2019年02月22日

「プラットフォーマー」って?巨人「GAFA」の功罪を知ろう【今週のイチ押しニュース】

テーマ:国際

 「GAFA」(ガーファ)って最近よく聞きますよね。米国の巨大IT企業、グーグル、アップル、フェイスブック(FB)、アマゾンの4社で、「プラットフォーマー」とも呼ばれます。GAFAのおかげで世界中の情報やほしいモノが何でも簡単に手に入り、国境を越えて大勢の人と気軽に交流できる世の中になりました。一方で、GAFAは利用者の膨大な個人情報を独占しています。情報流出のほか、巨額の利益をあげているのに稼ぎに見合う税金を払っていないことも大きな問題になっています。インターネットの普及で始まった巨大ビジネスはこれまで野放し状態でしたが、欧州に続き日本政府も規制に乗り出し、専門家による監視組織をつくって消費者保護を強める方針です。GAFAの功罪を考えます。(編集長・木之本敬介)

(写真は、GAFAのロゴ)

時価総額はドイツのGDP並み

 GAFAに、動画配信のネットフリックスを加えて、「FAANG」(ファーング)と呼ぶこともあります。プラットフォーマーとは、ネット上で利用者とサービスの提供者をつなぐ「場」を提供する事業者のこと。日本企業では楽天やヤフーがプラットフォーマーですね。利用者はネット検索やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、ネット通販など便利なサービスを無料か安い価格で利用できます。その代わりに、みなさんはその対価として、どこへ行き、何を買って、何をしたのか、自分の位置情報や検索や買い物の履歴など多くの情報をプラットフォーマーに渡しているのです。自分のデータがお金の代わりで、集められた膨大な個人データは広告などに活用され、プラットフォーマーの事業の拡大に利用されています。ある化粧品の価格を検索すると、以後、化粧品関連の広告が頻繁に現れるのはこのためです。

 グーグルのネット検索や電子メール「Gメール」、動画サイト「ユーチューブ」それぞれの月間利用者は10億人以上。FBの月間利用者は22億7000万人にのぼります。GAFAは今や私たちの生活、社会になくてはならないインフラにもなりました。

 情報は集まれば集まるほど価値が高まります。最初に市場を支配した企業にさらに情報が集まり、利用者にとってはより便利になり、利用者が集まるところには広告も集まり、さらに肥大化、独占が進む。こうしてGAFAは巨大化しました。4社の時価総額は昨年、計3兆ドル(約330兆円)を超え、ドイツの国内総生産(GDP)に迫っています。FAANG5社合わせると、日本の東京証券取引所の1部・2部全体の時価総額の半分に達する大きさです。

個人情報流出でEUは規制導入

 寡占、独占が進むと、価格の引き上げにつながるほか、消費者の選択肢を狭めてしまいます。GAFAについては、情報の取り扱い方が不透明で、取引先が不利な取引を強いられたという声も出てきました。

 2018年には、FBからの個人情報の大量流出が大問題になりました。2016年の米大統領選挙の際、ロシアがFB上に大量の偽アカウントをつくりクリントン氏を攻撃する偽ニュースを拡散したほか、8700万人分の個人情報が英国の選挙コンサル会社に流出したことも明らかに。トランプ陣営はこの情報をもとに重要州を攻略したといわれています。2018年9月にも5000万人分の個人情報流出が発覚しました。

 これに対し、欧州連合(EU)は2018年5月、「一般データ保護規則(GDPR)」を導入しました。個人情報を得る際に目的を明示し、本人の同意を得るよう義務づけるなど消費者保護を大幅に強化。企業や団体が域外に個人情報を持ち出すことは原則禁止され、違反した場合には巨額の制裁金が課されます。企業が自分のどんな個人情報を持っているかを知る権利や、情報を他企業に移せる「データポータビリティー権」も盛り込みました。

(写真は、米議会上院の公聴会で情報流出などについて証言するFBのザッカーバーグCEO=2018年4月10日、ワシントン)

日本も規制へ

 日本政府も、EUのGDPRを参考に規制を始める方針です。専門家による監視組織をつくるほか、公正取引委員会(公取委)が独占禁止法(独禁法)の適用ができないか検討しています。これまで公取委はプラットフォーマーを独禁法の対象にしていませんでしたが、巨大化したGAFAによる市場の独占や不透明な運営は消費者の利益を損なう可能性があるとして方針を変えました。ただ、日本にはヤフーや楽天もあります。規制を強めすぎると新しい技術やサービスが生まれづらくなり経済成長を阻害してしまうため、過度な規制には慎重論もあります。

 公取委の杉本和行委員長は、朝日新聞のインタビューに「このままでは、日本のイノベーションが減退し、日本企業が下請け化していく懸念がある」と答えています。GAFAによる「情報支配」は、みなさんの生活を左右するだけでなく、志望企業の将来にも深く関わっていることがわかると思います。

税金安すぎ?

 税金の問題もあります。GAFAに各国が思うように法人税を課せないからです。現在のルールでは、国内に支店や工場などの物理的な拠点がある国で法人税を納めるのが原則。たとえば、アマゾンが日本の消費者に動画や電子書籍を売って利益を得ても、配信拠点は海外にあるため日本で法人税を払わずに済みます。法人税の実質の負担率はEUの欧州委員会によると、多国籍のIT企業の平均は9%前後で、従来型企業の平均23.2%に比べて極端に低い割合です。巨額の利益をあげているのに、メーカーなどに比べて軽すぎるとの指摘です。そこで、2020年までに国際的な新たな課税ルールを定めることになり、36カ国でつくる経済協力開発機構(OECD)は三つの課税案を公表しました(図)。

 6月に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)サミットでもプラットフォーマー規制は大きなテーマの一つです。議長国日本の手腕が問われます。

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す女子就活サイト「Will活」はこちらから。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別