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SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)界が揺れています。きっかけは、代表的SNSのひとつであるツイッターが突然、閲覧できる投稿数に制限をかけたことです。ユーザーからは使い勝手が悪くなったと反発の声があがり、その動きを見てかフェイスブックを運営する米・メタ社はツイッターに対抗するサービス「Threads」(スレッズ)を予定から前倒しで提供開始しました。
ツイッターやフェイスブックなど、SNSはいまや重要なインフラとなっています。災害時など、ツイッターによる情報発信を積極的に行っている自治体も多いです。しかし、SNSを提供しているのはあくまで私企業で、そのサービスの動向も私企業としての論理にかんたんに左右されます。言うまでもなく、SNSを含めたインターネットサービスは数カ月単位でトレンドが大きく変わる流れの激しい業界です。どの業界を志望するにしても、インターネットを抜きにビジネスを考えることはありえません。流れに翻弄されないよう、SNSやインターネットサービスについて、いまいちど考えてみませんか。(編集部・福井洋平)
ツイッターやフェイスブックなど、SNSはいまや重要なインフラとなっています。災害時など、ツイッターによる情報発信を積極的に行っている自治体も多いです。しかし、SNSを提供しているのはあくまで私企業で、そのサービスの動向も私企業としての論理にかんたんに左右されます。言うまでもなく、SNSを含めたインターネットサービスは数カ月単位でトレンドが大きく変わる流れの激しい業界です。どの業界を志望するにしても、インターネットを抜きにビジネスを考えることはありえません。流れに翻弄されないよう、SNSやインターネットサービスについて、いまいちど考えてみませんか。(編集部・福井洋平)
ツイッターが読める投稿数を制限
今回の「騒動」の発端を振り返りましょう。7月1日(米東部時間)、ツイッターを所有する起業家のイーロン・マスク氏は自分のツイッターアカウントへの投稿で、ユーザーが一日に読める投稿数を制限したと明らかにしました。課金することで獲得できる「認証済みアカウント」は6千件、未承認アカウントは600件、未承認の新規アカウントは300件に制限したのです。マスク氏は、制限は一時的なもので「極端なレベルのデータ・スクレイピングとシステム操作に対処するため」と説明。スクレイピングとはデータを収集して加工することを意味しますが、マスク氏は最近、生成AIを扱う新興企業などが、システムの訓練に役立つ大量のデータをツイッターから無料で収集しようとする動きにいらだちを示していました。
(ツイッターに関する用語の解説はこちらにまとまっています)
ちなみに閲覧数の上限が緩和される「認証済みアカウント」ですが、以前はなりすましなどを防ぐため、著名人などの申請にもとづいてツイッターが無料で提供し、「認証バッジ」を表示していました。しかし今年4月、ツイッターはこのバッジを著名人らのアカウントから一斉に削除しています。有料サービス「ツイッターブルー」(日本はウェブサイト版で月980円)に入っていればバッジが維持できるのですが、逆に言えばお金を出せば「認証」できる仕組みになったことで、なりすましが増えるとの懸念が広がっています。
(写真・ツイッターを所有する起業家のイーロン・マスク氏=2018年)
メタ社が対抗サービスを打ち出す
昨年10月にツイッターを買収したマスク氏は、収益源を主力の広告から、ツイッターブルーなどの定額制サービスに転換する方針を打ち出しています。今回の制限により、さらに定額制サービスを利用する人は増えるかもしれません。一方で、無課金のユーザーにとっては閲覧数制限で使い心地が悪くなり、不満の声が高まっています。ツイッターCEOは自らのツイートで、閲覧を制限して以来、広告は安定しているという認識をしめしています。ツイッターから流出するユーザーを取り込もうと、メタ社が予定前倒しでサービスをはじめたのが「スレッズ」です。こちらは、やはりメタ社が提供しているインスタグラムのアカウントでログインすることができ、フォロー先やユーザー名をそのまま引き継げます。使い勝手についてはこれから随時アップデートしていくでしょうが、これまでSNSの雄だったツイッターが本格的にユーザーを失ってしまうのか、それともやはり存在感を保ち続けるのか、目が離せません。
(写真=イーロン・マスク氏のツイッタープロフィール画面)
インフラ化していたツイッターだが……
ツイッターがサービスをはじめたのは2006年、2年後には日本語版がリリースされました。英語版しかないころから日本で着実にユーザーが増えていたため、進出先として選ばれたそうです。日本での存在感がいっそう高まった契機は、2011年の東日本大震災でした。電話がまったくつながらない中、ツイッターは現地の情報をいち早く伝えられる貴重な手段の一つになりました。私も震災発生直後に現地で取材していましたが、電話はまったく途絶しているなかで原発の状況など、ツイッターに寄せられていた情報に助けられたことを覚えています。いまでも、多くの自治体がツイッターで災害情報を積極的に発信しています。また、2019年の週刊誌「AERA」記事では、日本でのツイッターの使われ方として「日本は電車の遅延情報を検索したり、『○○好きな人とつながりたい』といったハッシュタグが人気だったりとグローバルでは見られない独自の使い方をしています」という同社広報担当者のコメントを紹介しています。災害情報や鉄道の遅延情報など、とりわけ日本ではツイッターがかなり重要な情報を提供するインフラになっていることがうかがえます。
しかし、ツイッターはあくまで私企業です。その運営方針も、利益を求める企業の論理に左右されます。昨年マスク氏がツイッターを買収してから、相次ぐ仕様変更や人員削減で安定した運営が困難になっているといいます。今回の閲覧制限はそれほど長く続かないという見方もでていますが、あくまで民間のサービスにすぎないツイッターに依存した情報発信や情報収集がそもそも適切なのか、「スレッズ」の動向も含めてこういう機会に真剣に考えるとよいかもしれません。
(ツイッターの投稿を模したカードをつかって、災害時の情報発信について学ぶ中学生=2022年8月、静岡県)
SNSは栄枯盛衰の激しい世界
SNSの世界は、栄枯盛衰の激しい世界でもあります。
日本で2004年に誕生した「ミクシィ」。かつてはSNSの代表的存在でしたが、海外から上陸してきたフェイスブックやインスタグラムに押されています。グーグルが2011年に立ち上げたSNS「グーグルプラス」は、2019年にサービスを終了しました。2021年に大きな話題となった音声型のSNS「クラブハウス」も、日本でのブームは沈静化しています。
今後もSNSの重要性は変わることはないでしょう。しかし、1~2年後にいま主流のSNSサービスがそのままの地位を保っている保証はありません。サービスが広まるきっかけ、落ち込むきっかけは様々だと思います。今回の騒動から、そういった教訓を学ぶことができるかもしれません。
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