ニュースのポイント
恋人を選ぶとき、何を重視しますか? 長く付き合うなら、気が合う人がいいですよね。就活も同じです。芥川賞受賞作『ポトスライムの舟』など働く人を主人公にした著作が多い津村記久子(つむら・きくこ)さん(36)が合同企業説明会の会場を訪れました。自らの就活失敗体験も交えて就活生に「私にとっての優良企業探し」をアドバイスします。
今日取り上げるのは、31面の「ニュースの扉/津村記久子さんと探る就活/世界への入り口 知名度より社風」です。
記事の内容は――津村さんは2月8日に大阪市で開かれた合同企業説明会「就職博」(学情主催)を訪れた。就活の現場は15年ぶり。学生に囲まれる企業ブースもあれば、ほとんど集まらないブースも。鍵は知名度や業種のようだ。津村さんが最初に就職したのは、目指していた出版業界に近い印刷会社。だが、上司のパワハラが原因で10カ月で退社。社是(しゃぜ)は「会社の幸せは、社員の幸せ」だったが、社内は余裕がなく、かばう雰囲気はなかったという。次に勤めたのは全く縁のなかった建設関係だったが、適度に距離のある人間関係が居心地よく、小説家として脚光を浴びた後まで10年半働いた。
津村さんは就職博の会場を縦横無尽に回り、会社の様子を知るための質問を繰り返した。「どんな学生がほしいか」「社是は」。一方で知名度の高い大企業や「豪華なプレゼン」を展開する企業、「可能性を広げる」「感動を与える」といったあいまいなキャッチフレーズを掲げた企業には「実力が見えにくくなる」と足を止めなかった。注目したのは派手な看板のないガス関連機器を売る会社。お昼どきに「今食事中」と書かれた紙が一枚置かれていた。戻ってきたベテラン社員は「良くも悪くも『ゆるい』会社」、入社2年目の社員も「学生時代の友人の入った会社と比べても一、二の居心地の良さだと思います」と言う。「私が就活生なら、この企業を受けてみる」「給料は高くないかもしれない。みんなにとって優良企業でなくても、私には合う」と津村さん。「就活は絶対やったほうがいい」「これほどいろんな世界への入り口を見られる機会はない。壁にぶつかったら『やりがい』ではなく『ここだったら働けるかも』という形で考えてみてもいいかも」