2019年09月20日

今さら聞けない!10%に上がる「消費税」基本のき【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 10月1日といえば就活生にとっては内定式の日ですが、今年はもう一つ大きな出来事があります。この日から、消費税が10%に上がります。買い物のたびに払う身近な税金ですが、そもそもなぜ消費税が上がるのか説明できますか? 今回初めて導入される「軽減税率」をめぐって企業が対応に追われるなど、すでにビジネスに大きな影響を与えています。今さら聞けない消費税の「基本のき」を、どこよりもやさしく解説します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、消費増税を前に8%割引のセールを実施するドン・キホーテの店頭=9月12日、東京都渋谷区)

どうして上げるの?

 まず、消費税ってそもそもどんな税金なのでしょう? 国の税収のうち、給与など個人にかかる所得税、企業などの所得にかかる法人税、買い物などをしたときにかかる消費税を「基幹3税」といい、税収全体の8割を占めます。所得税や法人税は税を負担する人と納める人が同じ「直接税」です。一方、消費税はみなさんが買い物のときに払った税金をお店が納めますよね。負担する人と納付する人が異なる「間接税」の一つです。

 消費税は1989年に、少子高齢化で増える年金や医療、介護といった社会保障費の財源として導入されました。当初は3%でしたが、1997年に5%、2014年4月に8%にアップ。さらに2015年10月には10%に上げる予定でしたが、国民の抵抗感が強いことなどから、安倍首相は引き上げ時期を2度延期。国の借金返済に充てる予定だった増収分の一部を、幼児教育無償化や低所得世帯の高等教育無償化などに回すように変更したうえで、ついに引き上げに踏み切ります(図参照)。

なぜ消費税?

 基幹3税のうち、なぜ消費税を上げるのでしょう? 所得税は給与をもらう会社員ら働き手が多く納めており、20~50代に負担が偏ります。法人税はグローバル化が進む中、企業を自国に呼び込もうと各国で引き下げ競争が起きていて日本も下げたばかり。これに対し、消費税は老いも若きも納めるので世代間の不公平が少なく、誰もが世話になる社会保障の財源としてふさわしいといわれます。生活必需品などにもあまねくかかるため、法人税より景気に左右されず税収が安定しています。これも社会保障の財源に適している点です。ただ、所得にかかわらず同じ税率のため、所得が少ない人ほど負担を重く感じる「逆進性」があります。毎日の買い物で支払うので、「痛税感」が強いともいわれます。

初導入の「軽減税率」って?

 今回の増税に合わせて初めて導入されるのが「軽減税率」です。低所得者対策として、外食とお酒を除く飲食品と新聞の税率を8%のまま据え置くというものです。生鮮食品やカップラーメンなどの加工食品、冷凍食品、総菜、お菓子、お茶や水などは8%のままです。

 ややこしいのが外食です。原則は「レストランなどの店内で食べれば10%、持ち帰れば8%」ですが、コンビニで買ったものをイートインコーナーで飲食すると店内での外食扱いで10%、持ち帰れば8%と、線引きが微妙です。

 このため、外食各社の対応は分かれています。モスバーガー、ガスト、バーミヤン、吉野家は、店内での飲食と持ち帰りを別々の価格にするため、同じ商品でも持ち帰りのほうが安くなります。一方、わかりやすさを重視して、店内と持ち帰りで税込み価格をそろえるチェーンも。ケンタッキー・フライド・チキンは1ピース250円のオリジナルチキンの価格を据え置きます。現在231円の税抜き価格を店内飲食に限って227円に引き下げ、店内外の税込み価格をそろえるわけです。すき家、松屋も主力の「牛丼」や「牛めし」の並盛りの税込み価格を維持します。マクドナルドも店内外の税込み価格をそろえますが、ハンバーガーやチーズバーガー、ハッピーセットなど全体の約3割の品目の税込み価格を値上げする一方、残る約7割のビッグマックやプレミアムローストコーヒーなどの税込み価格は据え置き、これらの店内飲食の価格は実質的に値下げされることになります。

ポイント還元

 「ポイント還元」も今回の特徴です。知っておいてください。前回5%から8%に上がったとき直前の駆け込み需要が多くあり、増税後はその反動で個人消費が低迷しました。そこで今回は、経済対策として、ポイント還元が実施されます。クレジットカード、交通系ICカードの電子マネーやスマートフォンのQRコード決済といったキャッシュレス決済を使うと、現金に相当するポイントが還元される仕組みです。消費者の購買意欲低下を和らげるとともに、影響を受けやすい中小店舗の売り上げを落ち込ませないことを狙った対策で、来年6月末までの9カ月限定です。

 具体的には、経済産業省に登録された中小店舗で買い物をすると、5%分に相当するポイントが戻ってきます。たとえば、10%の消費税込み1100円の商品を買った場合、ポイントは55円分で実質負担額は1045円。税率8%の1080円より負担が減ります。コンビニやガソリンスタンドなど大手チェーンのフランチャイズ(FC)店だと還元率は2%です。政府がお金を出して、キャッシュレス限定、期間限定で、増税をなかったことにするわけですね。

 ただ、この制度に参加できる店は全国に200万店ほどありますが、10月のスタート時に間に合う店は3割の59万店にとどまっているため、効果は未知数です。

ビジネスチャンス

 消費増税がビジネスにどんな変化を与えるか、考えてみましょう。一つは軽減税率によって、持ち帰りと宅配、出前の「お得感」が増すことです。すでに、ガストなどでは自社でドライバーを確保して宅配を強化しています。飲食店の宅配代行サービス「ウーバーイーツ」と「出前館」への参加企業も増えているそうです。

 もう一つ、恩恵を受けるのがキャッシュレスの関連業界です。日本は世界有数の「現金社会」で、諸外国に比べてキャッシュレス決済の普及が遅れています。今回のポイント還元には、キャッシュレス決済を広げようという政府の意図もあり、クレジットカードや電子マネー、QR決算などの関連企業は、自社の決済を広げようと目論んでいます。

もっと上がる!?

 最後に、今後、消費税率はどうなるでしょうか? 安倍首相は、先の参院選の際に「今後10年間くらいは消費税を上げる必要はないと思う」と言いましたが、日本は国と地方の借金が1000兆円を超す「借金大国」。今回の消費増税では財政健全化はとてもできません。欧州には消費税率20%前後の国も多い中、専門家の中には「日本も欧州並みに」という声もあります。今後の議論にも注目してください。

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