ニュースのポイント
26、27日の両日、イタリアのシチリア島タオルミナで主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が開かれます。今年のサミットは、自由貿易、テロ対策、北朝鮮問題が大きなテーマになりそうです。サミットが始まって42年。世界情勢は変わりました。当初はこの7カ国で世界のGDP(
国内総生産)の60%以上を占めていたのですが、今は45%程度に下がっています。人口も世界の1割程度にすぎず、果たしてこの7カ国だけでどれだけ世界をリードできるのか、疑問の声も出始めています。曲がり角に来ているように見えるサミットについて、一緒に考えてみましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)
今日取り上げるのは、総合面(3面)の「『米国第一』G7対応は/自由貿易 テロ対策 北朝鮮問題 きょうから伊南部でサミット」(朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、政府専用機でイタリア・シチリア島に到着し出迎えを受ける安倍晋三首相と昭恵夫人=2017年5月25日)
国の数は6→7→8→7
サミットは英語で「山の頂上」のことです。世界の主要な先進国のトップが集まるので、「頂上会議」という意味でサミットと呼びました。「G7」は「グループ・オブ・セブン」の略。第1回は1975年、フランスのランブイエにアメリカ、日本、ドイツ(当時は西ドイツ)、イギリス、フランス、イタリアの6カ国が集まりました。直前に起こった
石油危機(オイルショック)を乗り切るために先進国が結束しようという趣旨でした。翌年にはカナダが加わり7カ国になりました。その後、1998年にロシアが加わり8カ国になりました。しかし、2014年、ロシアはウクライナのクリミア半島に侵攻して占領、それを理由にロシアはサミットから外されました。再び7カ国に戻ったわけです。
(写真は、1975年11月、第1回サミットに出席するため飛行機に乗る当時の三木武夫首相=中央、大平正芳大蔵相=左、宮沢喜一外相=右)
新顔トランプ氏が不協和音?
タオルミナ・サミットの特徴は、7カ国中4カ国ものトップが初参加だということです(図参照)。アメリカのトランプ大統領、イギリスのメイ首相、フランスのマクロン大統領、イタリアのジェンティローニ首相の4人です。昨年夏以降にトップが交代した国がこんなにあったということです。4人もの新顔が参加するサミットは珍しく、なれ合いではない議論やハプニングも予想されます。特に最大かつ最強の国アメリカを率いるトランプ大統領は、従来のアメリカの方向性と違う主張をすることが予想され、様々な不協和音が出る可能性もあります。
貿易や環境ではかみ合わないか
サミットで議論されるテーマのうち、テロ対策や北朝鮮問題は、7カ国の間でそれほど大きな方向性の違いはないものとみられます。しかし、貿易問題や環境問題は方向性がかなり違います。貿易については、トランプ大統領やイギリスのメイ首相は「自由貿易は行き過ぎている」という持論を持っています。世界全体のことから言っているのではなく、「自国に不利になるような自由貿易には反対」というわけです。また、環境についてトランプ大統領は、地球温暖化対策のパリ協定から抜けるようなことも言っています。環境問題に敏感なドイツなど欧州の国との議論は、かみ合いそうにありません。
中国やロシアはサミットに入るか?
G7の力の衰えは少し前から言われています。リーマンショックの後には、G7だけでは問題は解決できないと、中国やインドといった新興国も加えた20カ国の集まりG20が開かれました。今は、この2本立てで世界の問題が語られています。おそらく政治や経済の面だけから考えれば、中国やロシアをG7サミットに参加させた方が問題解決に近づくでしょう。しかし、7カ国が大切にしている「民主主義」とか「人権」とか「法の支配」とか「言論・表現・報道の自由」といった価値を中ロ両国は共有していないと思われているため反対意見が出ます。なぜこの7カ国だけが地球の大問題を語り合うのか、ということに明確な答えはないと言えるでしょう。
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