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日本航空(JAL)が2021年卒の新卒採用を中止すると発表しました。ANAホールディングスもすでに中止を表明しており、国内航空大手2社が採用を見送る事態になりました。「小さいころからの憧れ」という人も多い人気企業だけに、ショックを受けた人も多いと思います。来年以降どうなるかは、新型コロナウイルスの今後の状況次第でまだ見通せません。ただ、しばらく「ウィズコロナ」の時代が続きそうですし、世の中がコロナ前に戻ることもないでしょう。まずは視野を広げて、多様な業界に目を向け、個々の企業の対応を注視することが大事です。IT業界などコロナ禍が追い風になっている企業もありますが、逆風の業界でも業績を伸ばしている企業があります。ニュースをこまめにチェックして、「コロナ後」に強い業界・企業を見極めましょう。(編集長・木之本敬介)
(写真は、新型コロナの影響で減便となり羽田空港に駐機中の日本航空の機体=2020年5月11日、東京都大田区、朝日新聞社ヘリから)
(写真は、新型コロナの影響で減便となり羽田空港に駐機中の日本航空の機体=2020年5月11日、東京都大田区、朝日新聞社ヘリから)
JALは1500人採用見送り
JALは新型コロナの感染拡大の影響で採用活動を中断しましたが、今後の事業環境を見通すことが困難な状況が続いているとして、7月28日、新卒採用中止を正式に発表しました。グループで1700人を採用する予定でしたが、総合職の事務系や技術系、客室乗務員(CA)など1500人弱の採用を見送ります。パイロットや障害者、すでに内定を出した新卒者は予定通り採用します。赤坂祐二社長(写真)は朝日新聞の取材に対し、中止の理由として、国内線よりも多くの人手を必要としてきた国際線で9割もの減便が続き需要回復が見通せないことを挙げました。JALは2010年の経営破綻(はたん)後もしばらく採用を見送っており、総合職とCAは2012年卒採用、総合職の技術職は2013年卒採用以来の見送りとなります。ANAは2500人中止
一方のANAホールディングスはすでに7月10日、グループ37社で2021年卒の大学生などの新卒採用を中止すると発表しています。当初はグループで約3200人の採用を計画していましたが、8割弱にあたる2500人の採用を中止しました。中核の全日本空輸(ANA)では、事務・技術の総合職とCAの採用を見送ります。すでに内定を出した専門学校生約600人は予定通り採用し、パイロットと障害者の採用活動も続けます。ANAの採用中止は、総合職が1999年卒、CAは2004年卒採用以来。グループ全体での中止は、2013年4月のANAホールディングス発足以降で初めてです。HIS、USJも中止
エアライン以外にも、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)、テーマパークのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がコロナの直撃を受けて採用を中止しました。当初は約600人を採る計画だったHISは6月に中止を発表。すでに内定を出した数十人は予定通り採用します。USJの運営会社ユー・エス・ジェイも、すでに内定を出した一部の留学生を除いて選考を途中で打ち切りました。2019年卒は約90人、2020年卒は120人を採用していました。来年の採用はどうなるのでしょう。JALの赤坂社長は「回復には3年くらいかかり、人員の余剰感は来年度も続くだろう。これ以上、余剰を増やす採用はない」と話しました。コロナの収束次第ですが、当面厳しい状況が続くのは間違いなさそうです。とくに、航空、ホテル、テーマパークなどの業界は、人件費や設備費などの固定費が高く、景気悪化の直撃を受けやすいといわれていることも知っておきましょう。
ただ、多くの企業は、バブル経済崩壊後の1990年代に採用数を激減させました。いわゆる「就職氷河期」です。しかし、このときに絞り過ぎて、いま中核を担うべき40代の社員が少ないなど年齢構成がゆがんだことを反省し、景気に左右されずに一定数は必ず採ることにしている企業もあります。コロナで業績が厳しくなって採用を減らすにしても、一定数は維持する企業が多いとみられています。そんな中でもANAやJALが採用を中止したということは、それだけ切羽詰まっているということでしょう。
●コロナでANA、JALが資金難に!航空ならではの事情とは【業界研究ニュース】参照
(写真は、入場制限を全面的に解除したUSJ=7月20日、大阪市此花区)
企業の対応力に注目
どんな業界をめざすにしても、これからはコロナ後に時代に対応できる会社かどうかを見極めることが、会社選びの大きなポイントになってきます。新型コロナをめぐっては、米国の名門衣料ブランドのブルックスブラザーズの経営破綻も話題になりました。ニューヨークで創業して200年余り。米国流スーツスタイルの象徴的存在で、歴代大統領ら著名人の愛好家も多くいました。しかし米国では、コロナ禍以前から仕事着がスーツからカジュアルウェアに移り、保守的な金融街のウォール街ですら服装規定を緩める企業が出るなど「スーツ離れ」が進んでいました。そこに、コロナ禍による店舗休業、外出制限、自宅で働くテレワークの広がりが追い打ちをかけました。小売りのオンライン化に対応できなかったことも要因です。今後、テレワークがもっと一般的になれば、スーツを着る機会はさらに減るでしょう。時代の変化についていけなかった典型例です。同じアパレルでも、カジュアル化、オンライン化を積極的に進めている会社もあります。
(写真は、ブルックスブラザーズの米ニューヨーク・マディソン街の店舗=2020年7月8日)
紳士服売り場はなくなる?
ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(写真)は、朝日新聞のインタビューで、レナウンや米ブルックスブラザーズの経営破綻や新型コロナの影響について、こう語りました。「(新型コロナの感染拡大で)10年間(の変化)が1年間で来たって感じでしょう。時代に合わせて変化していかなければならなかったものが、なかなか変化できなかった結果だと思う」
「コロナで生活様式が変わった。生活様式が変われば、服の選び方も変わるんですよ。ドレスやスーツはほとんどの人の生活に関係しなくなったんじゃないですか」「一番いい例が、紳士服売り場だ。極論すると、ほとんどなくなるかもしれない。オンワードホールディングスや三陽商会などは今までとは違う売り場展開をしなければならないだろう。オンワードは(ファッション衣料品サイトのZOZOTOWNを運営する)ZOZOと連携するようだが、そういうふうに新しい形に変わっていく」
外食チェーンは明暗
コロナの直撃を受けた外食チェーンでも明暗が分かれました。外出自粛が続いた4~5月、テイクアウトが伸びたマクドナルドやケンタッキーフライドチキンは売り上げを大きく伸ばしました。マクドナルドは、スマホで注文が完結する「モバイルオーダー」や駐車場で商品を受け取れる「パーク&ゴー」などのデジタル対応が功を奏したとみられています。業界によって、企業によって、コロナから受ける影響も、コロナ禍でとる対応も異なります。新聞の経済面などで企業の動向をしっかり押さえましょう。
(写真は、マクドナルドの店舗)
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