
(写真は、インターンのルール変更などについて記者会見で説明した経団連の十倉雅和会長=2022年4月18日、東京都千代田区)

今の就活ルールでは、学業がおろそかになりかねないとして、インターンを採用に直結させることは禁止されています。しかし、「就活解禁は大学3年の3月」の就活ルールが続く中、少しでも早く学生に接触したい企業がこの数年、競うようにインターンを導入。ルールを無視してインターン直結の採用選考をする企業は一部だとしても、大半の企業がインターン参加者を早期選考に呼ぶなど優遇するようになり、就活ルールは完全に形骸化。今では事実上、「3年生の夏インターンで就活スタート」となっているのはみなさんも知っていますね。
誰も守らないルールを実態に合わせて変えようというのが今回の変更です。インターンは学生が在学中に一定期間、企業や役所などで就業体験をすること。実際の仕事やグループワークを体験することで働くイメージを明確にして、仕事選びのヒントにすることができます。欧米では長期のインターンに参加した学生を採用するのが一般的ですし、学生と企業がお互いをよく知ることでミスマッチの防止にもつながります。ようやく日本でも、「インターンからの採用」という本来のあるべき形が始まるとも言えます。
産学協議会が政府に提出した報告書から、インターンがどう変わるのかを解説します。報告書では、学生のキャリア形成支援の取り組みを4タイプに整理しました。
①オープン・カンパニー=大学入試に向けて開くオープン・キャンパスの企業版のようなもので、学生が「企業・業界・仕事を具体的に知る」のが目的
②キャリア教育=主に大学1~2年生向けで、学生が「自らのキャリア(職業観・就業観)を考える」のが目的
③汎用的能力・専門活用型インターンシップ=主に大学3~4年生と大学院生向けで、学生が「その仕事に就く能力が自らに備わっているか見極める」のが目的。大学と企業の目的は「マッチング精度向上」と「採用選考を視野に入れた評価材料の取得」
④高度専門型インターンシップ=大学院生が「自らの専門性を実践で活かし、向上させる(実践研究力の向上等)」目的
4タイプのうち、企業が学生の情報を採用活動に使えるのは③と④で、多くの就活生に関わるのは③です。③のインターンの期間は、「汎用的能力活用型」が5日間以上、「専門活用型」は2週間以上で、その半分以上を職場などでの就業体験にあてなければなりません。職場の社員が学生を指導し、インターン終了後にフィードバックすることも条件です。テレワークでの職場体験も認められます。実施時期は、夏休み、冬休み、入試・春休みの長期休暇期間。学生情報の採用活動への活用は、「採用活動開始以降に、可」としています。「3年の3月解禁」の就活スケジュールは変えないため、表向きはインターンに参加しても3年の3月にならないと本番の選考は始められませんが、おそらく3年の夏インターン以降、早々に事実上の内々定を出す企業が多くなると思います。
また、5日間以上のインターンについては、募集時にお墨付きの印である「産学協議会基準準拠マーク」を記載できるとしているので、経団連加盟の大手企業を中心に「5日間以上」のインターンが急増するでしょう。ただ、「5日間以上」は企業にとっても大変ですから、手軽なワンデーイベントもなくなりません。2年生のみなさんは、ルール改正をしっかり理解して心構えをしておくことが肝要です。
「3年時に海外に留学しよう」と考えている人にとっては悩ましいルール変更かもしれません。ただ、インターン参加者しか採用しない企業は多くはありません。留学を諦めるようなことはせず、就活と両立できるスケジュールを早めに考えておきましょう。
●インターンのルール変更をまとめた産学協議会の報告書「産学協働による自律的なキャリア形成の推進」はこちらから


2025/11/26 更新
※就活割に申し込むと、月額2000円(通常3800円)で朝日新聞デジタルが読めます。


1
2
3
4
5
6
7
8
9
10