ニュースのポイント
甲子園で熱戦が始まりました。高校球児の全力プレーや裏方の頑張りから、就活のヒントを見つけましょう。来週は編集長が夏休みをとるため、「今日の朝刊」は休載します。次回は19日(月)にお届けします。
今日取り上げるのは、スポーツ面(16面)の「はま風・3人の父へ 全力孝行/大垣日大・高瀬燎哉選手」です。大垣日大高校(岐阜)は有田工業高校(佐賀)に5対4で負けました。
記事の内容は――大垣日大高校の高瀬燎哉選手には父の記憶がない。生後9カ月のとき、がんでなくなった。祖父が父親代わりだった。大垣日大の坂口監督は部員皆を「息子」と言ってほめて伸ばしてくれた。2年の夏、監督から「お前は適切にアドバイスをして投手を育てられる。信頼しているぞ」とブルペン捕手を任された。「レギュラーでなくても自分の役割。やるしかない」。気持ち良く投げられる音を出そうと、痛いのを我慢してミットの芯でとり続けた。気づいたら、左人さし指が右よりも数ミリ太くなっていた。「勲章」だ。試合前が勝負どころ。先発投手の球をブルペンで受ける。状態をチェックしながら、「いい球きてる」と投手を乗せて送り出す。母と祖父母が応援にきてくれた。父も見ていてくれたと思う。勝ちたかったが、ブルペンから送り出した3投手が力を出し切ってくれたから悔いはない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
大会は、接戦あり、2打席連続本塁打ありと、初日から大いに盛り上がりました。でも、グラウンドでのプレーだけが高校野球の魅力ではありません。高瀬選手はブルペン捕手です。試合に出る機会はまずありません。補欠ですが、チームになくてはならない存在です。投手を気持ちよくマウンドに送り出し、その日の調子を分析して捕手に伝える。そのために彼なりに工夫し、頑張ってきました。「試合前が勝負どころ」というところが泣かせます。
プロ野球の巨人が球界を代表する強打者を何人もそろえたのに優勝できず、話題になった年がありました。4番バッターだけで野球はできません。選球眼のいい1番打者、送りバントがうまい2番打者、捕手、遊撃手といった守りの要には守備のうまい選手。1塁、3塁のコーチ役、伝令役、ブルペン捕手、マネジャー、記録員、ベンチに入れなかった選手たち……。地味な裏方も含めた全員のチームプレーこそが野球なのです。
企業も同じです。「エース」や「4番バッター」だけを求める企業はありません。いろんなタイプの人が必要です。高瀬選手のような、レギュラーになれず、でも頑張った人は企業には魅力的に映るでしょう。ある大手商社幹部は「採りたい学生像」について、こう言っています。「商社なんて入社後しばらくは雑巾がけです。年間100人以上採用しても社長になれるのは何年かにひとり。学生時代『エースで4番』でも必ず脇役に回る。面接ではそのときに何ができるかをみたい。だから失敗談や挫折体験をしつこく聞きます。挫折したときの悔しさ、仲間への嫉妬……その時何を学び、どうふるまったか。『人を裏切ったことも、裏切られたこともありません。誰とでも仲良くやっていけます』なんて言われると、『君って、晴れの日の友達しかいないのね』と思ってしまう。大切なのは、素直さとか、仲間への思いやりとか、人としての基本的な資質です」
夏の甲子園の期間中、この「はま風」というコラムには舞台裏でチームを支える選手も多く登場するはずです。郷土の高校の応援や好プレーに注目するだけでなく、こちらにも目を向けてください。「はま風」を読みながら、自分にも似たような経験がなかったか、思い起こしてみてください。いずれエントリーシートを書くとき、きっと役に立ちます。
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