2017年05月09日

仏大統領にマクロン氏 EUどうなる?就活への影響は?

テーマ:国際

ニュースのポイント

 フランス大統領選の決選投票で、史上最年少のエマニュエル・マクロン氏(39)=写真=が当選しました。欧州連合(EU)を維持する立場だけに、フランスがEUから離脱する心配はなくなったとみられています。これを受けて、日本では株価が急騰しました。遠い欧州の出来事も、日本の経済、ひいてはみなさんの就活に影響します。世界が注目したフランス大統領選の基本をやさしく解説します。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、
・1面「マクロン氏、分断修復訴え/次期仏大統領 国民の信頼課題」
・1面「天声人語」
・総合面(2面)の「時時刻刻・マクロン氏 多難な船出/テロ・失業対策 急務」
・経済面(6面)の「マクロン氏勝利 東証急騰/今年最高値 2万円台迫る」
・国際面(11面)「EU 迫られる改革」
・オピニオン面(14面)「社説・仏大統領選/改革の態勢づくり急げ」
(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。

マクロン氏どんな人?

 フランスでは19世紀にナポレオン3世が40歳で大統領になりましたが、マクロン氏は1歳若く、フランス史上最年少の大統領です。フランス北部で医師の家庭に育ち、エリート養成で知られる学校で教育を受けました。投資銀行ロスチャイルドで大規模な企業合併を手がけ、「金融のモーツァルト」と呼ばれたそうです。政界人脈から2012年に大統領府に入り、今のオランド大統領に経済相に登用されました。経済人なので、今回が初めての選挙でした。

 妻のブリジットさん(64)=写真右=も話題です。2人は、マクロン氏が15歳の高校生のときの高校の演劇部の顧問と教え子でした。当時ブリジットさんは40歳で既婚、子どもが3人いましたが、その後夫と離婚して2007年にマクロン氏と結婚しました。25歳の歳の差婚です。

「親EU」VS.「反EU」

 大統領選は1回目の投票で過半数を得る候補者がいず、上位2人による決選投票が行われました。既成政党に属さないマクロン氏が、初の女性大統領をめざした右翼・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン氏(48)を破りました。図のとおり、ダブルスコアの大差でした。フランスでは、左右両派の2大政党(今は左派の社会党と最大野党で右派の共和党)以外からの大統領は初めてです。

 世界がとくに注目したのはEUとの関係です。ルペン氏は、自国第一主義や移民規制を掲げ、EUからの離脱を公約した「反EU」論者。EU離脱を決めた英国の国民投票、「米国第一」を主張するトランプ米政権誕生と同じ流れです。これに対して、マクロン氏は、移民を受け入れ、EUについては重視しつつEU改革を進める「親EU」の姿勢です。

 すでに英国が離脱を決めたEUはいま、体制が揺らいでいます。もともと、長年にわたって戦争を繰り返してきたフランスとドイツが同じ政治・経済体制の中に入ることで、平和と繁栄を維持しようと始まった枠組みです。もしフランスが抜けたら英国の離脱よりもはるかに影響は大きく、EU崩壊につながりかねませんでした。しかし、マクロン氏の当選でフランスがEUやEUの通貨であるユーロ圏から離脱する懸念は当面なくなりました。

なぜ日本の株価が急騰?

 フランス大統領選を受けて、8日の東京株式市場では日経平均株価が2万円近くまで上昇し、今年の最高値になりました。昨年の英国のEU離脱決定のときには株価が急落しましたが、今回は逆の結果でした。

 フランスのEU離脱の心配がなくなったら、なぜ日本の株価が上がったのでしょうか。近年、円は「安全通貨」とされ、世界情勢が不安になると円が買われて円高になり、安心感が出ると円が売られて円安になる傾向があります。
 今回の動きを単純化すると、
フランスがEUにとどまる→世界経済の混乱・不安要因が減る→円が売られて円安傾向に→円安になると輸出コストが下がって輸出企業の業績が良くなる→輸出企業が主力の日経平均株価が上がる
という構図です。

 企業は業績次第で採用数を増やしたり減らしたりしますから、みなさんの就活にも影響します。今回の仏大統領選は、就活生にとっては悪くない結果だったと言えるでしょう。これから欧州では、6月に英国、フランスで、9月にはドイツで総選挙があります。これらの結果にも注目してください。

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