刊」―「ハラールって知ってる?」にも詳しく紹介されているので、一度目を通しておいてください。 

 観光や小売り業界を志望する人でなくても、「外国人観光客をいかに増やすか」、あるいは「日本をいかに活性化させるか」というテーマは「課題解決型」のグループディスカッション(GD)や、小論文などで問われやすいテーマです。ぜひ、現状を踏まえたうえで、自分ならではの意見を考えておきましょう。 

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