2017年06月09日

トランプ大統領、もしかしたら「クビ」になる!?

テーマ:国際

ニュースのポイント

 トランプ米大統領(写真)に解任された米連邦捜査局(FBI)のコミー前長官は、米上院情報特別委員会の公聴会で「ロシア疑惑」について証言しました。コミー長官は、トランプ大統領とは3回面会し、6回電話で話したと証言しました。その中でフリン前大統領補佐官への捜査を「やり過ごしてほしい」とトランプ大統領から言われたことなどを証言しました。捜査妨害ともとれる発言で、ロシア疑惑のために任命されたマラー特別検察官の調査次第では、捜査妨害として弾劾裁判にかけられる可能性があります。つまり、トランプ大統領は任期中にやめさせられる可能性が出てきているわけです。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、総合面(1面)の「『トランプ氏、捜査中止指示』/米公聴会 FBI前長官が証言/ロシアの選挙介入『疑いない』」と、総合面(3面)の「トランプ氏『圧力』鮮明/一緒に夕食『忠誠が必要だ』/捜査『やり過ごしてほしい』/コミー前FBI長官明かす/司法妨害最大の焦点」(朝日新聞東京本社発行の朝刊最終版)です。

ロシア疑惑とは

 トランプ大統領とその陣営が、ロシアと不透明なつながりがあるのではないという疑惑。具体的には、大統領選の最中にロシアがしたクリントン陣営へのサイバー攻撃に、トランプ陣営が関わっているのではないか、トランプ大統領就任前にフリン氏がサイバー攻撃問題でロシア側と接触していたのではないか、といった問題です。このほかにもトランプ陣営にはいくつかのロシアとの不透明な関係が指摘されていますが、コミー長官時代のFBIが関心を示していたのは、この二つの問題でした。
(写真は、コミー長官の解任を受け、ホワイトハウス前でトランプ大統領に抗議する人たち=2017年5月10日撮影)

司法の独立は重大問題

 コミー長官は5月9日にトランプ大統領に突如解任されました。解任の理由としてトランプ大統領が「FBIが混乱している」などと言ったことについて、コミー氏は「私とFBIを侮辱した。それはまったくのウソだ」と証言しました。公聴会では、トランプ氏に「フリンはいいやつだ。やり過ごしてほしい」と言われたことや、トランプ氏から「私に忠誠心が必要だ」と求められたことなどを証言しました。アメリカは民主主義の原則に厳しい国です。中でも司法の独立を脅かすものには厳しく対処します。1970年代のウォーターゲート事件では、ニクソン大統領の疑惑を追及する特別検察官をやめさせようとした大統領に非難が集中し、大統領は辞任に追い込まれました。こうした文化ですから、大統領による捜査妨害があったとすれば、それは重大問題ととらえられます。大統領をやめさせることができる弾劾裁判にかける可能性も出てきます。
(図表は、コミー氏が明かしたトランプ氏からの圧力です)

上院の3分の2で「有罪」

 ロシア疑惑の調査は、マラー特別検察官が行っています。その調査がまとまれば、内容次第ですが、下院はこれを訴追するかどうか決めることができます。そして過半数の賛成があれば、上院に弾劾裁判を開くよう求めることができます。上院は3分の2以上の賛成があれば、「有罪」として大統領をやめさせることができます。ただ、これまで弾劾裁判でやめさせられた大統領はいません。ニクソン大統領は、下院が訴追勧告をした段階で自ら辞任しました。アンドリュー・ジョンソン大統領とビル・クリントン大統領は、弾劾裁判で無罪となっています。

共和党の中にもトランプ嫌い

 弾劾のハードルは高いのですが、トランプ大統領が弾劾される可能性はそんなに小さくはなさそうです。FBI長官に「(捜査中の人物を)やり過ごしてほしい」と言ったことは、捜査妨害に当たる疑いがあります。下院も上院もトランプ大統領の与党である共和党が過半数を占めていますが、トランプ大統領を快く思っていない議員も多いと言われています。日本のように党議拘束がかかることのないアメリカ議会ですので、訴追や弾劾で賛成に回る共和党議員もそれなりにいる可能性があります。政権の支持率も低迷していますので世論も厳しいものがあると予想されます。ひょっとすると、アメリカ史上初めて、大統領が弾劾裁判でやめさせられる事態になるかもしれないのです。

関心持って行く末ウォッチを

 アメリカの政治や経済と無関係に存在している日本企業は少ないでしょう。アメリカの混乱は日本の混乱につながります。関心を持ってトランプ大統領の行く末をウォッチしましょう。

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