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エントリーシート(ES)でも面接でも、今の就活でもっとも重視されるのが「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)です。しかし、コロナ禍でサークル活動もアルバイトも満足にできず、「ガクチカに書くことがない!」というのが、多くのみなさんの最大の悩みでしょう。そんな中、採用選考でもっと学業を重視しようという動きが出てきました。「え!? 学業ってアピール材料になるの?」と思った人もいるかもしれませんが、そもそも学業は学生の本分です。その頑張りを評価しない企業はありません。学業なら何も語れない人はいないはず。なぜその授業を選択し、どう取り組んだのかを語れるようにしておくことが大事です。学業をアピールしましょう!(編集長・木之本敬介)
(写真は、名古屋市で開かれた合説=2022年4月21日)
(写真は、名古屋市で開かれた合説=2022年4月21日)
「ガクチカが何もなくて……」
最近の朝日新聞デジタルに載った就活生の嘆きを紹介します。名古屋市内で4月下旬にあった合同企業説明会に参加した私大4年の女子学生は「ガクチカが一番困っている。何もなくて……」とつぶやきました。別の女子学生は2年生から企画系のサークルに入る予定でしたが、コロナ禍の緊急事態宣言などで課外活動が中止に。「コロナで店が閉店した」「客足が減って社員だけで回すようになりシフトに入れなくなった」などアルバイトに影響が及んだ学生も多くいました。
一方で、苦境を乗り切ろうと努力したことをアピールして成功した学生もいます。私大4年の男子学生は、副代表を務めるイベント系のサークルの催しが全くできない時期がありましたが、「今できることは何か」を常に考え、メンバー同士の交流が絶えないようオンライン会合を設けました。レジ袋有料化に合わせてエコバッグに貼れるシールを作る企画を立ち上げたことなど、コロナ禍での工夫をガクチカに盛り込み、4社から内定を得ることができました。
(写真は、採用担当者の話を聴く就活生たち=2022年6月1日、大阪市の大阪新卒応援ハローワーク)
「学業にはインパクトがない」が7割
大学生の履修データを企業に提供する「履修データセンター」(東京都港区)が3月、2023年卒業予定の首都圏の文系学生約1000人にアンケートを実施。コロナ禍で、面接やESでアピールできるエピソードの不足について「大きく影響した」「どちらかといえば影響した」との回答が6割以上にのぼりました。面接で主に自己PRした内容は、「アルバイト」や「クラブ・サークル」がそれぞれ500人以上だった一方、「日常的な授業での考えや行動」は100人ほど。コロナ禍で学業の時間が増えているのにエピソードとして選ばれない傾向について理由を問うと、「日常の学業行動にはインパクトのあるエピソードがない」が最も多く、回答の約7割を占めました。(写真は、「コロナ世代の就活を応援する会」が開いたオンラインイベント)
「コロナ世代の就活を応援する会」発足
こうした現状に危機感を抱いたのが同センター代表取締役の辻太一朗さんと、人事コンサルティング会社「人材研究所」代表の曽和利光さんです。2人の呼びかけで4月、企業の採用担当者ら有志による「コロナ世代の就活を応援する会」が発足しました。「発足の目的」にはこう書かれています(抜粋)。
コロナ世代は、それ以前の世代の就活に比べて、面接でアピールしやすい具体的なエピソードが極端に少なく大変な苦労を強いられる可能性があります。我々は、彼ら彼女らの就活のおける不合理な苦労を少しでも解消したく「コロナ世代の就活を応援する会」を発足いたしました。発足趣旨に賛同する団体が、それぞれのできる応援施策を実施することでコロナ世代の就活を応援したいと考えています。
「応援賛同メンバーに協力いただく活動内容」で主に訴えているのは、「学業」です。企業に求めることとして、
◆成績表等を活用して、具体的エピソードのない日常的な履修活動での考えや行動でのアピールを就活生が伝えやすくする
