ニュースのポイント
大手商社が輸入豚肉や牛肉の独自ブランドに力を入れています。カナダや米国の農家と直接契約したり、豚や牛の品種、エサ、育て方などを工夫したりして、日本の消費者好みの肉質を追求し売り上げを伸ばしています。ブランド豚やブランド牛づくりの徹底的なこだわりから、商社や食品流通の仕事の一端を知りましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(6面)の「輸入豚肉こだわりトコトン/商社が独自ブランド開発/牛高値で消費者シフト」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、住商フーズが手がける「四元豚」の売り場=東京・東中野のスーパー「サミット」)
エサや交配に工夫
今日の記事で紹介しているのは、伊藤忠商事、三井物産の関連会社「スターゼン」、住友商事の完全子会社「住商フーズ」の三つのブランド輸入豚肉です
(表)。
伊藤忠の「ハイライフ・ポーク」を生産するのは、同社が49.9%出資するカナダのハイライフ社。エサにこだわり、小麦を多く与えて脂っこさを押さえ、揚げてもあっさりとした食感が楽しめるといいます。スターゼンの「ケベックの恵み」は、養豚に適した涼しい気候のカナダ・ケベック州の農家と契約。交配を工夫して、うまみ成分のアミノ酸を多く含んだ品種を開発しました。住商フーズの「四元豚」は米国の契約農場と共同開発。豚の成長にあわせて与えるエサの種類や量を細かく調整し、軟らかい肉質が人気です。
住商フーズは「まるで和牛」な米国産牛も開発
各社が輸入豚肉に注力する背景には、中国が米国産牛肉の輸入解禁を表明したことやオーストラリアの干ばつなどで、輸入牛肉が高騰している事情があります。住商フーズはその牛肉でも独自ブランド「アイオワ・プレミアム・ビーフ」を開発しました。
6月1日の「ヒット!予感実感 和牛のようなプレミアム米国産牛肉 住商フーズ」(朝日新聞デジタル)によると、米国では数十万頭の牛を育てる農場もありますが、同社が輸入するブラック・アンガス牛を生産するのは、米アイオワ州にある1軒20~300頭の小規模農場。こちらもエサにこだわっています。通常の大豆や穀物は与えず、コストが高いトウモロコシで飼育。育成施設にもこだわり、放牧ではなく屋根付きの牛舎を構えて風雨や日差しなど天候の影響を最小限にしています。こうして手間ひまかけて育てた牛から、さらに厳選した一部の肉が日本に輸入されます。
食した記者が「適度に入った『サシ(霜降り)』や口の中でとろける甘さは和牛を思わせる」と書くほどで、リブロース肉は100グラム約600円が目安。一般の輸入牛肉より高く、国産牛肉より安い価格帯を目指しています。こちらは、業界研究ニュース
「『まるで和牛?』な米国産牛肉 住友商事・住商フーズが勝負」でも取り上げています。
(写真は、「アイオワ・プレミアム・ビーフ」のリブロース肉)
働く姿を思い浮かべよう
「ラーメンからミサイルまで」と称されるほど何でもやるのが商社のビジネスですが、ただ輸入するだけではありません。住商フーズのホームページを見ると、5本柱の事業の一つに「食肉・食肉加工品開発輸入ビジネス~トータルインテグレーション~」を挙げ、「農場・工場から輸入・販売までを垂直統合するインテグレーションビジネスを展開しています」と書いてあります。開発段階から店頭に並ぶところまで、すべてに関わり、一つひとつ積み上げていくのが商社のビジネスなんですね。
商社パーソンがカナダや米国の農家に何度も何度も足を運び、事細かに打ち合わせや商談をして、安全でおいしいお肉を生み出した場面を思い浮かべてみてください。同じように働いている自分の姿も想像してみましょう。仕事のイメージが具体的になってきますよ。
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