ニュースのポイント
中部電力が東京電力管内で企業向けの電力販売に乗り出します。東電、関西電力など大手10社による地域独占が続いてきましたが、大手電力同士が競争する「国盗(と)り合戦」が始まりそうです。
今日取り上げるのは、1面と7面の「中部電、首都圏で売電/新電力買収 地域越え競争へ」「大手電力『国盗り合戦』/越境販売、中部電の悲願」です。
記事の内容は――中部電力は、三菱商事の新電力会社「ダイヤモンドパワー」(東京都)を買収し、首都圏市場に参入する。地域ごとに電力市場を独占してきた大手電力が他の地域に本格参入するのは初めて。企業など大口向けの電力販売は2000年に自由化され、三菱商事は同年、ダイヤ社を設立し首都圏の百貨店や工場に電気を売ってきた。中部電力は、東電管内の静岡県にある日本製紙の工場内に石炭火力発電所を新設、その電力をダイヤ社が買い取って首都圏で販売する。自由化後も大手電力による他地域参入が進まなかったのは、電気料金がほぼ横並びだったため。しかし、原発事故後、東電が値上げしたのに対し、販売電力に占める原発の比率が低い中部電力は値上げせず、価格差が生じ、競争が可能になった。電力販売は2016年をめどに家庭向けも含めた完全自由化が始まる予定で、中部電力は先手を打った形だ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
電力業界は、北海道電力、東北電力、東京電力、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力の10社が全国を「分割統治」してきました。極めて安定した企業として就職人気ランキングでは上位の常連でしたし、大手企業が少ない地方都市では地元経済界の中核企業として強い影響力を持ってきました。「安定」の根源は、地域独占と発電・送電を一手に担う体制、さらに必要な年間経費を回収できるように電気料金を決められる「総括原価方式」などです。コスト削減の努力や競争原理が働かないため、1990年代以降、電力自由化が段階的に進められてきましたが、業界の抵抗が強く、「発送電分離」などは実現していません。
ところが、福島の原発事故を機に業界を取り巻く状況は一変しました。国会の混乱で廃案になったものの、「発送電分離」に向けて電力システム改革を進める電気事業法改正案がいったんは成立の見通しとなりました。太陽光、風力などの自然エネルギーによる電力事業には、商社だけでなく、自動車会社、鉄道会社、食品会社、流通会社など様々な業界からの参入が相次いでいます。さらに、大手電力会社に電力料金の価格差が生じたことで競争条件が整い、地域独占の一角も崩れ始めたというのが今日のニュースです。
長い間、波風も立たなかった電力業界は、大変革の時代に突入しました。2016年の完全自由化に向けて、これからも新たな動きが出てくるでしょう。電力事業は、あらゆる業界にとって新たなビジネスチャンスなのです。大手電力会社同士の競争だけでなく、他業種からの参入のニュースに注目してください。業界・企業研究を深め、志望動機の補強に使えるはずです。
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