2017年05月25日

日本も「キャッシュレス」社会に!? どんな世の中に?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 北欧では現金がほとんど使われなくなっています。カード払いやスマホアプリでの送金が普及し、「キャッシュレス」が当たり前になっているんです。世界有数の「現金大国」といわれる日本でも、キャッシュレス化は間違いなく進むでしょう。私たちの暮らしが変わるだけでなく、銀行などの金融機関の仕事が大きく変わり、新たなビジネスも生まれそうです。就活生も、「ビジネス目線」でキャッシュレス社会を考えてみましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(7面)の「けいざい+ キャッシュレス㊥カードない人 救う中央銀」です。連載記事の1回目「けいざい+ キャッシュレス㊤スウェーデン 現金無用/市民に浸透 店や銀行もメリット」(5月24日朝刊)も合わせて紹介します(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)。

北欧は「キャッシュフリー」

 スウェーデンの首都ストックホルムでは、街中の小売店でも「キャッシュフリー(現金を受け取らない)」というプレートを掲げる店が増えています。お客は少額でも、クレジットカードや、口座からすぐに代金が引き落とされるデビットカードで買い物をします。スウェーデンの中央銀行が昨年、約2000人に「過去1カ月の主な支払い手段」を聞いたところ、100~500クローネ(1クローネ=約13円)の買い物でデビットカードやクレジットカードを使った人は86%にのぼり、現金は9%だけでした。100クローネ以下で現金を使った人は26%で、6年前の59%から半減しました。個人間のお金のやりとりでも、携帯電話で送金できるサービスが普及し、利用者は人口の半分強の550万人にのぼります。金融とITを組み合わせた「フィンテック」によって実現しました。

 北欧ではほかにも、デンマークの中央銀行が現金の需要は減り続けるとみて、紙幣や硬貨を自ら印刷・製造するのを昨年末で中止。ノルウェーでは、大手銀行が2015年11月に約60のすべての支店で窓口での現金の取り扱いをやめるなど、キャッシュレス化の動きが加速しています。
「現金お断り」のパン屋 ストックホルム
(写真は、ストックホルム市のパン屋。レジにはスウェーデン語で「私たちはキャッシュフリーです」との表示がある)

日本は「現金社会」

 一方、日本は世界でも有数の「現金社会」です。2015年の名目国内総生産(GDP)のうち現金流通の割合を示したグラフを見てください。スウェーデンはわずか1.7%ですが、日本は19.4%。韓国や米国と比べても際だって高いことがわかります。なぜでしょうか。諸外国に比べると日本は比較的安全な社会ですから、現金で持っているほうが安心という感覚があるのだと思います。現金を金融機関にすら預けず家に保管する「タンス預金」は総額30兆円と言われ、最近の低金利で増えています。むしろ、カード決済で必要な個人情報の扱いに警戒感が強いという指摘もあります。

 そんな日本でも、Suicaや楽天Edyなど電子マネーの2016年の決済金額が前年より10.8%増えて初めて5兆円を超えたというニュースがありました。日本でもキャッシュレス化が進むのは間違いないでしょう(「電子マネー決済5兆円超!『キャッシュレス』で業界研究」3月1日の今日の朝刊参照)。

キャッシュレスのメリットは?

 キャッシュレスにはどんなメリットがあるのでしょう。昨日の記事では店員や店舗経営者の声を紹介しています。「現金は盗まれる恐れがあった。売り上げを銀行に預けにいくのも面倒だった」「カード払いだと取引も記録され、管理するのが現金よりずっと簡単だ」

 福岡市の中心部で4月に3億8000万円の強盗事件がありましたが、キャッシュレス社会になればこうした事件は起こりません。脱税も防げるし、現金の発行や輸送、保管のコストが減らせます。銀行も現金をやりとりする窓口がある支店や現金自動出入機(ATM)を減らせます。スウェーデンの銀行支店の6割にあたる約900店では現金を扱っていないとか。2011年に3566台あったATMも300台以上減らして経費を大幅に削減できたそうです。2009年時点の調査ですが、デンマークの中央銀行によると、現金払いは売上高を精算する人件費や強盗を防ぐ設備費がかさみ、社会の費用負担はカードの2倍以上にのぼりました。

ビッグデータとして活用

 もっと大きいのは、どんな客が何を買ったのかという購買データが残ることです。これをビッグデータとして活用すれば、新たなビジネスにつながります。

 一方で、電子データにはリスクもつきまといます。サイバー攻撃を受ける可能性がありますし、データの書き換えや、ネット上で多額の盗難が起きるかもしれません。さらなる普及には、利便性とともに安全性の確保もポイントですね。

 ただ、こうしたセキュリティー強化も新たなビジネスを生みます。電機、IT、通信系の企業には大きなビジネスチャンスですね。さらに、商取引のキャッシュレス化は、金融だけでなくあらゆる業界に大きな影響を及ぼします。自分の志望業界にどんな変化があるか、新しいビジネスを生み出せないか、考えてみてください。

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