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SBGとネイバ-の折半出資
統合を検討しているのは、ヤフーの持ち株会社Zホールディングス(ZHD)とLINEです。ZHDの親会社は携帯電話大手のソフトバンク(SB)、その親がソフトバンクグループ(SBG)という構図です。具体的には、SBとLINEの親会社である韓国のネイバ-が50%ずつ出資して新会社を設立。同社がZHDの筆頭株主となり、ZHDの傘下に事業会社ヤフーとLINEがぶらさがる形が想定されています。新会社はSBGの連結子会社として、その影響力が強くなる見通しです(図参照)。それぞれの事情
統合の背景には、双方が抱える事情があります。ZHDは、検索やメディア事業を基盤に、EC、金融など幅広いネットサービスを展開してきましたが、ECではアマゾン、楽天に及ばず、ポータルサイトのヤフーはパソコンからスマホに主流が移る中で利用者が伸び悩んでいます。SBGは2019年度9月中間決算で15年ぶりの営業赤字転落を発表したばかり。SBGの中核事業である携帯電話の成長も頭打ちです。スマホの通信アプリで圧倒的な強さを持つLINEとの統合でスマホを強化し、ECでも新たな利用者を取り込むことが期待できます。一方、スマホの通信アプリが強いLINEは、スマホ決済やニュース配信、宅配代行などにサービスを広げてきました。金融業にも積極展開しており、野村ホールディングスとの「LINE証券」や、子会社の「LINEフィナンシャル」で証券や保険のサービスを開始。2020年には、みずほ銀行と共同出資する「LINE Bank」が開業します。ただ、通信アプリ以外では競争が激しく、2018年12月期決算では営業利益が3割減少し純損失も計上。売上高の半分を広告が占め、多様なサービスが収益の基盤になるには至っていません。ヤフーとの統合による利用者拡大で、収益基盤を強化しようという考えです。
●業界研究ニュース「投資会社になったソフトバンクGに見えたリスク」参照
(写真は、9月中間決算について説明するSBGの孫正義会長兼社長。統合を主導しているといわれる=2019年11月6日、東京都中央区)
統合のメリット
統合すると、ZHDとLINEを会わせた売上高はネット通販(EC)大手の楽天を抜き、国内ネット企業でトップに立ちます。ヤフーは検索・メディア事業を基盤とし、LINEは通信アプリが中核事業。スマホでの利用が多いLINEと、PCユーザーの利用も多いヤフーは、ユーザー層で補完し合う関係になるとみられています。両社はグループに格安スマホのブランドもそれぞれ持っています。統合すればユーザーが一気に拡大し、勢力を広げられます。スマホ決済では、ZHDの「PayPay」が業界トップシェアで「LINE Pay」は3位。双方の間での個人間送金などで利便性が高まりそうです。
GAFAと違う「全部乗せ」
世界のIT市場は米国が地盤の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が、中国では「BAT」(百度〈バイドゥ〉、アリババグループ、騰訊〈テンセント〉)が席巻しています。「ヤフー+LINE」の国産巨大IT企業ができたとして、これらに対抗できるのでしょうか。株式の時価総額で見ると、米中勢の1社数十兆円に対し、ZHDとLINEを合わせても3.4兆円。フェイスブックの利用者は世界で24億人ですから、足元にも及びません。
ただ、GAFAの場合、検索やメールはグーグル、SNSはFB、ECはアマゾン、スマホはアップルと、得意分野がはっきり分かれています。これに対し、「ヤフー+LINE」が目指すのは、あらゆるサービスを一つのプラットフォームにおさめる「全部乗せ」方式で、中国のアリババやテンセントに近いといわれます。SNSからEC、金融まで、生活に必要なあらゆるサービスを一つのスマホアプリで受けられるようになれば、消費者としてはいちいち別のアプリを使うより便利ですよね。国内ではGAFAに対抗できるかもしれません。加えて、LINEは、台湾、タイ、インドネシアなどに数千万人の利用者がいるため、アジアで勢力を拡大する可能性もあります。
プラットフォーマー(PF)については、PFが強い立場を利用して消費者や取引先に不利な条件を押しつけかねないとして、政府が規制を検討しています。個人情報の寡占や扱いをめぐっても、世界各国で規制が検討されています。「ヤフー+LINE」による情報集中には、こうした心配があることも知っておいてください。
●「プラットフォーマー」って?巨人「GAFA」の功罪を知ろう(2019年2月22日のイチ押しニュース)も読んでみてください。
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