(写真は、ノーベル平和賞の知らせを受けて会見するドミトリー・ムラトフ氏=2021年10月8日、モスクワ)
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(写真は、ノーベル平和賞の知らせを受けて会見するドミトリー・ムラトフ氏=2021年10月8日、モスクワ)
そもそもノーベル平和賞って?
表は2014年までの主な受賞者です。その後の受賞者は以下の通り。
【2015年】チュニジア国民対話カルテット=イスラム勢力と世俗勢力の歩み寄りへの努力
【2016年】コロンビアのフアン・マヌエル・サントスサントス大統領=左翼ゲリラとの内戦の終結を主導
【2017年】核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)=核兵器禁止条約成立に貢献
【2018年】コンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師、イラクのヤジディ教徒ナディア・ムラドさん=紛争下の性暴力根絶に尽力
【2019年】エチオピアのアビー首相=隣国エリトリアとの国境紛争を終結
【2020年】国連世界食糧計画(WFP)=飢餓の現場に食料を届ける
2度逮捕、記者6人殺害
レッサさんはフィリピンで権力乱用や暴力行使、権威主義を告発してきました。2012年に調査報道を目的としたネットメディア「ラップラー」を共同で設立し、代表を務めながらジャーナリストとして活動。麻薬犯罪の取り締まりのために容疑者の殺害を容認するなど強権的なドゥテルテ大統領に対し、一貫して批判的な姿勢で報じてきたほか、ソーシャルメディアによるフェイクニュースの拡散や世論操作についても伝え、現政権下で少なくとも2度逮捕されています。
ムラトフさんは1993年、ノーバヤ・ガゼータを創刊した一人で長く編集長を務めてきました。創刊以来、汚職や捜査当局の暴力、選挙違反など様々な分野で批判的な記事を書き、プーチン大統領に批判的な姿勢を貫いています。同紙は恒常的に脅迫や暴力を受け、ロシア南部チェチェン共和国での人権侵害の実態に迫って自宅で射殺された女性を含め6人の記者が殺害されてきましたが、ノルウェー・ノーベル委員会は、こうした状況下でも「新聞の独立した方針を放棄していない」と評しました。
ノルウェー・ノーベル委員会の委員長は「民主主義と恒久的な平和の前提である表現の自由を守るために努力してきた」と2人の実績をたたえ、2人は「民主主義と報道の自由がますます不利な状況に直面している世界」で、表現の自由のために闘う「全ジャーナリストの代表だ」と述べました。
ミャンマー、トルコ、中国…広がる報道弾圧
今年2月に国軍がクーデターを起こしたミャンマーでは、軍が批判的なメディアや記者を弾圧。これまでに8社が免許を取り消され、100人以上の記者が拘束されたといわれています。エルドアン大統領が弾圧を強めるトルコでは、大手メディアの9割が政権寄りとされています。米国の非営利組織「ジャーナリスト保護委員会」によると、拘束されているジャーナリストは2021年、中国に次ぐ2番目の多さでした。その中国では、香港国家安全維持法が制定され、民主派支持の香港地元紙が廃刊に追い込まれた。中国政府は10月8日、民営企業がニュースの取材や編集など報道業務に携わってはいけないとする規制案を公表。海外で報道されたニュースを引用することや、世論に関わる分野のフォーラムや表彰イベントを開いてはいけないとも定めており、報道統制をさらに強める姿勢です。中国の主要メディアはノーベル平和賞についても報じていません。
(写真は、ノーベル平和賞について報じていない中国の新聞各紙=北京)
米国でも…日本は?
いわゆる「強権国家」だけではありません。世界の「自由と民主主義」をリードしてきた米国でも、トランプ前大統領が意に沿わぬメディアを「民衆の敵」と非難してきました。大統領選では根拠も示さぬまま選挙の不正を訴えるなど、指導者自らが真実を曲げる事態が生まれました。
日本はどうでしょう? 国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)による2021年の「報道の自由度ランキング」では、調査対象の180カ国・地域のうち日本は67位(前年66位)。主要7カ国(G7)の中で最下位です。日本の状況については、政権批判をする記者がSNSで攻撃されているなどと指摘し、当時の菅義偉首相を「報道の自由の雰囲気を改善するために何もしていない」と批判しました。
言論の自由、表現の自由は、メディア志望者だけでなく、すべての人に関わるテーマです。SNSで誰でも発信できる今は、みなさんは当事者でもあります。「自分ごと」として考えてみてください。
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