2023年04月07日

話題の「チャットGPT」ってESも書いてくれるの? 功罪を知ろう【イチ押しニュース】

テーマ:科学技術

 対話型AI(人工知能)「ChatGPT(チャットGPT)」が、ニュースに登場しない日はないほど注目を集めています。パソコンで質問を入力すると、膨大なデータをもとに、ほんの数十秒で人間が書いたような自然な文章で回答するシステム。多言語対応で無料で誰でも使えるため、世界中で急速に広まっています。グーグルに代表される従来の検索エンジンと決定的に異なるのは、個別の質問に具体的に文章で答えてくれることです。すでに活用している人も多いと思います。極めて便利なツールですが、個人情報の漏洩(ろうえい)や誤った情報が含まれるなど課題も多く指摘されています。米国では、リポートや課題にチャットGPTを利用する学生が増え、利用を制限する大学も出ています。えっ、ということはエントリーシート(ES)も書いてもらえるんじゃない?と思った人もいますよね。チャットGPTの功罪や注意点、どう付き合っていけばいいのかを考えます。(編集長・木之本敬介)

(写真・2022年11月にChatGPTを公開したオープンAIのサイトトップページ)

そもそもチャットGPTって?

 チャットGPTは、米国の新興企業「オープンAI」が開発した対話に特化したAI。2022年11月に無料で公開されました。オープンAIにはIT大手マイクロソフトが多額の投資をしており、グーグルがシェアを握る「検索エンジン」に代わる技術として注目されています。質問を入力すると、人間との会話のように自然な回答が返ってくるチャットボット(自動応答システム)で膨大な文章データをもとに学習し、文章をつくりだせる大規模言語モデル「GPT-3.5」をベースにしています。日本語でも使えます。

 オープンAIは3月、最新の言語モデル「GPT4」を公開。マイクロソフトは2月、パソコン向けの基本ソフト(OS)ウィンドウズ11」に、チャットGPTの技術を使った検索エンジン「Bing(ビング)」を搭載すると発表し限定公開しました。LINEもチャットGPTを活用したアプリ「AIチャットくん」をすでに公開しており、ログインが必要なチャットGPTより手軽に使えます。GPTに対抗して、グーグルは対話型AI「Bard(バード)」を、メタ(旧フェイスブック)も「LLaMA」を近く一般公開すると発表するなど、開発競争が激化しています。

AI弁護士、AI答弁……

 実際に業務に活用する例も。弁護士がウェブ上で無料相談に応じる「みんなの法律相談」を運営する弁護士ドットコムは今春から、チャットGPTを使った新たな法律相談サービスを始める方針です。法律に関する質問に自動で回答するサービスで、弁護士が答えるよりすばやく回答が出る利点があります。過去の相談をもとに答えるので、最新の法律や判例を十分に反映できなかったり間違った内容になったりする懸念もありますが、同社の元栄太一郎社長は「法律相談をより身近にして、一部の人しか弁護士に相談しない現状の改善につながり、弁護士の仕事が増える結果になれば」と話します。

 国会ではチャットGPTを使って質疑をする場面がありました。野党・立憲民主党の中谷一馬衆院議員が事前に「法律案に関して、首相にどんなことを質問すべきだと考えていますか」とチャットGPTに尋ね、得られた質問をそのまま読み上げました。岸田文雄首相が答弁した後、中谷氏は事前に「あなたが日本の首相ならどう返答するか」と尋ねて生成した首相答弁案をパネルで示し「首相の答弁よりも誠実でピントが合っているんじゃないか」と評価。首相は自身のほうが「より実態を反映した答弁をしたのではないか」と自賛しましたが、何度問われても同じ答えを繰り返して議論が深まらないと指摘される岸田首相の答弁に一石を投じた形です。

 自民党は、AIに関する政策の司令塔機能を定めることなどを盛り込んだ提言案をまとめ、行政でのAI活用として国会答弁の下書きや議事録の作成などを挙げました。省庁の官僚が大臣の国会答弁作成のために長時間労働を強いられていることが問題になっており、政府に限らずこうした業務の効率化に利用されるようになりそうです。

偽情報と個人情報漏洩のリスク

 ただ、課題もたくさんあります。一つは偽情報を含んだ回答をする可能性です。正しいとは限らないネット上の情報をもとにAIを訓練するので、元の情報が間違っていてもそれらしく正しいかのように答えてしまうとの指摘です。オープンAI自身も、ネット上の数十億の文章をもとに訓練した大規模言語モデルを人間の意見を取り入れて調整していると説明し「不完全だ」と認めています。専門家を交えた会議を毎週開いて改善を進め、「間違いから学び、改善を繰り返していく」としています。もう一つ大きいのは、個人情報や機密情報が漏れる懸念です。イタリア政府は個人情報保護法に違反する疑いがあるとしてチャットGPTの使用を一時禁止しました。ドイツやフランスでも同様の議論が起きています。

