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(写真は、新型肺炎に感染した患者を搬送するため、ダイヤモンド・プリンセス号の近くに集まった救急車=2月7日、横浜港・大黒ふ頭、朝日新聞社ヘリから)
ユニクロ銀座店ガラガラ
おととい、東京の「ユニクロ銀座店」に行ってみて驚きました。いつもは中国人旅行客でごったがえしている店内はガラガラ。銀座の街中も少し閑散とした感じで、昼間は行列している人気ラーメン店にすんなり入れました。中国人客が激減したのは、中国政府が感染拡大を防ごうと団体ツアー旅行を禁止したためです。日本政府側も、来日前2週間以内に発生源の武漢市がある湖北省に滞在した外国人と同省発行の中国旅券を持つ外国人の入国を拒否しています。日本で感染を広げないために必要な措置ですが、経済や景気にとっては大きなマイナスです。中国人観光客は日本政府が目指す「観光立国」戦略の柱だからです。2019年の中国本土からの観光客は959万人にのぼりました。訪日客の国別トップで、全体の30%を占めます。このうち4割程度が団体客とみられています。
(写真は、人気観光地の京都・清水寺周辺も人通りがまばらだった=2月6日午前10時2分、京都市東山区)
資生堂は訪日客売り上げ4割減
インバウンド(訪日外国人客)による消費は百貨店など小売業界にとって収益の軸で、中国人が最大の顧客です。大丸松坂屋百貨店を運営するJフロントリテイリングでは、訪日外国人客の85%が中国人客。かつて「爆買い」と呼ばれたときほどの勢いはありませんが、それでも中国人は他国の人に比べてお土産をたくさん買うんですね。実際、2019年の訪日客の消費額のうち中国人は36.8%を占め、その総額は1兆7718億円にのぼりました。右のグラフは中国人訪日客の消費の内訳です。これらの業界は打撃が大きいということになります。「化粧品・香水」のトップブランドである資生堂は6日、中国の春節(旧正月)の時期の訪日客による売り上げが、今年は昨年より40%ほど少なかったと発表しました。SMBC日興証券の試算では、中国による団体旅行禁止が6カ月間続くと、旅行客の支出は約2950億円減り、日本の国内総生産(GDP)を約0.05%押し下げるそうです。航空業界も直撃を受けています。全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)をはじめ、LCC(格安航空会社)各社も中国便を運休したり、減便したりしています。
日本政府は、東京五輪・パラリンピックがある今年、「訪日客4000万人」の目標を掲げています。日韓関係悪化で韓国からの訪日客が減る中、昨年まで6年連続で増えていた中国への期待は大きかったのですが、新型肺炎の発生で目標達成はいよいよ厳しくなってきました。
中国抜きに車はつくれない
人の移動だけでなく、モノづくりにも大きな影響が出ています。自動車販売台数世界一の中国には日本メーカーの完成車工場がたくさんありますが、新型肺炎のため今はすべてストップしています。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、マツダ、三菱自動車は、春節明けの2月3~4日から操業を再開する予定でしたが、部品が調達できなかったり従業員が出勤できなかったりする可能性があり、まだ止まったままです。今後の見通しも立っておらず、操業停止が長引けば業績に大きな影響を及ぼしそうです。近年、中国には自動車メーカーとともに自動車部品メーカーも多数進出しています。日本自動車部品工業会によると、中国に拠点がある日系の部品メーカーは2018年時点で539社。10年間で約130社増えました。2018年に中国から日本への自動車部品の輸入額は、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した2003年の10倍に急増。いまや中国抜きに自動車はつくれないのです。国内の自動車工場にある程度は部品の在庫がありますが、在庫が尽きれば国内の工場も止まってしまいかねません。
(写真は、昨年4月に稼働したホンダの完成車工場の生産ライン=2019年4月12日、中国・武漢市)
任天堂もユニクロも
自動車だけではありません。任天堂は6日、ゲーム専用機「ニンテンドースイッチ」とゲームソフト「リングフィットアドベンチャー」の出荷が遅れると発表しました。生産を委託している中国の工場の再開が遅れているためです。中国は「世界の工場」と呼ばれており、たくさんの日本企業が様々なモノをつくっていますから、影響はあらゆる業界に及びます。
中国で店舗を展開する業界も苦しいようです。ファーストリテイリングの「ユニクロ」は中国に750店、良品計画の「無印良品」は256店を中国本土で展開していますが、新型肺炎発生以来、休業する店舗がどんどん増え、両社とも中国全体の半分に達しました。両社は生産面でも中国依存度が高く、業績への影響が心配されています。
(写真は、ニンテンドースイッチ=任天堂提供)
中国の成長鈍化は世界に影響
日本の企業にとって中国は、インバウンドの中軸であり、生産拠点であり、一大消費地でもあるわけですね。米国に次ぐ世界2位の「経済大国」ですから、中国の景気が悪くなると世界中に影響が及びます。当然、多くの日本企業の業績にも響きます。
2021年卒採用はまもなく解禁なので、採用予定数を現段階で急に減らす企業は多くないと思いますが、今の大学2年生が就活する2022年卒採用はどうでしょう。企業は業績が悪化すると人件費を最初に削るといわれます。つまり採用減です。しばらく続いてきた学生優位の「売り手市場」にも暗雲が漂ってきたように思います。こうした日々のニュース、世界情勢が企業の業績に響き、みなさんの就活戦線を直撃します。自分ごととして、ニュースに接してください。
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