2020年11月27日

三菱グループ150年…社是・理念は企業研究に必須!【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 三菱グループ創業150年を迎えました。主要26社が強い経済的な結びつきを誇ってきましたが、近年は経済環境が変わり業績が厳しい会社も出る中、グループのありようにも変化がみられます。それでも結びつきの根底にあるのが、社会貢献などを掲げた共通理念「三綱領」の存在です。三菱に限りません。「人事のホンネ」でインタビューを重ねていますが、実に多くの採用担当者が創業の理念や社是綱領への共感・理解を求めます。文言が堅苦しかったり、ちょっと古くさいと思えたりするものもありますが、多くが社員に脈々と受け継がれています。絶対に欠かせない企業研究ですが、「御社の理念に共感し」だけでは逆効果だとか。どうすればいいのでしょう?(編集長・木之本敬介)

(写真は、三菱グループ創業150周年記念式典で「三綱領」を前に記念撮影する〈左から〉三菱商事の小林健会長、三菱重工業の宮永俊一会長、三菱UFJFGの平野信行会長=2020年11月24日午後、東京都港区)

三菱の歴史と今

 三菱グループのルーツは、1870(明治3)年設立の海運業「九十九(つくも)商会」。坂本龍馬がつくった海援隊の流れをくみ、同じ土佐藩出身の岩崎弥太郎が受け継いで創業しました。「御三家」と呼ばれる三菱UFJ銀行三菱商事三菱重工業が中心です。

 御三家はビジネス面でグループを支えてきました。たとえば2005年、経営が行き詰まった三菱自動車に3社が計2700億円を出資して支援し、「身内救済」との批判も浴びました。ところが、近年は様相が一変。三菱自動車が日産自動車傘下に入ったほか、重工は国産ジェット旅客機事業でつまずき、2020年3月期(国際会計基準)は営業損益が20年ぶりの赤字を記録。商事も今年、伊藤忠商事時価総額で抜かれて業界首位を明け渡しました。三菱UFJ銀を傘下に持つ三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は2020年3月期の純利益で三井住友FGに抜かれ初めて業界首位を譲りました。

 そんな中、11月24日に開かれた150周年記念式典では、宮永俊一・三菱重工業会長が「(岩崎弥太郎が)挑戦者として第一歩を踏み出した原点に立ち戻り、力強く新たにスタートしたい」と表明しました。150年事業の目玉は昨年設立した「三菱みらい育成財団」です。主要企業が10年間で計100億円を出して子供や若者の教育を支援。創業100年を機に設立された「三菱財団」とあわせて、グループの存在意義は社会貢献に移りつつあるようです。

三菱の「三綱領」

 旧財閥系の3グループは 「組織の三菱、人の三井、結束の住友」などと称されます。組織力の強さで有名な三菱グループで受け継がれてきたのが「三綱領」です。1930年代に定められた経営の根本理念で、グループ企業の活動の指針となっています。企業サイトにはこうあります。

◆所期奉公=期するところは社会への貢献
 事業を通じ、物心共に豊かな社会の実現に努力すると同時に、かけがえのない地球環境の維持にも貢献する。
◆処事光明=フェアープレイに徹する
 公明正大で品格のある行動を旨とし、活動の公開性、透明性を堅持する。
◆立業貿易=グローバルな視野で
 全世界的、宇宙的視野に立脚した事業展開を図る。

「人事のホンネ」の取材でうかがった三菱商事本社にも、「三綱領」の額が掲げてありました。
(写真は、三綱領の額の前に立つ三菱商事人事部の田中裕美さん)

「人事のホンネ」から

 三菱グループだけではありません。最近の「人事のホンネ」での発言から、受け継がれている理念などを紹介します。

オムロン「我々が大事にしている企業理念『事業を通じた社会的課題の解決=ソーシャルニーズの創造』に取り組んでくれる学生に来てもらい、利潤を追求するだけでなく、社会的課題にどう取り組んでいくかを考えてほしいと思っています。『誰でもいいから、とにかくオムロンが好きな人に来てほしい』ということではありません」(写真)

城南信用金庫「『貸すも親切、貸さぬも親切』、自分の企業のお金もうけのために人にお金を貸すのは不親切だよ、本当にお客様のためになる融資をしようという言葉があります」「『貸すも親切、貸さぬも親切』『銀行に成り下がるな』という小原鐵五郎・元理事長の名言を聞いて『信用金庫で頑張っていこう』と思うようになりました」

森ビル「『都市を創り、都市を育む仕事』を通じて人々や企業を元気にし、東京を世界で一番の都市にしたいと本気で考えて取り組んできた森ビルで、都市づくりに携われることは非常にやりがいのある仕事です」

●東宝「当社は企業理念に『健全な娯楽を広く大衆に提供する』と掲げています」「お客様本位の『幸福産業』が、全員の根っこにあります」「(求める人材は)東宝の企業理念や使命に共感し自分の目標を立てられる人」(近日オープン)

「社是に感銘」だけでは逆効果

 ただ、注意してほしいのは、ESや面接で企業理念や社是を表面的になぞるだけだと逆効果だということです。パイロットコーポレーション人事部の島田澄人さん(写真)は「(ESに)『社是に感銘を受けました』『御社の商品が好きで』などしか書いていないと、『文房具が好きなだけなのかな』『好きだからとりあえずESを出したのかな』と思ってしまいます」と言い、「それだけでなく『自分のこういうところをいかして、こう役に立ちたい』『会社に入って自分はこうなりたい』という部分があるかないか。『自分ごと』としてとらえているかどうかを見ています」とも語っています。やはり、社員の話を直接聞いてどう根づいているのかをきちんと理解したうえで、自分に落とし込んで考え、表現するというプロセスが必要です。(パイロットコーポレーションの人事のホンネはこちら

 最後に、朝日新聞社の綱領を紹介します。少し堅苦しい言葉が並びますが、言論の自由や民主主義を守るのがジャーナリズムの使命ですから、全社員の仕事の根底に常にある言葉です。
一、不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与す。
一、正義人道に基いて国民の幸福に献身し、一切の不法と暴力を排して腐敗と闘う。
一、真実を公正敏速に報道し、評論は進歩的精神を持してその中正を期す。
一、常に寛容の心を忘れず、品位と責任を重んじ、清新にして重厚の風をたっとぶ。

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