 教育の現場では、学生がチャットGPTに宿題をさせる問題が起きています。米国の調査では、18歳以上の学生の89%以上が宿題でチャットGPTを使ったことがあると回答しました。ニューヨーク市の公立学校やフランスの名門大学で利用を禁止するなど、制限も広がっています。

 日本の文部科学省は、学校での活用方法や注意点をまとまた指針を作る方針を固めました。すでに試行的に授業で使われ始めている一方、読書感想文の宿題をチャットGPTに書かせるといったケースも想定されているからです。一律に禁止したり活用を求めたりはせず、回答を批判的に捉えたり、子ども自身の考えを深めたりする道具としての使い方や留意点を示す方向です。

(写真・米オープンAIが公表した安全対策=同社サイトから撮影)

高収入の仕事が奪われる?

 IT業界の当事者からも懸念の声が上がっています。起業家イーロン・マスク氏ら1000人以上のテクノロジー関係者らが、少なくとも今後半年間、最先端のAIの開発を停止するよう求める公開書簡に署名しました。マスク氏が外部アドバイザーを務める米国の非営利団体「フューチャー・オブ・ライフ・インスティテュート」の書簡では、「人間と競合する知能を持つAIは、社会や人類に深刻なリスクとなりうる」として、GPT4より強力なAI開発の半年間の停止を訴えました。

 チャットGPTは私たちの仕事にどんな影響を及ぼすのでしょうか。オープンAIなどが公表した論文は、米国の労働者の約19%が業務の半分以上をより短い時間でこなせるようになる一方、高学歴で高い賃金を得ているホワイトカラーの仕事ほど最新のAI技術の影響を受けやすい、と指摘しています。科学やクリティカルシンキング(批判的思考)などの能力はAIの影響を受けにくいものの、プログラミングやライティング能力は影響を受けやすいと分析。業種別では、会計士、数学者、通訳、記者などの職種がAIの影響を受けやすい一方、調理師や皿洗いなどの業種は影響を受けにくいとの見方を示しました。

 課題も心配も山のようにありますが、対話型AI開発の流れは止まらないでしょう。メリット・デメリットを考えたうえで、どううまく使うかが大切です。

(写真・オープンAIのGPT4のデモ画像では、多くの風船の画像と共に「もしひもが切られたらどうなるか」と質問すると、「風船は飛んでいく」と回答する例が示された)

ES頼んだら…

 私もチャットGPTに登録して、試しに「マスコミに提出するエントリーシートのポイントは?」と打ち込んでみました。30秒ほどでこんな回答が表示されました。

 マスコミに提出するエントリーシートのポイントについては以下のようなものがあります。
1. 現在の状況や志望動機の明確な表現 エントリーシートには、自分がどのような状況にあるのか、なぜそのマスコミに入社したいのかという志望動機を明確に表現することが重要です。
2. 個性的なアピール マスコミ業界は競争が激しく、多くの人が同じような志望動機を持っていることがほとんどです。そのため、自分自身の個性や特徴をアピールすることが重要です。
3. 過去の実績や経験の紹介 自分自身の経験や実績を紹介し、それがマスコミ業界での仕事に役立つことをアピールすることが大切です。また、その経験を通じて得たスキルや知識も示すことが望ましいです。
4. コミュニケーション能力のアピール マスコミ業界においては、コミュニケーション能力が重要なスキルの一つです。そのため、自分自身のコミュニケーション能力をアピールすることが望ましいです。
5. マスコミ業界に関する知識のアピール マスコミ業界には独自のルールや知識があります。自分自身がその業界に興味を持っており、その知識を持っていることをアピールすることが望ましいです。
 以上が、マスコミに提出するエントリーシートのポイントになります。これらのポイントを意識しながら、自分自身をアピールするエントリーシートを作成することが重要です。

 一般論としてまっとうな意見が返ってきた印象です。自分の具体的な経験などを打ち込んで「ESを書いて」と打ち込めば、それなりに整った文章を書いてくれることでしょう。参考に使ってみることは否定しませんが、チャットGPTにとってはしょせんひとごとです。そのまま提出したら、どこかで痛い目に遭いかねないと思います。あくまで参考にとどめ、自分の頭で考えた熱意を込めた表現で勝負してくださいね。

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