◆面接場面においてゼミや研究活動だけでなく、学業での意図、授業の選択、授業中・テスト対策での考えや行動を積極的に確認する質問をする
◆企業に対して成績表等を活用し履修場面での行動を通じて、就活生の長所を見つけることを要請する
などを例示しています。
賛同メンバーの一覧表には、ソフトバンク、富士通グループ、三井物産、伊藤忠商事、旭化成、アサヒグループ食品、JR東日本、損害保険ジャパン、ソニーグループなど、大手企業を中心に80社が名を連ね、「選考段階で履修履歴を収集しており、学生が学業における考えや行動を説明しやすくなる環境を整えている」といった取り組みが紹介されています。朝日新聞の取材に、曽和さんは「就活が成果自慢大会になってしまっている。普段やっていることからも、人となりは分かる。面接する側がいまの学生の実情をしっかりみなければ」。辻さんは「企業は学業にもう少し着目してほしい」と話しました。
●「コロナ世代の就活を応援する会」のホームページはこちら(応援賛同メンバー一覧も)
(写真は、「コロナ世代の就活を応援する会」のホームページ)
コロナ禍での行動の分岐点がポイント
「人事のホンネ」でもコロナ禍のESについて聞いています。ブリヂストンの採用担当者はこう語りました。サークルやアルバイトができなかったためか、ゼミや学業について書く学生が増えました。「思っていた学生生活ができなかった」「留学に行けなかった」と書いたESも多く苦悩を感じましたが、コロナ禍の局面でどう行動したか、どう切り替えたかに一人ひとりの個性が出ていました。もともとESや面接では実績のすごさを問うわけではありません。何かに直面したときにどう考え、どういう行動をとったのか。コロナ禍の前と同じように引き出せると思います。「コロナ禍でサークル活動ができずWEBで工夫した」という話は多かったですね。それでも、たとえば「留学を途中でやめた」としても、「帰国して長期インターンを始めた」「帰国後はWEB留学を続けた」「休学した」など行動の分岐点があると思います。どっちがいい悪いではなく、本人が目的や目標をどう設定してその行動にたどり着いたかの経緯が大事です。
●ブリヂストンの人事のホンネ「ミスマッチ防ぐ総合職+職種別採用 コロナ禍のガクチカにも個性」はこちら(写真)
なぜその授業を選択し、どう取り組んだのか
企業は以前から、研究内容が仕事に直結することも多い理系学生の研究については重視してきました。ただ、文系でも研究など自ら主体的に取り組んだ体験は企業に響くものです。コロナ前ですが、ゼミでのフィールドワーク(実地調査)をアピールした女子学生がいました。課題を設定し仮説を立て、調査地点を探し、観察、アンケート、インタビューなど様々な手法を駆使してデータを集める。そして実証し、結論を得た――という経験です。企画力に発想力、行動力、創意工夫などが伝わります。実はこれって、多くの仕事で必要な力なのです。彼女は大手マスコミ2社の内定を得ました。今はコロナ禍でフィールドワークは難しいかもしれませんが、オンラインでも工夫したことはアピール材料になります。机にかじりついて頑張った勉強を評価する企業もあります。三菱UFJ信託銀行の採用担当者は以前、「人事のホンネ」でこう語りました。「会社や仕事には『やらなければいけないこと』『やるべきこと』がある。嫌なことでも全力疾走でやらなければならない。学生にとってはまずは学業。成績がいい、悪いではなく、どう取り組んできたか。勉強が苦手な人もいるので、大学に入った目的や、どう向き合ってどうクリアしてきたのかを聞きます」
今後、「学業重視」の企業はもっと増えると思います。もちろん、大学の勉強は「就活のため」ではありませんが、頭の隅に置きながら取り組めば就活にもつながりますよ。
2021年2月にアップしたものですが、こちらの動画も参考にしてください。
●「就活のポイント講座」コロナ下の就活解禁!ESのガクチカどうする?《前編》
●「就活のポイント講座」コロナ下の就活解禁!ESのガクチカどうする?《後編》
(写真は、大学のゼミの様子=2021年10月、福島市)
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