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(編集部・福井洋平)
(写真・フジテレビ本社ビル=2023年9月/写真はすべて朝日新聞社)
アメリカ投資ファンドが調査求める
問題の発端は、昨年末から週刊文春などが、中居正広さんが起こした女性との性的トラブルについて報じていることです。中居さんは1月9日に所属事務所を通じてコメントを発表し、「トラブルがあったことは事実」と認めた上で謝罪しました。女性とは代理人を通じて示談が成立し、「今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」としました。このトラブルに関しては、週刊文春がフジテレビ局員の関与を報じていました。フジテレビは「当該社員は一切関与していない」と発表しましたが、中居さんのレギュラー番組打ち切りを決定。フジテレビ株を保有する投資ファンドが第三者委員会での調査や信頼の回復を求める書簡を送るなど波紋が広がり、フジテレビは1月17日、港浩一社長が会見することとなりました。
会見で港社長は、事実関係や会社の対応が適切だったかどうかについて「昨年(2024年)来、外部の弁護士の助言を受けながら、社内で確認を進めてきました」と発言。さらに、第三者の弁護士を中心とする調査委員会を立ち上げることを発表しています。
(写真・記者会見する港浩一社長=2025年1月17日)
会見にテレビカメラも入れず
この会見が、スポンサーが一斉に離れるきっかけとなった――と言われているのです。朝日新聞の記事では、大手広告会社幹部が「あの会見が開かれる前まで、社内では『色々あるが、フジへのCM発注は続くだろう』との見方だった」と語った、とあります。いったい、何がまずかったのでしょうか。
もともと、フジテレビは一連の問題を受けても、2月末の「定例会見」までは記者会見をしない予定でした。しかし社内外から説明を求める声が増し、調査委の設置も決まったことから、急遽「定例会見」を前倒しして開催することにしたという経緯があります。
フジテレビ側は、いつもの「定例会見」と同じく、会見への参加者をラジオ・テレビ記者会に加盟する新聞・通信社やスポーツ紙に限定。NHKやほかの在京キー局は質問ができないオブザーバー参加で、テレビカメラも入れませんでした。ネットメディアなどの参加も認められていません。テレビ局の会見にもかかわらず、会見を報じるテレビニュースでも写真しか流れないという異様な光景に、ネット上でも批判が殺到しました。自身もふだんニュース報道にたずさわっているフジテレビが会見参加社を限り、テレビカメラすら入れなかったのは、社会的に責任を果たせていないと感じます。
ゼロ回答相次ぎ印象悪化
会見の内容も非常に歯切れが悪く、印象を悪化させました。
調査委の設置や、被害女性のプライバシー保護などを理由に、会見ではさまざまな質問に対して「回答を控える」とゼロ回答が相次ぎました。「調査委に委ねる」としながらも、調査委の設置時期や調査期間などはまだ決まっていない状況です。
一方で、フジテレビは2023年6月には被害女性から話を聞いて被害状況を把握し、中居さん側から報告を受けていたことも明らかになりました。それにもかかわらず、スポンサーには一切知らせず、中居さん出演のレギュラー番組の放送を1年半にわたり続けていたわけです。こうしたフジテレビの対応に、業界内で一気に反発が広がったといいます。朝日新聞の記事には、「現状では、少なくとも調査委員会の結果が出るまでは発注できないという論も、社内で有力になってきた」という大手広告会社幹部のコメントが載っています。
トラブル=人権侵害という理解はあったのか
フジテレビは1月20日の段階で、75社がフジテレビに流すCMを差し止めたと報じています。そのかわりに、公益社団法人ACジャパンの公共広告が放送されています。現時点ではACジャパンの公共広告が流れても広告料金はテレビ局に支払われるといいますが、4月以降の広告はこれから売り出すところだったようで、深刻な影響が出るとみられています。CM放映をやめたある企業の幹部は、「米国の機関投資家が『問題だ』と言ったことが大きかった。世界はそう見ているよなと」と朝日新聞の取材に語っています。週刊文春などは、フジテレビ社員を交えた会食の予定が、直前になって中居さんと女性だけになり、2人の間で性的トラブルが起きた、と報じています。仮に事実だとすれば、フジテレビ社員が女性をだまして被害を与えたことになるわけで、深刻な人権侵害の問題です。テレビカメラすら入れさせないというフジテレビの会見の対応は、今回のトラブルが人権問題であり、フジテレビは世界的に見てとうてい受け入れられない疑惑をかけられていることを、理解していなかったと言わざるをえません。不祥事を起こさないことはいうまでもなく大切ですが、その不祥事をどのようにとらえ、向き合い対応するかは、会社の存亡を左右する重要な判断となります。今回のフジテレビの件はぜひ「他山の石」としてください。調査委の今後の活動にも注目したいところです。
(写真・フジテレビ系の夕方の情報番組「Live News イット!」の放送時間中も、ACジャパンの広告がたびたび流れていた)
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