(写真・オープンAIのサム・アルトマンCEO=2025年2月3日/写真、図版はすべて朝日新聞社)
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(写真・オープンAIのサム・アルトマンCEO=2025年2月3日/写真、図版はすべて朝日新聞社)
AIの開発には安全性の確保が必要
2015年にNPOとして設立されたオープンAIは、「金銭的な見返りを得る必要性」に制約されず、「人類の全ての人の恩恵になる汎用(はんよう)人工知能(AGI)の構築」を進めるという理念をかかげていました。AI=人工知能は、自ら学習、理解して行動することができるため、その発展の方向性によっては人類の能力を超え、兵器に転用されたり、人類による制御ができなくなったりすることも考えられます。そのため、AIの開発にはなによりも安全性が求められます。利益獲得を目的としてAI開発がすすめられた場合、安全性が確保できなくなる危険性は否定できません。オープンAIは自社サイトで、設立時の公約として「公開しても安全であり、公共の利益となると思われる場合には、当社の研究とデータを公開すること」を掲げています。
しかし、AIの開発には巨額の費用が必要です。2019年にオープンAIは営利企業の子会社を設立し、NPOが営利企業を管理する体制となりました。営利企業の株主に対しては利益配分に上限を設けるなど、利益の追求には一定の歯止めがかかるようになっています。
営利企業化を推進
しかし、2022年にチャットGPTがリリースされ、他のIT大手が続々と生成AI開発に本腰を入れ始めたことから、アルトマン氏は立場を変えていきます。さらなる投資を集めることが必要となり、2024年12月に営利企業をNPOの支配から外すという方針を発表。巨額の投資ができる体勢への移行をはかろうとしました。マイクロソフトや日本のソフトバンクからも資金を調達しています。
(写真・米オープンAIの開発者会議で話すアルトマン氏=2023年11月)
中国との開発競争に遅れの懸念も
この動きに、反発が相次ぎます。共同の創業者だったマスク氏は安全性や公共の利益をないがしろにしているとして、オープンAIやアルトマン氏らを提訴。さらにはオープンAIの買収まで提案します。ほかにも、地元州政府やAI研究の権威である学者などが営利化に反対しました。結果、オープンAIは営利企業化の断念に追い込まれたというわけです。オープンAIは、今後もNPOが営利企業を管理する体制を続けることになり、アルトマン氏は「オープンAIは普通の企業ではなく、今後もそうはならないだろう」と述べています。
ただ、今回の決定で開発のスピードが鈍り、中国との開発競争に遅れをとるのではないかという心配の声もあがっているようです。中国は2030年までにAIの世界的リーダーになるという計画をかかげ、2023年に設立された「ディープシーク」をはじめ中国の大手IT企業もAIに投資をすすめています。権威主義国家である中国でのAI開発は、自国民の監視やサイバー兵器が優先されかねません。米中の主導権争いから目が離せなくなっています。
AI制御するには「倫理」が必要
身近な例では、チャットGPTの新機能により「となりのトトロ」などでおなじみのスタジオジブリが描いたような絵を生成できるようになり、ジブリ風のイラストがプロパガンダにつかわれるという懸念の声があがっています。現状、色調や線の描き方を似せる程度では違法とはならず、どこからが違法となるかは裁判所がケースごとに判断することになるそうです。法律や社会制度に頼ることが難しいため、いまAIをつかうときには「倫理」が求められるようになっています。さまざまな企業がAIの「倫理原則」や「倫理指針」を策定し、倫理の観点に基づいて意思決定をしようとしています。
これから社会に出て行くみなさんにとって、AIは必須教養であり、ビジネスチャンスであり、生活をよくするツールとなるでしょう。そのAIの進化が何によってもたらされているか、今後AIを使うときにどんなことに気をつける必要があるのかを知ることも、必ず押さえておくべき必須教養となりそうです。スピードがとにかくはやい業界ですので、日々のニュースをしっかりチェックしておくと今後の役にたつでしょう。
(写真・「ジブリ風」にプロフィル画像を変えたアルトマン氏のX=ネット上からスクリーンショット)
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