ニュースのポイント
東芝が医療機器事業を半導体、発電と並ぶ新たな「3本柱」の一つにすると発表しました。医療機器事業にはすでにソニーが力を入れているほか、オランダの電機メーカー・フィリップスも柱に据えて成功するなど、電機メーカーの進出が目立ちます。会社は、時代にあわせて姿を変えていきます。
今日取り上げるのは、経済面(5面)の「東芝、医療分野を中核に/今後3年間/TV・PC事業解体」です。
記事の内容は――東芝が今後3年間の経営方針を発表した。同社は06年から、発電など社会インフラ、半導体、テレビ・パソコン(PC)を3本柱としてきたが、2年連続で赤字のテレビ・PC事業を解体し、医療機器事業を柱の一つに据える。CTやX線診断装置などの医療機器事業は現在、原子力、社会インフラなど様々な部署や子会社が手がけているが、10月1日付で1部門にまとめる。2012年度に約4000億円だった売上高を、15年度に6000億円、17年度には1兆円に引き上げる計画。田中久雄社長は「調子が悪いときは他の事業で支え、培った技術を全社で生かすのが東芝のいいところだ」と語った。テレビ・PCは、韓国・台湾勢との競争激化で損益が悪化し、「主役交代」となった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
今この原稿を打っているPCは東芝製です。福山雅治さんが登場する「REGZA」ブランドのテレビコマーシャルを、つい最近まで目にしていた記憶があるので、「テレビ・PC事業の解体」には驚きました。思い切った業態転換といえます。新たな3本柱は一般消費者向けの事業ではないので、東芝のCMを見る機会は減るかもしれません。「サザエさん」の提供は続けるでしょうが……。収益が上がらなくなった部門は縮小し、新たな成長分野を見いだして集中的に投資していく。企業は、時代の要請に合わせて姿を変えていかなければ、存続できないのです。
東芝が新たな柱に据える医療機器事業は、すでにソニーが中核事業の一つと位置づけています。この分野に強いオリンパスと資本・業務提携し、外科手術用の内視鏡を作る新会社「ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ」を立ち上げました。フィリップスは2011年、看板だったテレビ事業の不振から大幅な赤字に陥りましたが、テレビに見切りをつけて売却してから急回復。現在の売上高の4割以上を医療機器が占めています。
医療機器の国内生産は約1兆8000億円(2011年)ですが、輸入も約1兆600億円あります。輸入額が多いのは、国内の審査が厳しく、欧米に比べ実用化までに時間がかかるためだといわれています。安倍政権は成長戦略の一環として医療分野での「大胆な規制緩和」を打ち出しました。医療機器事業の世界市場は25兆円規模で、年5~8%成長を続けています。世界では新興国の経済規模が拡大し、国内では高齢化が進む中、日本企業の高い技術を生かせる成長分野として期待されているのです。
就活生は身近な商品やテレビコマーシャルで得られる情報から企業のイメージをつくりがちですが、実は主要事業は全く違う分野かもしれません。志望する企業がどの分野を縮小してどこに力を入れていこうとしているのか、経営戦略を新聞記事から読み解きましょう。来年の東芝の面接試験で「御社のテレビとパソコン事業に憧れて……」などと言ったら、きっと笑われますよ。
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